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第76章 闇の呪い

シンラは一人っ子だった。

それを孤独だと言う者もいれば、羨ましいと言う者もいた。

だがシンラにとって、それは呪いだった。


兄弟もいない。

いとこもいない。

重荷を分かち合う者が誰一人としていない。


最初から、家系に受け継がれてきた“闇の魔法”は、彼一人が背負う運命だった。


その歴史は知っていた。

その力を継いだ者は、皆変わってしまう。

怪物になるわけではないが、心が離れ、人に対する情が薄れ、以前のように他人を大切にできなくなる。


シンラはそれが何よりも恐ろしかった。


だから、努力した。

子供の頃からずっと、人と繋がろうとした。

友達を作り、絆を築き、

「自分がこの呪いを終わらせる」と誓った。


……だが、失敗した。


何年もかけて築いた友人関係が、真っ先に崩れていった。

一人、また一人と、彼は人に興味を持てなくなった。

顔はぼやけ、声は届かない。

それは闇の魔法そのものよりも恐ろしかった。


家族も助けようとしたが、彼は家族でさえ“どうでもいい”と感じ始めていた。


そんなとき、蒼月に出会った。


蒼月は魔術師の本当の歴史を語った。

そしてそのとき、シンラは“自分の敵”を知った。


――自分の血に呪いを刻んだ古の大いなる邪悪。

悪いのは自分でも家族でもない。

あれだ。あれこそがすべての元凶だ。


シンラは呪いを断ち切る方法を探して何年も研鑽を積んだ。

どの手段も失敗した。

封印魔法の前任者――リョウの祖母にも相談したが、彼女は静かな表情で首を振った。


「その呪いは、あなたの“命”に結びついています。

 どれほどの力があっても、分離は不可能でしょう。」


その言葉は、彼の執念にさらに火をつけた。


その頃だった。

柊先生の研究――“人工魔術師”という概念を知ったのは。

最初、シンラはそんなもの無意味だと切り捨て、あっさり研究停止に同意した。


しかし二年後――

黒沼シズメが覚醒した。

年下で、喧しく、好奇心の固まりのような少女だった。


最初は鬱陶しいと無視していた。

しかし彼女はめげなかった。

研究内容を聞き出し、資料を読み、いつの間にか彼の隣で一緒に書物をめくるのが当たり前になった。


やがてシンラは折れた。

全てを話した。

自分が背負わされた呪いのことも。


そのとき、シズメはたった一言で彼の世界を変えた。


「……その呪いの源を、破壊すればいいんじゃない?」


シンラは絶句した。

“大いなる邪悪”そのものを倒す?

正気とは思えない。

軍勢が必要だ。

だが現代にはそんな戦力は存在しない。


――いや、ある。


柊の研究。

人工魔術師。


それこそが答えだった。


しかし魔術評議会に案を提出すると、一瞬で却下された。

危険すぎる。

不穏すぎる。

シンラが真意を隠したことは、彼への不信だけを強めた。


不満は憎悪へと変わっていった。


やがてその憎悪は決意へと姿を変えた。

シンラは闇の魔法を外側へ向けて使う術を学んだ。

消費するのでも、飲み込むのでもなく――“歪める”。

触れるだけで、囁くだけで、人の心を少しだけ揺さぶる。


もちろん、誰も“古代の邪悪を解き放とう”などとは言わない。

だからシンラは核心を隠した。

代わりに、欲望へと訴えた。


権力、金、愛、復讐――

それぞれが求めるものを与えると言い、

弱者の救済を語り、

新時代の到来を約束した。


嘘と真実を混ぜ合わせ、彼は支持者を増やしていった。

魔法を特権ではなく、万人のものにすると掲げながら。


そして、その計画は想像以上にうまくいった。


決定的だったのは、ランジロウが仲間になった日だ。

“無限の戦い”を求める怪物に、シンラはそれを約束した。

ランジロウはそれを受け入れ、その力が加わった瞬間――シンラは動いた。


待ち伏せは迅速で容赦がなかった。

魔術師たちは混乱し、シンラとその配下が世界へと勢力を広げる大きな転機となった。


こうして――


サンセットが誕生した。

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