第96章: 新たな10人
春人は無事に帰宅し、誠司の足も治り、麗花も安定の兆しを見せ始めていた。
それを受けて、蒼月は自宅に全員を集めた。
早苗はまだ松葉杖を使っており、里香にもいくつか包帯が残っていたが、倉庫襲撃で負った大半の外傷はすでに治っていた。
遼は魔術師全員と、数人の関係者を集めた。
源希、麗花、春人、伊佐音は同じソファに座り、源希だけが肘掛けに腰を乗せていた。
誠司は壁にもたれかかり、残りの魔術師たちは空いている席にそれぞれ座る。
遼は息を吐いた。いつもの飄々とした雰囲気には、緊張が滲んでいる。
「要点から話そう。今、魔術師が三人死亡し、一人は最高警備下にある。結論から言えば……あと四人、魔術師が必要だ」
誠司が眉を上げた。
「四人? でもここには五人呼ばれてるぞ。基本的な算数、復習した方がいいんじゃないか?」
爪楊枝を咥えた玲司が一歩前に出る。表情は険しい。
「話はもう少し複雑だ。伊佐音と源希は……いわゆる“普通の魔術師”じゃない。
炎城と岡崎なら役目は十分に果たせるし、麗花については黒鉄家の遠縁ということにして、死亡を偽装したと言い張ることもできる。
だが問題はそこじゃない。世間は、純粋な水属性の魔術師や、複数系統の魔法を使う魔術師を見たことがない。そこから疑問が生まれる」
里香が腕を組み、壁の写真を見つめたまま口を開く。
「疑問が出れば、次は疑念。そこから要求よ。
『どうすれば魔法を学べる?』『何を隠してる?』ってね。結局、全部面倒なことになる」
彼女は鼻を鳴らした。
源希は首を傾げ、真剣な表情で言った。
「つまり……俺と伊佐音を、世間から隠すつもりか?」
蒼月は小さく唸りながら立ち上がる。
「完全に、というわけではない。伊佐音の魔力覚醒を自然に見せるため、いくつか案を考えていた。
その一つが……彼女を“十人目の魔術師”にすることだ」
春人が歯を食いしばり、声を荒げた。
「それは不公平だ! 源希は同世代で最強の魔術師だろ!
俺たちには称号を与えて、源希だけ何もなしなんて、おかしい!」
誠司が舌打ちする。
「最強、は言い過ぎだな。せいぜい二番手だろ」
早苗の落ち着いた声が、部屋を制した。
「気持ちは分かります。でも、考えてください。
源希はすでに“次代の霊術師”になる存在です。
そこに別の肩書きを突然与えるのは、説明がつきません」
玲司は首を鳴らし、目を閉じたまま言う。
「その通りだ。俺もまだ引退する気はない。
源希を今後の案件から外すって話じゃない。ただ、力を表に出せないだけだ。
最優先事項は世間を落ち着かせること。そのためには“十人”を揃える必要がある。
源希が霊術を使えることは知られているが、他系統も使える事実は何とか抑え込めている。
噂は多少あるが……今のところは噂止まりだ」
麗花は苛立った視線を魔術師たちに向けたが、何も言わなかった。
それに気づいた里香が釘を刺す。
「落ち着きなさい。何度も言ったでしょ。感情は抑えるの」
麗花は一瞬目を見開き、やがてコーヒーテーブルに肘をつき、顎を手に乗せてそっぽを向いた。
「……はいはい」
源希はため息をついた。
「分かった。俺は秘密でいい。歩く有名人になりたいわけでもないしな。
問題になるなら、議論する価値もない」
伊佐音が彼の腕に手を伸ばす。
「源希、怒っていいんだよ——」
彼は彼女を見下ろし、沈んだ目で答えた。
「怒ってはいる。でも、世界の終わりってわけでもない」
そう言って立ち上がる。
玲司が彼の前に立った。
「なら、これからもっと気分が悪くなるぞ。
お前がやらかした件について、俺と二人で“宝探し”だ」
源希が眉を上げる。
玲司は重い声で続けた。
「お前の新しい友達——
封印を解いてしまった“大いなる悪”を、




