第34話:古代の遺産と、動く工房
『警告。排除を開始します』
無機質な音声と共に、遺跡の奥から次々と古代の機械兵が現れる。 石と未知の金属で構成された巨体が、重い足音を立てて迫ってくる。
「数が多いな……!」 アルヴィスが剣に手をかける。
「アルヴィス、試運転には丁度いい。『時雨』の切れ味、見せてみろ」 「ああ、任せてくれ」
アルヴィスが疾走した。 先頭のガーディアンが巨大な石斧を振り下ろす。 アルヴィスはそれを避けず、すれ違いざまに一閃。
ヒュッ。
音はない。 だが次の瞬間、ガーディアンの上半身が斜めにズレ落ち、切断面から火花を散らして崩れ落ちた。 硬い金属装甲を、まるで空気のように切り裂いている。
「すごい……本当に抵抗がないんだな」 アルヴィス自身が驚きつつも、次々と敵を無力化していく。
「よし、今のうちに奥へ抜けるぞ! この先に『格納庫』の反応がある!」 わしは魔力探知を頼りに走った。
***
たどり着いたのは、広大な地下ドームだった。 そこには、埃を被った巨大な鉄の塊が鎮座していた。
「……なんじゃこりゃ? 戦車?」 ミヤが目を丸くする。
それは、全長15メートルほどの巨大な装甲車両だった。 タイヤは左右に4つずつ、計8輪。上部には旋回砲塔のようなものがあるが、砲身は折れている。 旧文明が使っていた移動要塞の残骸だ。
「これだ……!」 わしは車体に駆け寄り、装甲を撫でた。 生きてる。魔石エンジンは死んでいない。回路を繋ぎ直せば動く!
「親方、まさかこれを?」 「うむ! これからの旅、野宿続きでは体が持たん。こやつを修理して、我々の『移動拠点』にするぞ!」
背後から、追手のガーディアンたちが迫ってくる。時間は数分もない。
「総員、作業開始! アルヴィスとバードは敵を食い止めろ! 壊した敵のパーツをこっちへ投げろ! ミヤとリナは車内の清掃と魔力充填じゃ!」
「了解!」
ここからは時間との勝負だ。 わしはスパナと魔導溶接機を構え、車体の下に潜り込んだ。
「回路バイパス接続! 主動力、再起動! 足回りがイカれておるな……バード! そいつの関節パーツ寄越せ!」
ドカッ! バードが破壊したガーディアンの腕を投げ渡す。 わしはそれをその場で加工し、車両のサスペンションとして移植する。 規格が違う? 知らん、無理やりねじ込め!
「リナ、魔力を送れ! エンジンに火を入れるぞ!」 「はいですわ! ……ああっ、中広いですわよ! キッチンもお風呂も付けられそうです!」 「それは後じゃ! まずは動かせ!」
キュルルル……ズドォォォォン!!
古代のエンジンが咆哮を上げ、黒煙を吐き出した。 8つのタイヤが力強く回転し、車体が浮き上がる。
「動いた!」 「全員乗れ! 脱出じゃあ!」
わしは運転席に飛び乗った。 アルヴィスとバードが、殿を務めて飛び乗ってくる。
「しっかり掴まっておれよ! 全速前進!」
わしはアクセル(魔力ペダル)をベタ踏みした。 巨大な質量が、猛獣のように加速する。
「邪魔じゃあぁぁぁぁッ!!」
ドガァァァァン!!
立ちはだかるガーディアンたちを跳ね飛ばし、踏み潰し、遺跡の壁ごとぶち破って外へ飛び出した。
***
遺跡の外。青空の下。 土煙を上げて爆走する巨大な鉄の箱。 わしはハンドルを握りながら、高笑いした。
「はーっはっは! 見たか! これがドワーフの技術と古代文明の融合じゃ!」
安全圏まで離れたところで、車を止める。 改めて見ると、無骨だが頼もしいフォルムだ。
「……いいな、これ」 バードが車体を叩く。 「頑丈だ。これなら魔物の群れに突っ込んでも平気だぞ」
「中は改装し放題ですね! 私、個室には天蓋付きベッドが欲しいですわ!」 リナが夢を膨らませる。
「一階を店舗スペースにすれば、移動販売もできるよ! 世界中がお客さんだ!」 ミヤがソロバンを弾く。
「すごいな……。これなら、どんな過酷な場所へも行ける」 アルヴィスも感心しきりだ。
わしは腕組みをして頷いた。 これから向かうのは、眷属王たちが支配する危険地帯だ。 だが、この『城』があれば、どこでも工房を開ける。どこでも最高の剣を打てる。
「命名しよう。 こやつの名は、移動工房要塞**『グラン・フォートレス』**!」
「おおーっ!」
こうして、わしたちは最強の移動手段を手に入れた。 目的地は3つ。 まずは西の『腐敗の森』に巣食う眷属王を目指す。
「出発じゃ! 野郎共、世界を救うついでに、珍しい素材を狩り尽くすぞ!」
エンジン音が荒野に響き渡り、巨大な車輪が新たな冒険の第一歩を刻んだ。




