第6章:悲劇
鼻を突き刺すような鋭い焼ける臭いで、ゲンキはゆっくりと目を覚ました。
煙だ。
彼はゆっくりと、方向感覚を失ったまま身を起こした――
そして、固まった。
先ほどまでいた部屋が、炎に包まれていた。濃い煙が天井に向かって渦を巻き、医者や看護師が互いに叫びながら、慌てて消火器を噴射している。
その燃えさしの中から、一つの体が引きずり出された――
炭化していた。微動だにしない。
彼女だった。
その瞬間、ゲンキの世界は砕け散った。胃がひっくり返る。叫び、泣き、吐き出したかった――この瞬間を通り過ぎさせるためなら、何でもしたかった。だが、何も変わらない。
これは現実だった。
彼の呼吸は荒く不規則になった。体が震える。医者たちが火傷や怪我を診ようと駆け寄ってきたが、彼はほとんど認識していなかった。
彼の心は、あの男に跳んだ。
廊下ですれ違った男。
ゲンキはその男が誰なのか知らなかったし、気にしない。分かっていたのだ。骨の髄まで――こいつがやったのだと。
彼はためらわずに駆け出した。
かすかな青いエネルギーが体から湧き上がり、止めようとする驚いた医者たちのそばを駆け抜けていく。男はすでに外にいた。
ゲンキは病院のドアを突き破り、全速力で通りを駆けた。数分走った後、彼の目は標的を捉えた。怒りが皮膚の下で煮えくり返り、冷たく、一点に集中した。
男は振り返った。その顔には傲慢な笑みが浮かんでいた。その笑みは歪んだ喜びに満ちて、さらに広がった。彼の瞳は、野獣のような光を宿していた。
ゲンキは目を細めた。
「あんたが誰かなんて聞かない」彼は声が怒りで震えているのが分かった。「どうせ死ぬんだから、どっちでもいい。」
そして、彼は突進した。
拳を固める。その体は不自然な力に突き動かされ、常人ではありえない高さに跳躍した。青いエネルギーが体から脈動し、その光は強さを増していく。
男は不気味なほど落ち着いた様子で一歩退き、最初の攻撃を間一髪でかわした。両手をポケットに入れたまま、宙返りした――ゲンキの真上を飛び越え――空中で体をひねり、ゲンキの首の後ろを蹴りつけた。
ゲンキはうめき声を上げてよろめいたが、すぐに体を回転させ、男の足首を掴んで舗道に叩きつけた。
男は狂気じみた笑い声を上げ、腕立て伏せのような体勢で体勢を立て直す。そして体を上方に打ち出し、体をひねり、もう一方の足でゲンキの肩に真っすぐ蹴りを叩き込んだ。
ゲンキは地面に強く打ち付けられたが――男の足を再び掴み、今度は自分の肩を前に突き出し、男をも引き倒した。
二人は一緒に倒れた。
ゲンキは即座に馬乗りになり、腕ひしぎを狙う。男は身をひねり、ゲンキのバランスを崩すと、彼を投げ飛ばし、上を取った。
ゲンキは転がったが、素早く態勢を立て直した。片方の手のひらを男の顎に押し付け、もう一方の手を曲げた自分の肘に叩きつけて腕を真っすぐに伸ばし、男の頭を後ろに反らせた。
しかし、男は滑らかな後方宙返りで飛び退き、羽のように軽く着地した――そして、一つのガス缶を地面に投げつけた。
カチッ。シュゥゥ――
催涙ガスが噴き出した。
ゲンキは目を覆い、よろめいた。せき込み、視界がぼやける。
それが晴れた時――
男の姿は消えていた。