第77章:精霊対影の再来
ゲンキの短剣は空を切った。シンラは影へと滑り込み、次の瞬間には背後へ現れる。ゲンキは反射的に振り返り、剣を生成した。ためらうことなく、自分の脚に短剣を突き立て、霊力を吸わせて剣へと注ぎ込む。そして、斬撃を放った。生の力が波となってシンラに向かう。
影の触手が飛び出し、その波と衝突する。圧し返すように押しつけてくる。ゲンキは電撃のブーストで弾けるように動き、背後へ回り込む。短剣がシンラの脇腹をかすめた――ほんのわずかな霊力だが、それでも重要な一滴だった。
触手は波を飲み込み、そのままゲンキへ襲いかかる。ゲンキの目が見開かれる。彼は空気を切り裂くように軌跡を描き、電撃のボルトを連射した。光は触手に呑まれ、空中でしゅう、とかき消える。
ゲンキは攻撃の隙間を抜け、剣が残像になるほどの速さでシンラの胴へ連撃を叩き込んだ。シンラは後退するが、さらに触手が爆ぜるように増え、四方八方から襲いかかってきた。
その時、ゲンキはリョウの言葉を思い出した。
シンラは夜に強くなる。
そして、太陽はまだどこにも見えない。
ゲンキは跳び上がり、短剣を投げ放つ。触手がそれを弾き飛ばす。さらに触手が迫るが、ゲンキは空中で身体をひねり、回転しながら攻撃をすり抜ける。巨大な触手の上に着地し、そのまま走ってシンラへ向かった。
シンラは触手を激しく振り払うが、ゲンキは弾丸のように跳ねながらジグザグに迫っていく。シンラが姿を消し、今度は頭上へ現れた。
ゲンキは全方位に稲妻を解き放った。だがシンラの闇が触れた瞬間、雷はねじ曲がり、倍の力でゲンキへ跳ね返ってくる。
ゲンキは地面に叩きつけられたが、すぐさま跳ね上がり、返ってきた雷を剣で真っ二つに切り裂いた。火花が戦場に散らばる。
シンラは近くの屋根に軽く降り立つ。目が妖しく光った。
「力をつけたな。だが、まだ足りない。」
ゲンキは下から睨み返す。汗と血が顔に筋を作る。
「なんでこんなことするんだよ。」
シンラの表情が、哀れみと決意の狭間で揺れた。
「この呪いから解放されるためだ。…お前には理解できないだろう。」
そして、影の触手が数十本、一斉に押し寄せる。
ゲンキは残った力のすべてを引き絞る。地面に手を叩きつけた。氷が噴き上がり、鋭い槍となってシンラに襲いかかる。そして一瞬後、それらは砕け散り、無数の氷刃となって弾丸のように飛び散った。
シンラの触手が荒れ狂い、叩き落とし、弾き返す――だが何本かは突き抜け、彼の身体に浅く傷を刻む。シンラの低い唸りが屋根の上に響く。
影がシンラの周囲に引き寄せられ、絡みつき、渦巻き、肥大化していく。
「邪魔はさせない。ここで終わりだ。」
闇はうねり、形を変え、融合し――
巨大な蛇のような影の怪物がそびえ立った。
その目が、邪悪に光る。
ゲンキはその真下に、ただ一人で立ち向かった。




