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第69章 ライバル関係

セイジが唸り声を上げ、ゲンキを睨みつけた。

ゲンキも目を見開き、思わず叫ぶ。


「どうやって……火なんか出した!?」


セイジは咳き込みながら、掠れた声で答える。

「動物を……何種類か混ぜただけだ。地獄みたいに痛ぇけど……不可能じゃねぇ。」


ゲンキは歯を食いしばる。

セイジは凍りついたカイトの傍に跳び上がり、見下ろして鼻で笑った。


「二分も持たなかったのかよ……使えねぇ。」


再び、セイジの背中から触手が噴き出す。

今度の先端はピストルエビではなく、鋭いカニの鋏。


「覚悟しろよ、相川。今度は本気だ。」


鋏が飛び出す。

ゲンキは一撃を潜り抜け、回転してもう一本をかわす。

だが一本の触手が体に絡みついた。

彼はそれを斬り払う——


——だが切断面から牙のような突起が生え、突き刺さるように伸びてくる。

ゲンキは空いた手で受け止め、押し返す。

強烈な力で胸元へと押し込まれていく。

じりじりと、牙が肉に迫った。


そこへ、牙に絡みつくようにクラゲの触手が現れた。

ゲンキは咄嗟に手を離し、身を翻して走り抜ける。

かすめるだけで焼けるような痛み——危うく触れずに済んだ。


セイジの身体はさらに変異していく。

両腕が伸び、剣魚のような刃に変わる。

それが突き出される。

ゲンキは腕を氷で覆い、刃の縁を押し広げるように受け流した。

両掌を突き出し、水の奔流を叩きつける——


しかし、セイジはにやりと笑う。

全身の鱗が輝き、水流を弾き返した。

肌を覆うように半透明の粘液が流れ出し、剣の刃を滑らせる。


ゲンキの声が低く冷えた。

「獣術師の研究は済ませてある。そのスライム……水分が主成分だろ。」


掌に電光が閃き、雷が放たれる。

電流がスライムを伝い、セイジの体を貫いた。

「ぐあああっ!!」

自らの防御が裏目に出る。

全身が痙攣し、黒く焦げた皮膚が剥がれ落ちる——だが、すぐに再生が始まった。


息を荒げながら、セイジは立ち上がる。

「やるな、相川……だが同じ手は二度も食らわねぇ。」


一本の触手が膨らみ、鋭い音を立てて閉じる。

次の瞬間、爆音とともに衝撃波が放たれた。

鋏は粉々に砕け散る。


「またピストルエビか!」ゲンキが叫ぶ。


レイカが障壁を張り、ゲンキがその背後に氷壁を作る。

衝撃波が地面を裂き、障壁がきしむ。ひび割れながらも、なんとか耐えた。


ゲンキはその隙に飛び出し、短剣を投げ放つ。

刃がセイジの足に深く突き刺さり、霊力が流れ込む。

力が吸い取られていく。


「……捕まえた。」ゲンキが呟く。


だがセイジは唸り声を上げた。

「クロザネから聞いてるぜ、その技は!」


右腕が巨大なダンクルオステウスの顎に変わり、

自らの足首を噛み砕いた。

骨が砕け、血が飛び散る。

だが次の瞬間には、傷口が再生し始めていた。


ゲンキは息を呑む。

「そこまでして……何のために戦うんだ!?」


痛みに歪む顔のまま、セイジは静かに答える。

「お前が……俺の父を殺した。オカザキがそう言ってた。復讐するまで、俺は止まらねぇ。」


「それは違——」

ゲンキの言葉は途中で途切れた。


セイジの太腿が裂け、そこから鋭い蜘蛛の脚が生え出す。

八本の脚が地面を叩き、恐るべき速度で迫ってくる。


ゲンキは防御を取ろうとしたが、足がもつれた。

——思い出した。

スティングレイの毒が、まだ抜けていない。


セイジの牙が迫る——その瞬間、空気を裂く音。


炎が走った。

燃える鞭が四本の脚を絡め取り、セイジの体を地面に叩きつける。

炎が一気に燃え広がり、彼の体を焼いた。


「ぐっ……!」


炎の明かりの中、足音が響く。

影の中から一人の男が歩み出た。


——ハルトだった。

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