ボジョレーヌーボーK産党
「もっとカジュアルに共産党を語ろうじゃないか、本日のゲストはボジョレーヌーボーK産党代表の S さんです、ようこそ!」
司会の紹介とともに S さんがステージに上がる。拍手は控えめで、寒々しい雰囲気が会場に広がるのだが、それを吹き飛ばすように司会は言葉を続ける。
「さて、K産党といえば、浅間山荘事件、ちょっと前までは大学紛争の中核、その他にも赤軍による国際テロなどのさまざまな活動で知られていますが、ボジョレーヌーボーK産党(以下ボK産党と略す)としてはどのようなご関係があるのでしょうか?」
S さんはにっこりと笑い、「ええ、我々ボK産党は、伝統的な共産主義の理念を尊重しつつも、現代の社会に適応した新しい形態を模索しています。先ほど言われた浅間山荘事件、中核、赤軍などは確かに、過去の共産主義活動において出てきた事件なのではありますが、現在では一切関係ありません。現在のボK産党では、より本質的な共産主義に近い形で活動を行っています」
「なるほど、そうなると、ボK産党の中にある "共産党" という名前ですが、過去を引き継がないとすればそれは変えた方がイイという意見もありますがどうでしょうか?」
「いえ、そこは変えません。いまでこそ、ボジョレーヌーボーK産党あるいはボK産党と比例代表区で書くときに略していますが、いえ、伏字になっておりますが、"共産" という主義を引き継ぐために名前を変えるのは差し控えているのです」
「そうなるとですね。かつての勝共連合、つまりは今でも勝共連合ではあるのですが、そういう「共」の文字と重なるということでよいのでしょうか?」
「はい、そうですね。勝共連合とは当然のことながら理念も違い、語ることばも違うのですが、「反共」という意味での「共」というところでは同じものを指しています。ですから、もし私達ボK産党がですね、名前を変えてしまったら、勝共連合の方たちが困ってしまうわけです。その「共」の対抗の意味を失ってしまってですね、何を滅ぼしたらいいかわからなくなってしまう。そのために私達はあえて「共」の文字を残すことに決めています。このために、どうしても「共産」の部分はですね、ええと、ボK産党では伏字になっていますが、残すことに意義がある、いや、実質的な価値があると思うのです」
「なるほど、よくわかりました。でも、ボK産党となる前の浅間山荘事件や中核、赤軍の意図なども引き継いでしまうというリスクはあるんじゃないでしょうか? たとえ、ボK産党と言う形で伏字になってしまったとしても、共産のイメージを前面に出してしまうと一般的に「共産主義は怖い」というイメージが定着して、さらに未来永劫引き続いてしまうのではないか、という懸念はあるのですが、そのあたりはどのようにお考えでしょう?」
「そうですね。過去を引き継いでしまうという欠点はあります。しかしですね、そもそもの共産主義というものが、資本主義の矛盾を突いている点でスタートしたものですから、そこから派生した浅間山荘や中核、赤軍などの暴力的な解決を求めているわけではないのですよ。逆にいえば、中核あたりが共産主義の名を借りて暴力主義に走ってしまったというわけです。つまりは、軒先を貸して母屋を取られるという感じですね。私達ボK産党は母屋なのですから、軒先である中核とは元々関係がないのです。本筋を間違ってはいけないですよね」
「ええ、確かにそうではあるのですが、当時はすでに母屋も取られてしまったわけですし、汚れた暖簾を後生大事にしておくのはどうかと思うのですが、そのあたりはどうでしょうか?」
「確かに。軒先に吊しておいた暖簾が汚れてしまったのは事実です。しかしですね。秋にでもなれば軒先の朝顔も枯れてしまうわけで、なにも一時的に朝顔に乗っ取られたからといって大切な暖簾を捨ててしまったり、母屋を壊してしまうわけにはいかないのですよ。そもそも母屋がなくなってしまったら、それは軒先だけってことになるじゃないですか。そうなるとですね。軒先だけではどうにもこうにも住めなくなってしまうわけです」
「ああ、確かに、それは社会党みたいですね」
「ええ、そのあたりはS会党と伏字にしたほうがいいと思うのですが、言ってしまえばS会党の「社会」という文字も、一定の資本主義に対する社会主義なわけですから、そこも対抗しているという意味ではそうなんですね。そのあたりは、一般的な理解として「社会」と「共産」のどちらが受け取りやすいかということになります」
「なるほど」
「例えばですね、私達、ボK産党は、勝共連合の「共」の中に意義が残っていますが、社会党、いや、伏字にしてS会党はですね「勝社連合」とか「反社連合」とかの団体が付かないと、意義を保てなかったということなのです。いえ、実際、瀕死な状態であるわけで、そこは一般に忘れ去られているという点ですね。ほかにも、さきがけとか希望とかいう党もあったりなかったりしますが、今ではありません。そこから言えば、勝共連合があってこそのボK産党であるわけで、逆に言えば、ボK産党あってこその勝共連合であるわけです。そこは、右翼と左翼との比較と同じで、これで左翼がなくなってしまったらどうなりますか? 飛行機が右翼だけで飛べるわけがないでしょう?」
「確かにそうですね、片翼では飛べません」
「しかしですね、よく考えてください。ここで左翼を失ってしまうと、右翼だけが残るのではなく、右翼も落ちてしまうわけです」
「ええ? それは右左という意味ではなく?」
「そうです。航空機に左翼がなくなると、右翼も無くなってロケットと同じ状態になるわけです。つまりは、推進力があがってムーンショットをキメてしまうわけですね」
「あの、ちょっと、それ、漢字のほうがよくないですか?」
「いえいえ、ここはカタカナでキメてしまうのが正しいのです。そこの財力は、栄養ドリンクならぬ点滴ドリンクの血税を仕込んでですね、実にハイになってヒャッハーな気分で、ロンギヌスの槍を月におったってしまうわけです」
「あの、ちょっと、国営放送ですね、もうちょっと言葉を選んでいただけると・・・」
「いえいえ、世の中ロック、ロックと騒ぎますが、ボK産党としてはパンクで決めたいわけです。いわゆるセックスピストルズです。中道なにそれ右翼の街宣車、東京リベンジャーズ的な学生運動、そんなのはもう古いのです。ビスを肩に付けて、首輪を付けます。鼻にはピアスです。これこそが、まさしく現代の革命スタイルなのです。インテリ的な革命なんて、くそくらえです。いえ、便器に突っ込んでかき回せて、奥歯をがたがたいわしたろかい!な気分です。企業献金ドーピングなぞもってのほか、気密ロッカーに入った機密費なんてぶちまけてしまって、維新・会心・参政・N党をボウリングでぶちかましてしまえばいいんです。一刀両断です。いえ、三つの刀で鬼切りですね・・・」
つー、つー、つー、つー、
暫くお待ちください・・・
「ええと、失礼いたしました、司会の方。ええと、話を戻しますと、今年の与党もですね、ひと口飲むと苦みが増しましてね、つまりは既に危機状態にあるわけですね。この苦みがですね。反・勝共連合としてのボK産党の意義なのですよ、ふふふふふふふ」
「はい、ありがとうございました。これでロシアからの中継を終わります」
【HHK 終】
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