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第73章:ためらい

氷で腕を覆い、間一髪で構え上げる。刀身が鋭い音を立てて擦れ、火花が散った。

ゲンキは後ろへ跳び下がり、そして再び、相手の顔を見た。カイトだった。


「カイト、やめろよ。俺だ、ゲンキだ!」


だがカイトは何も言わない。ただ無言で、もう一度斬りかかってきた。

会話は無駄だと悟り、ゲンキも構え直す。


背後から氷の槍が飛ぶ。だがカイトはわずかに首を傾け、難なくかわした。

低く身を沈め、足払いを放つ。ゲンキは足元を凍らせて耐えるが、カイトは自身の足を交差させ、その氷を砕いてバランスを崩させた。


ゲンキは転びながらも転がって回避。次の瞬間、カイトの刀が地面に叩きつけられた。

膝をついたカイトが低く斬り払う。ゲンキはスピリットソードで受け止めたが、その一撃の重さに吹き飛ばされる。


体勢を立て直し、ゲンキは電撃をまとって突進した。火花が走る。

しかし、カイトも同じ速度で迎え撃つ。


――おかしい。さっきまで自分の方が速かったはずだ。


その瞬間、理解した。

(違う……俺が遅くなってるんだ。疲労で――!)


アドレナリンが切れ、筋肉が鉛のように重くなる。

防御に追われ、必死に剣を振るうが、体が言うことを聞かない。


ついに足がもつれ、地面を滑る。剣を支えようとしたが、スピリットエネルギーが途切れ、刃が消えた。


カイトが刀を振り下ろす――


だがその瞬間、光の障壁が割り込んだ。

ゲンキが驚いて目を見開くと、レイカが隣に着地していた。彼女の手から癒しの光があふれ出す。


「戦場から姿が消えたから、探しに来たの。大丈夫?」

いつもの軽口は消え、真剣な声だった。


ゲンキは深く息を吸い、彼女の癒しを受けながら立ち上がる。

背後から再び斬りかかるカイトに振り向きざま、氷の拳で刀を弾いた。


「もう大丈夫だ。――助かったよ。」

ゲンキは再びカイトを見据える。

「悪いな、カイト。でも今は、戻らなきゃいけないんだ。」



---


一方その頃、レイジは苦戦していた。

シズメが体内から攻め立ててくる。腕の関節を外し、血流を止め、筋をねじ曲げる。

普通なら立つことすら不可能だ。だが――彼はまだ動いていた。


腕を振るい、足を踏み出し、いつも通りの鋭さで戦っている。


シズメは苛立ちよりも好奇心を見せて首をかしげた。

「どうやってるの? 本来なら立つこともできないはずよ。」


レイジは汗を滴らせながら、にやりと笑う。

「知りたいか? じゃあ……勝利を賭けるんだな。」


シズメの笑みが狂気を帯びる。

「いいわ、見せてもらおうじゃない。」


彼女は音の壁を破り、拳を突き出した。レイジの胸を貫く――はずだった。

その瞬間、彼女の笑みが固まる。


顔に浮かぶのは困惑、そして――恐怖。

視線を上げると、そこにあったのは……彼女の頭上に広がる“それ”。

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