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第9章:ゴースト

「新記録だ。今日、とうとうテニスボールサイズまでできたな」レイジは穏やかな関心をもって、ゲンキの手のひらで輝くエネルギーの玉を検分しながら言った。


ゲンキは震える息を吐き出し、エネルギーを消散させた。あれほどの魔力を保持するだけで、心底疲労困憊だった。


「もう、やっていいんだろ?」彼は真剣な表情で叔父を見た。


レイジの視線は、しばらく彼の顔に留まった。思慮深く、少しばかり警戒しているようだった。「ああ、できる。だが、よく考えるんだ。使い魔を召喚できるのは、精霊魔術師として一度きりだ。一度召喚してしまったら、もう引き返せない。本当に覚悟はできているか?」


ゲンキは自分の手を見つめた。脳裏にレイカの記憶がちらついた。そして、深く息を吸い込むと、彼は頷いた。「準備はできてる。使い魔を召喚したい。」


レイジは何かを抑えるようにため息をついたが、頷いた。「分かった。全て準備しておこう。明日にはできる。」


その日の夕方、ゲンキはシャワーから上がり、生ぬるい風が濡れた髪を撫でる中、ベッドに横になった。携帯電話をスクロールし、レイカの連絡先で指を止めた。


プロフィール画像の中の彼女は、時が止まったように微笑んでいた。彼の指が画面の上で震える。


「まだ会いたいよ」彼はそう呟いた。「でも、もう大丈夫だから、レイカ。」


一筋の涙が頬を伝ったが、彼はそれを拭い、無理やり指を上に動かした。カイトの名前で止まり、通話ボタンを押した。


数回の呼び出し音の後、カイトが電話に出た。「お、どうした?」彼は少し息を切らしていて、バックグラウンドから竹刀が打ち合う音が聞こえた。


ゲンキは深く息を吸い込み、自分を落ち着かせた。「やあ。俺……まあ、なんとかやってるよ。叔父さんが俺を訓練してるんだ。精霊魔法を。後継者だって言われた。」


カイトは低く口笛を吹いた。「マジか。まあ、ありえない話じゃないけど……でも、すげえな。」


ゲンキは軽く笑った。「ああ。明日、俺の使い魔を召喚するんだ。」


「うわ、もうか?」


「ああ。叔父さんは自分の使い魔の話を全然しないんだけど、強いって聞いたことがある。俺が何を得るのかは、まあ、やってみないと分かんないな。」


話は訓練や学校のこと、つまらない冗談や日々のことに移り、しばらくの間、ゲンキは胸の重荷をそれほど感じずに済んだ。


翌朝、朝日が彼の窓から差し込んだ。ゲンキは身じろぎし、目をこすり、ゆっくりと起き上がった。階下からは、鉄板の上で生地が焼けるジュウという音が聞こえてきた。


ゲンキが入っていくと、レイジはちらりと後ろを振り返った。「おはよう。しっかり食べとけ――力が必要になる。」


ゲンキは黙って席につき、パンケーキを平らげた。彼の胃は、緊張と期待で締め付けられていた。


朝食を終えると、レイジは彼を家の奥にある静かな部屋に案内した。床にはチョークで複雑な魔法陣が描かれ、その線に沿ってかすかに輝くルーン文字が並んでいた。


「よし、坊主」レイジはいつも通り爪楊枝をくわえながら、口を開いた。「やり方はこうだ。魔力を練り上げ――手のひらに集めろ。そして、全てに集中しろ。お前の恐怖。希望。後悔。すべてをその魔力に注ぎ込むんだ。お前自身を込めるんだ。準備ができたら、それを魔法陣に一直線に放て。」


ゲンキは頷いた。彼はゆっくりと息を吸い込み、手のひらに魔力を集めた。光の球は、昨日よりも少しだけ大きく、眩く輝いた。


彼は目を閉じた。


彼の思考は駆け巡った――不確かさ、切望、静かな怒り、期待の重み――そして、その全てを貫き、一つの記憶が他の何よりも明るく輝いていた。レイカ。彼女の笑顔。彼女の笑い声。失われた温かさ。


彼は光の球を放った。


それは魔法陣の中心に正確に命中した。


次の瞬間、光の渦が口を開き、風が部屋の中を猛烈に吹き荒れ、ゲンキは踏ん張っていなければ立っていられないほどだった。噴き出すエネルギーは圧倒的だった――生き生きとして、荒々しく、そして古の力を宿していた。


そして、その大渦の中心から……誰かが出てきた。


光り輝く人影。


使い魔。


彼女。


レイカ。


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