第四話
ふと目が覚めた。学校から帰宅してすぐに昼寝してしまっていた。鏡を見ると目が赤く、頬が濡れている事に気づく。そういえば懐かしい夢を見た気がしたが、思い出せない。
時計を見ると二十三時半を示していた。晩御飯の支度をと思ったが面倒臭いのでカップうどんで済ます事にした。お湯を入れ何となくテレビを眺めていると、参拝客でいっぱいの神社が写されていた。もう神社は懲り懲りだと思いながら、麺を啜る。
食べ終わり、台所で煙草を吸おうと思い移動する。今日貰ったハイライトに火を付けるために一本取り出す。そういえばもう新年かと考えながら煙草を咥え、火を付けた。その瞬間、何処かで除夜の鐘の音が聞こえた。近くに神社はないから聞こえるはずないよなと考えていると、インターホンが鳴った。
この時間にと恐怖を覚えながら、恐る恐るドアスコープを覗くとそこには見覚えのある女性が立っていた。
幸が薄い顔、どこか憂いを帯びた表情には似合わないホクロが左側の目元に二つ。もう一度会える喜びよりも、驚きが優ってしまい動揺する。呼吸を整え、ドアを開けるとそこには誰も居なかった。
落胆と恐怖に苛まれつつもその場所に一つ小さな箱が落ちている事に気が付いた。それを拾い上げ、見るとキキョウと書かれていた。そしてその下には箇条書きで条件が書かれていた。
用法容量を守る限り、あなたに幸せが訪れます。守らない者には罪が与えられます。罪を背負う者には罰を。
1 一日三本まで。
2 効果は火を付けた瞬間に現れます。
3 日付が変わると吸った分が補充されます。
4 願いは現実的な規模で反映されます。
全てを理解した。これは怪しい危ない薬なんだなと。しかし中を開けてみるとそこには四本の煙草が入っていた。半信半疑だったが、悩んだ末に一本取り出し吸ってみる事にした。
極度の緊張を経験したせいか喉が渇いたが、好奇心の方が勝っていたので取り出した煙草に火を付けた。味をたしかめてみるとなんの変哲もないただのハイライトであることがわかった。最近の悪戯は手が凝っているのかと思ったが、灰皿のすぐ横にペットボトルのお茶が置かれている事に気が付いた。買ってきていない物が目の前に置いてある事に驚愕した。
もう一度試そうと思い、プリンが食べたいと思いながら吸った。しかしどこにも現れない。もしやと思い冷蔵庫を開けるとそこにはプリンが置いてあった。
これはすごい物を手に入れてしまったと考えていると、どこまで可能なのかが気になってきた。寝る前に風呂に入りながら考えようと思い風呂を溜め、湯船に浸かっていると石鹸が切れている事に気が付いた。台所にあの煙草があったので火を付け、湯船に浸かりながら石鹸が欲しいと願う。瞬きをした瞬間そこには新品の石鹸が置かれていた。驚きよりも便利な物を手に入れたと言う喜びの方が優っていた。
明日また実験してみようと思いその日は早めに眠る事にした。