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第91章: どこか別の場所

レイジは薄暗い廊下を歩いていた。金属製の床に足音が反響し、無人の施設はすべて機械によって運営されている。いくつかの自動砲台の前を通ると、レンズが彼の動きを追うように回転したが、どれも発砲はしなかった。


彼は強化鋼の扉の前で立ち止まり、細い覗き窓から中を覗き込む。そこには拘束衣に縛られた黒沼シズメが座っていた。髪は絡まり、外見は乱れているのに、口元には相変わらず不気味な笑みが浮かんでいた。


「まぁ、嬉しいわ。わざわざ会いに来てくれたのね。」

彼女は喉をくすぐるように言い、首を傾けてよりよく彼を見ようとした。


レイジは腕を組み、壁にもたれかかる。覗き窓からは見えない場所だが、声は確実に届く距離だ。

彼の声は落ち着いていたが、その奥には重みがあった。

「取り調べの時、お前は何も答えなかった。新しい実験だの、新しいサンプルだのと言ってたが……本当は違うだろ。頼めば死刑囚くらい政府がいくらでも渡したはずだ。倫理的かどうかなんて誰も気にしない。お前を敵に回したくないからな。じゃあ…なんでだ?」


一瞬だけ、シズメの笑みが揺らいだ。だがすぐに戻る。戻った笑みは薄く、何か脆いものの上に無理やり貼りつけたようだった。

「理由はいろいろあるわ。人工魔法使いの創造だなんて、刺激的すぎて見逃せなかった。でも、それだけじゃないの。」

薄く笑いながら、一瞬だけ悲しげな影がその赤い瞳に走る。

「黒禅のこと…友達だと思っていたのよ。変に聞こえるけどね。友達を助けたいと思うのって、自然なことでしょ?」


レイジは再び覗き窓に近づき、赤い瞳と向き合う。

その眼差しには、同情と呆れが入り混じっていた。

「お前が最初から目的を話していれば、ここまでの事態にはならなかったかもしれない。今は時間もあるし…聞かせてくれよ。全部。」


シズメは拘束衣で自由にならない肩をすくめ、首を左右に揺らす。

「まぁ、もう隠す意味もほとんどないしね。いいわ、全部話してあげる。」

笑みは再び鋭さを増し、紅い瞳は楽しげに揺れた。レイジの琥珀色の瞳が彼女を捉えたまま動かないのが、彼女にとっては何よりの愉悦のようだった。



---


一方その頃、病院ではハルトがゆっくりと回復していた。セイジは厳重な監視下に置かれ、脱走の気配もなく、カイトはどこか別の隔離施設で眠ったまま。


別の病棟では、リカ、サナエ、ソウゲツ、リョウの四人が女子病室に集まっていた。

リカは包帯だらけで、サナエの足はギプスに覆われ、身体にはあざが残っている。


最初に口を開いたのはリョウだった。

いつもより少し乱れた金髪をかき上げながら、重いため息をつく。

「十人いた魔法使いが、今じゃ六人が動ける程度。世間は当然、不安になってる。何か案は?」


リカは眉を寄せた。

「エンジョウの子を昇格させるのはどう?今回の件で実力は見せたし……でも、さすがに早すぎるか。」


サナエは静かに息を吐いた。

「選り好みしてる余裕はないわ。少しずつ慣れさせればいい。考慮すべき子は他にもいるし……」


ソウゲツが腕を組み、低く唸る。

「だったらアイカワとオカザキのガキも上げちまえ。それで九人。七人よりマシだ。」


リカはすぐに食ってかかる。

「ゲンキはわかるけど……オカザキはないでしょ!あの子、戦争中は黒禅側にいたのよ!」


サナエが慌てて口を挟んだ。

「でも騙されていただけだし、最後は皆と一緒に敵を倒したじゃない。あの子には導きが必要なの。突き放すんじゃなくて。」


言い合いになりかけたその時、リョウのスマホが震えた。

画面を見た瞬間、目が大きく見開かれる。


「……運命ってのは、時々強引に決めてくるもんだな。もう議論の余地、ないみたいだ。」


他の三人が驚きに目を見開く。


ソウゲツが豪快に笑った。

「おお、あの方からのお達しか!なら文句は言えねぇ!戻ってきたら新入りの枠を埋めるだけだ!」


リカでさえ、敵意が和らいだ声で言う。

「……わかったわ。で?誰が選ばれたの?」

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