第29章:最後の戦場
シンラはマントを風になびかせながら、現場に足を踏み入れた。彼は弱ったランジロウを見下ろし、ニヤリと笑った。
「お前は期待通りに動いてくれた。本当によくできた犬だ、そう思わないか?」
彼は手を伸ばし、冷たい無関心さでランジロウの顔を掴んだ。袖の下から**影の触手**が伸び、ランジロウの頭蓋骨に食い込んだ。ランジロウの頭は上に跳ね上がり、シンラを睨みつけ、顔は無言の悲鳴で歪んだ。
「この野郎……」彼はかろうじて絞り出した――その直後、彼の目は完全に虚ろになった。シンラの**腐敗**がついに彼の精神を圧倒したのだ。
「お前にもう生命力は必要ない」シンラはさりげなく言った。「ただの俺の操り人形になったんだからな。」
ランジロウはぐったりと崩れ落ちた――それからゆっくりと立ち上がり、その四肢は不自然に痙攣していた。シンラは嘲笑うように彼の頬を軽く叩いた。
「恐ろしい獣の魔術師も、ただの人形に成り下がった。情けない。」
彼はゲンキとハルトに注意を向けた――二人の少年は極度に疲弊していた。そして今、彼らには一匹ではなく、二匹の敵がいた。
ランジロウは警告もなく飛びかかり、獰猛な動物のように唸った。彼は高く宙に舞い上がり、ゲンキに向かって爪を伸ばした――
だが、その一撃が当たる直前、激しい**風の爆発**が彼を舗道に叩きつけた。
ランジロウは歩道に跳ね返されて叫び声を上げた――そして再び着地する間もなく、彼の真下の地面から**氷の杭**が噴出し、彼を完全に貫いた。
彼の目は、ほんの一瞬だけ正常に戻った。
「へっ……お前も、まんざらでもないな……」彼は血まみれの笑みを浮かべて呟いた。
そして、彼は静止した。目は虚ろ。体はぐったりと力が抜けている。
彼が視線を送っていた方向から、人影が空から舞い降りてきた――**ダイゴ・エンジョウ**だ。彼の着地は土煙を巻き上げた。彼はランジロウの体――かつての友人で今は敵となった者――を見下ろした。
一瞬、ダイゴの顔に同情のようなものがよぎった。
だが、それは一瞬だけだった。
彼は立ち上がり、シンラに向き直った。
シンラは明らかに苛立って眉をひそめた。
「まあ、これは計画にはなかったな。だが、構わない。遅かれ早かれ、お前に対処することになるとは思っていた。」
ダイゴは首の関節を鳴らした。足元で炎がちらついている。
「お前はそこまでやる気だったのか?俺たちの仲間を、何の意識もない操り人形に変えるなんて!」
シンラは肩をすくめた。
「彼は利用価値を失った。そして今、死んだ。ふさわしい最期だろう?」
ダイゴの目が細まった。怒りが表面下で震えている。
「お前にはもう、何も通じない、クロザネ。」
彼が地面を踏み鳴らすと――**土の杭**が上空に突き上がり、シンラを狙った。
それに応え、シンラから**影の触手**が暗い網状になって噴出し、障壁を作り出した。杭はぶつかったが、貫通することはできなかった。
シンラは影から飛び出し、前方に跳躍した。ダイゴ自身の**影**を逆手に取り、背後から元素魔術師に向かって触手が殺到した。
だが、ダイゴの背中が突然炎上し、彼の影を光で包み込んだ――触手を分解したのだ。
ためらうことなく、彼は**唸りを上げる竜巻**を召喚し、シンラにまっすぐ投げつけた。
闇の魔術師の目はわずかに見開かれた――だが、素早く行動した。触手が鞭のように伸び、近くの二つの建物を巻きつけた。強力な力で引っ張り、それらを崩壊させた。
瓦礫が落とす影から、何百もの触手が噴出し、巨大なプロペラのように激しい渦を巻いて――竜巻と真っ向から衝突した。
自然対影。
風対闇。
どちらも譲らない。
衝突が最高潮に達したその時、シンラの背後から**石の杭**が噴出した――だが、彼は間一髪で自身の**影**の中に消えた。
彼はハルトの**影**から再出現し、腕を伸ばした。
「さて、小さなエンジョウよ……お前が俺の盾になってもらうぞ。」
彼がハルトに手を伸ばすと、複数の角度から**杭の集中砲火**が彼に向かって飛んだ。シンラは石が落とす影を利用し、さらに多くの触手を召喚してそれらをブロックした。
「俺の息子を巻き込むな!」ダイゴは咆哮した。彼は石の罠の中心を**炎**で照らし、シンラの逃げ道を断った。
そして、**風の魔法**を使って息子を引っ張り、そっと降ろすと、シンラを睨みつけた。
「ここで終わりだ、裏切り者。」
彼が指を鳴らすと――**淡い青い炎の渦**がシンラの周りで噴出した。炎は非常に高く、明るく燃え上がり、宇宙からでも見えるほどだった。
ダイゴは踵を返して立ち去ろうとした――だが、彼の背後で、青い炎は紫に変わり、シンラの手のひらの中で球体へと凝縮した。
「愚か者め」シンラはわずかにニヤリと笑った。「俺がお前の炎を腐敗させられないとでも思ったか?」
彼はその球体を弾いた――
――そして、純粋で燃えるような**紫の熱の凝縮波**が前方に放たれた。
ダイゴは即座に振り返り、何十もの**石の壁**を形成した。だが、その一撃はバターのようにそれらを溶かして貫通した。
叫び声を上げながら、ダイゴは右腕を絶対零度にも匹敵する**冷たい氷**で覆った。彼は前方に拳を突き出し、**腐敗した炎**と衝突し、最後の破滅的な爆発を引き起こした。
煙が晴れた時、ダイゴはかろうじて立っていた――だが、彼の右腕は失われていた。
シンラも消えていた。
ダイゴは他の二人に向き直った。
「お前たちは大丈夫――?」
彼が言い終わる前に、一つの手が彼の後頭部を掴んだ。
シンラだ。
彼はダイゴ自身の**影**から再出現し、触手が元素魔術師に深く食い込んだ。それは彼の肉体を吸い取るためではなく――彼自身の**魔法**を腐敗させるためだった。
ダイゴは痛みに咆哮し、目が純粋な白に変わった。
霞がかった視界の中、彼はハルトを見た――ただ一度だけ。
「お前を誇りに思うぞ……息子よ。」
そして、彼は口を大きく開け――体内の魔力の全てを放出した。
**元素エネルギー**――炎、風、土、水――は、生きている光の展示のように、空へと筋を描きながら輝く爆発として噴出した。
それはあらゆる方向に分散した――シンラの届かない遠くへ。
ただ一つを除いて。
シンラは**一つの魔力の球体**を捕らえた。
深紅のオーラが彼の手の上で浮遊していた。
ハルトは「父さん!」と叫び、地面に崩れ落ちた。
たった一日で、二人の魔術師が命を落としたのだった。




