六話 母からの電話
彩藤さんとの話を終えた俺は居候先へ戻り、夕飯をいただいて暫くした後に電話が掛かってきた。
『もしもし、晴政?』
「うん、久しぶりだね母さん」
どうやら彩藤さんはで母さんに事情と連絡先を伝えてくれたらしく、彼の言う通り母さんから電話がかかってきた。
知らない番号だったので身構えてしまったが、彩藤さんの言葉を思い出して良かった。
『えぇ、久しぶりね。…それでね、ツヨシ君から聞いたんだけど…』
ツヨシとは彩藤さんの下の名前だ。フルネームは彩藤 剛という。
「あー、そうだね。あのクソ親父に色々とね…」
『そう…ごめんなさい、私があの時晴政を引き取っていれば…』
誰がこんなこと予想できるのか、どう考えても悪いのは莉乃とクソ親父だ。
「やめてよ、俺は母さんが悪いなんて思ってないよ」
『晴政…ううん、それでもごめんなさい』
母さんの声は震えている。
きっと泣いているのだろう…優しいからね。
中学の時にクソ親父がクソ義母と不倫をして母さんと離婚、そのあとソイツと再婚したんだ。
元々母さんに付いて行きたかったのだが、母さんが親権を譲ってしまったのだ。
母さん曰く…
クソ親父は良い役職就いているからか、収入が多く金があるので俺の生活や学歴などの面で苦労しないようにと考えてのことらしい。
その時母さんは専業主婦でお金がなく、慰謝料やら養育費やらだけでは足りないと考えての事だったのだとか。
母さんはその事を深く後悔している。
『もし、もしね?晴政がよかったらなんだけど、もう一度私と一緒に過ごさない?』
「え、いいの!?」
『えぇ、今度は不自由させないと思うから…』
「不自由だっていい、俺は母さんと一緒にいたいよ」
母さんは厳しいが、それは優しさからくるものだとよく知っている。
それに比べて甘々ユルユルだったクソ親父は、無関心だから金だけ渡してほぼ放置するスタンスだった。
進学関係とか生活費などといった金銭面での面倒はないが、それでは家族とは言えない。だからあまり好きじゃなかったんだ。
対する母さんはいつだって真剣な向き合ってくれる…それが伝わるからこそ、大事な家族だと思っていた。
『それなら明日、改めて話をしましょう。学校終わったら電話を掛けてくれる?近くにいるから』
「分かったよ、じゃあね母さん」
そう言って電話を切る。
そりゃこんな事になればね。
そういえば希が、友人の誰かが莉乃の家にこの事を暴露するなんて話をしていたが結局どうなったのだろうか?
そんなことを考えていると、タイミング良く電話が掛かってきた、莉乃のお母さんだ…もしかして…と思い電話に出る。
『こんばんは、ハル君』
「どうも」
アイツの親か…まともそうに見えたがあまり信用出来ないんだよな。
子が子なら…そうならない事を祈るが。
『話を聞いたの…莉乃が、ウチの娘が本当にごめんなさい!』
電話越しに莉乃の母親の悲痛な声が伝わってくる…やはり自分の娘だから罪悪感があるのだろうか?
「悪いんですけど、正直許せないですね」
『そうよね…お父さんも莉乃に怒っていたわ、私も同じよ。この償いはしっかりさせてもらいます』
「そうですか、それは分かったんですけど…どうやって知ったんです?」
大体察しはつくがそれでも少し気になる、どうやって知ったんだ?
『実は莉乃の友達って子から、あの子の話と…その…写真を見せてもらったのよ。まさかあんな事…本当にごめんなさい』
多分写真というのは俺が希に送ったやつか。キレーにクソ親父と莉乃のツラが見えてるから間違えようがない。
いや周りに暴露しまくるなんて陰湿なやり方だなぁ…でもあっちもあっちだし容赦することもないだろ。
「まぁ後は莉乃がどうするかですね、アイツが反省してるって言うんなら、態度で示して貰えればそれでいいんで、取り敢えずそういう事にしましょう」
正直言って本人でもないのにアレコレ話しても面倒なだけなので、とっとと電話を切りたい。
『分かりました、あの子にもしっかり言い聞かせます。長々とごめんなさいね』
「いえ、それではおやすみなさい」
そういって電話を切る。
…莉乃がどうしたいのかわからない以上、許すなんて軽々しく言えないよ。
まぁどちらにせよ償いはしてもらうけどね。




