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第7章:崩壊

ゲンキは病院にいた。

再び。


だが、今回は静かだった。

あまりに静かすぎた。


笑い声もない。

嫌味な口調もない。

レイカはいない。


彼は黙って座り、壁を見つめていた。身動き一つしない。


叔父がよく見舞いに来た。食事を持ってきたり、ただそばに座っているだけだったり。ゲンキはほとんど気づかなかった。ろくに口も利かない。世界を意味あるものにしてくれたたった一人の人間――彼の親友であり、もう一人の自分――が、いなくなってしまったのだ。


彼は夜ごと、声にならない悲しみを押し殺しながら、泣きながら眠りについた。


そして、葬儀が執り行われた。


一週間が経ち、彼は退院していた。葬儀が終わり、気づけばゲンキは最後に一人だけ残されていた。他の皆はすでに帰ってしまっていた。


彼はただ、地面を見つめていた。無感覚で、虚ろなまま。


周りの世界は、彼を気にすることなく動き続けていた。

だが、彼の世界は止まってしまったのだ。


何時間も経ってから、レイジが戻ってきた。彼はまだそこに座っていた。言葉もなく、男はゲンキが立ち上がるのを助け、家へと連れ帰った。


続く数日間は、全てがぼんやりと過ぎ去っていった。食事をし、シャワーを浴び、服を着る――彼はまるで幽霊のように、ただ日々の動作をこなしていた。


そして、ついに誰かがドアをノックした。


アリサト・カイト。


旧友がそこに立っていた。片方の肩には木製の竹刀がかけられている。その表情は穏やかだが、確固たる決意を秘めていた。


「おい……辛いのはわかる。でも、いつまでも閉じこもってちゃダメだ。」


ゲンキは茶色の髪の少年に顔を上げた。瞳は虚ろだ。彼はためらってから答えた。「彼女だって、俺にずっと落ち込んでてほしいなんて思ってないのは分かってる……でも、あいつは俺の親友だったんだ。どうやって――どうやって前に進めばいいのか分からないんだ。」


カイトは中に入り、彼の隣に座った。そして、安心させるように肩に手を置いた。「前に進むのはプロセスだ、ゲンキ。彼女を忘れろなんて言ってない。ただ……今日は少しだけ、生きようぜ。な?」


ゲンキはほんのわずかな、無理に作ったような笑みを浮かべた。

その笑みは、目にまで届いていなかった。

「わかった。……ああ。これもあいつが望んだことだろうしな。」


二人は一日を共に過ごした。

カイトは彼と組手をした。つまらない冗談を言った。ありえないほどの量の食べ物を買った。


そして、ゲンキが心から笑った時――一度、いや二度だが――心の中の虚しさは消えなかった。ただ……潮が引くように、少しだけ後退した。


一日が終わり、ゲンキは薄暗い空の下を一人で歩いて家に帰った。


しかし、自分の住むブロックにたどり着いたその時、かすかな青い煌めきが彼を立ち止まらせた。半透明の結界が、かすかに唸るように脈動していた。


叔父の魔法だ。


近くの路地の影から、レイジが姿を現した。風にわずかにコートがはためき、沈みゆく夕日が彼の背後をオレンジ色に染めていた。


「やっと立ち直ったか、坊主。」その口調は穏やかだが、どこか期待に満ちていた。「俺は辛抱強く待った。だがお前が第一歩を踏み出した今……始める時だ。」


ゲンキは瞬きをした。「何を?」


「訓練だ。」レイジが手を掲げた。精霊エネルギーが彼の周りを渦巻き、あの日、ゲンキが発動させたのと同じかすかな青い光を放っていた。「お前が戦ったあの男が、お前の中の何かを触発した。お前は精霊魔法に目覚めた。嫌でも、お前はもう魔術師だ。そしてもし、この力を制御できなければ……」


彼は警告を言葉にせず、そのままにした。


ゲンキは叔父の手のひらで渦巻く魔法を見つめ、胸が締め付けられるのを感じた。彼の悲しみは消えていなかった――しかし、彼の中の何かが、小さな何かが、固まり始めていた。


決意。


彼はレイジの瞳を見つめ、真剣な顔で言った。


「分かった。さっさと済ませよう。」


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