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第38話:雷帝の城と、避雷針の檻

荒野の最深部。  そこには、天を衝く巨大な金属の塔がそびえ立っていた。  『雷帝の城』。  常に黒雲が渦巻き、無数の落雷が塔の先端に吸い込まれている。


「すごいエネルギー量じゃな……」  『グラン・フォートレス』の運転席で、わしは計器の針が振り切れるのを見ていた。  あそこにあるのは生物ではない。巨大な発電所そのものだ。


「来るぞ!」  アルヴィスの警告と共に、塔の頂上から目が眩むような閃光が迸った。


 バリバリバリバリッ!!


 光が地上に降り立ち、人の形を成す。  全身が青白いプラズマで構成され、バチバチと火花を散らす巨人。  第二の眷属王――『雷帝ヴォルト・エンペラー』。


『我ガ領土ヲ侵ス者ハ、灰トナレ』


 雷帝が手をかざすと、極太の雷撃が放たれた。


「回避ッ!」  わしは要塞をドリフトさせて直撃を避けるが、余波だけで地面がえぐれ、岩が溶解する。  速い。光の速さだ。


「私がやる!」  アルヴィスが外へ飛び出し、雷帝に向かって疾走した。  雷帝が迎撃の稲妻を放つが、アルヴィスは『時雨』でそれを弾く。


 パァンッ!


 ヒヒイロカネの刀身は電気を通さない(絶縁加工済み)。  アルヴィスは懐に潜り込み、渾身の一撃を見舞った。


 ザンッ!


 剣は雷帝の胴体を真っ二つに斬り裂いた――かに見えた。  だが。


 バチチチッ……。


 斬られた断面が、磁石のように吸い寄せられ、一瞬で元に戻る。  手応えがない。霧を斬っているようなものだ。


『無駄ダ。我ハイカヅチ。形ナキ力ナリ』


「くっ……! 物理攻撃が通じないのか!」  アルヴィスが後退する。  斬ることはできても、殺すことはできない。エネルギーそのものには、心臓も核もないからだ。


「なるほど、厄介な相手じゃ」  わしはモニターを見ながら顎を撫でた。 「斬っても死なん。燃やしても無駄。凍らせても電気分解されるだけ」


「どうするの親方!? あんなの無敵だよ!」  ミヤが悲鳴を上げる。


「無敵ではない。相手が『電気』なら、扱い方は一つじゃ」


 わしは族長から貰った『雷鳴石』を取り出した。


「電気は必ず『抵抗の低い方』へ流れる。そして『器』があれば溜まる。  あやつを倒す必要はない。『電池バッテリー』にしてしまえばいいのじゃ!」


          ***


「作戦開始じゃ! 総員、要塞の屋上へ!」


 わしの指示で、全員が要塞の上に立った。  わしは中央に『雷鳴石』を設置し、要塞の全エネルギー回路をそれに直結させた。  即席の**『超大容量コンデンサ(蓄電器)』**の完成だ。


「リナ、ミヤ! 要塞の四隅に『避雷針ロッド』を立てろ! 結界で電気の逃げ道を塞ぐんじゃ!」 「はいですわ!」 「ラジャー!」


 四本の避雷針が立ち、青い結界の壁が要塞を囲む。  これで電気の逃げ場はなくなった。


「バード! お主はアース(接地)じゃ! 地面に杭を打ち込んで、余剰電力を逃がせ! さもないと要塞が爆発する!」 「お、俺がアースかよ!? 痺れるのは御免だぞ!」 「安心しろ、ゴム手袋を貸してやる!」


「そしてアルヴィス!」  わしはマイクで叫んだ。


「お主は『誘導体』じゃ! 雷帝を挑発して、この『雷鳴石』に雷撃を撃たせろ!  奴自身のエネルギーを逆流させて、吸い取ってやる!」


「わかった! ……やってみる!」


 アルヴィスが雷帝の前に立ち、剣を掲げた。


「おい、ビリビリ野郎! 光っているだけで中身がないぞ!  悔しかったら私を黒コゲにしてみろ!」


『貴様ァァァッ!!』


 雷帝が激昂し、全身のエネルギーを膨れ上がらせた。  城の頂上から雷を集め、最大出力の雷撃球を作り出す。


『消エ失セロ!!』


 ドガァァァァァァァァッ!!!


 極太のレーザーのような雷撃が、アルヴィス――の背後にある『グラン・フォートレス』へと放たれた。


「今じゃ! 回路全開! 食らえ、吸引ドレインモード!」


 わしはスイッチを叩き込んだ。  ブォンッ!!  中央の『雷鳴石』がブラックホールのように闇色の光を放つ。  直撃コースだった雷撃が、ぐにゃりと曲がり、石へと吸い込まれていく。


『ナ、ナニッ!? 我ガ力ガ……吸ワレル!?』


「まだまだぁ! もっと寄越せ!」


 わしは要塞の変圧器をフル稼働させた。  雷帝から伸びる光の帯が、逃れられない鎖となって石に繋がる。  水が高いところから低いところへ流れるように、雷帝のエネルギーが強制的に『容量の空いた電池(雷鳴石)』へと流れ込んでいく。


『ヤ、ヤメロ! 体ガ……縮ム……!』


 巨人が見る見る小さくなっていく。  エネルギーを吸われ、実体を維持できなくなっているのだ。


「もう逃がさんぞ! アルヴィス、蓋をしろ!」


「おおおッ!」  アルヴィスが跳躍した。  彼は『雷鳴石』に向かって吸い込まれていく雷帝の頭上を取り、剣を振り下ろした。  斬るのではない。  電気の流れを断ち切り、石の中に押し込める一撃!


「そこでおとなしくしていろ!」


 バチィッ!!


 アルヴィスの剣が雷帝の残滓を石に叩き込むと同時に、わしは回路を遮断し、絶縁カバーを閉じた。


 シーン……。


 嵐が止んだ。  要塞の中央には、眩いばかりに発光し、バチバチと唸る『雷鳴石』が鎮座していた。


「……捕獲完了じゃ」


 わしは計器を確認した。  要塞のエネルギー残量……『∞(測定不能)』。  雷帝一匹分、文字通り一生分の電力を手に入れたのだ。


「やった……! 本当に電池にしちゃったよ!」  ミヤが石を突っつく。


「これで光熱費はタダですわね!」  リナも大喜びだ。


「ふぅ……俺の剣で『充電』する日が来るとはな」  アルヴィスが苦笑しながら剣を納める。


 こうして第二の眷属王は、わしたちの旅の燃料(エネルギー源)となった。  残るは最後の一体。南の『深淵の海溝』。


「さあ、エネルギーは満タンじゃ!  次は海へ行くぞ! 要塞を潜水モードに改造じゃあ!」

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