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86-魔女カルラ

「こっちだ、早く入れ」


偉そうな物言いのメズメに案内されて、立派な玄関からではなく裏口から入る。

色々な薬品や資材が積み上げられた物置みたいな狭い通路を抜けて、洗濯板と桶の置かれた小さな部屋に入る。ここが勝手口らしい。


「先ほどの竜人たちと扱いが違うでゲスねえ……こちらも竜人たちの姿をしているから堂々と正面から入れてくれても良いと思うんでゲスが」


「それどころか敵か味方かもわからないからなあ……みんな、油断するなよ」


ゲス郎とイチがそんな会話をした瞬間に




ふわっ




鼻腔をくすぐる桃の花のような香りがして、イチたちの変化が解除された!


「うわっ⁈」


「きゃあ⁈」


急に解けた変身に慌てる一同。すると、


「ふふふ、正体はバレているんだから変身している必要はないでしょ⁈」


部屋の奥からこの場には不似合いなキュートで色っぽい声がした。

驚いて声のした方を見ると部屋の奥の扉が開き、ナイスバディで高身長ロングヘアのお姉さんが現れた!


透き通るような瑠璃色の瞳で睫毛は長くばっさばさ、やや垂れ目で左目の下には泣き黒子があり、蠱惑的な微笑を浮かべている。黒と赤が基調の少しシックな服と帽子を身に着けているが、浮き出る体のラインは匂い立つような色気を放っている。


「うわ……これは……」


イチの口から思わず声が出た。首筋がぞくりとする。これは大体の男なら参ってしまう艶っぽさだ。


「(フォレスタとは違う魅力だ!普通の高校生男子じゃ抵抗すら出来ないだろうな……まずい、頭がぼうっとしてきた……)」


イチは脳内に数式を浮かべ、必死で魅力に抵抗した。効果があったかは分からないが、とりあえずは平静を取り繕い、目の前の美女に問う。


「……貴女が、魔女カルラですか⁈」


必死さが漏れないように、ゆっくりと喋るイチ。

その声を聞いた瞬間、美女は少し目を見開き感心したような顔をした。そして、


「はいはいはいはいはい正解~♪どもども初めまして~♪私は魂の魔女カルラ。勇者イチとその仲間たちね、待っていたわよ~⁈そちらの可愛らしいお嬢ちゃんは……ワーミ領の領主様かな⁈あら、予想以上にかーいいわあ!撫で繰り回したいわあ!そんで、そちらのシュッとした美人さんは……オオオオオオ⁈森の民の長の娘さんじゃない⁈んっふっふっふ、噂通り見目麗しい美人さんだこと、目に優しいわあ!ところでこちらのちょっとゲス顔で鼻の下伸ばしてる子はどちらさまかしら⁈見た感じ荷物持ちかな~⁈」


キャピキャピした声で嬉しそうにまくしたててきた!大人のお姉さんかと思っていたら……なんか思ってたのと違うぞ⁈

一同が呆然としていると、カルラはそれを見て悪戯っぽく笑い……


「ま、聞きたい事色々あるわよねえ⁈大体の事には答えられるわよ、何が聞きたいのかしら⁈」


そう言ってきた。

その言葉にハッとなって、即座に質問する。


「さっき玄関から、竜人と竜人側に寝返った人間が出て来るのを見ました。教えてください、貴女は人間の味方ですか、それとも竜人の味方なのですか⁈」


単刀直入に聞いてみるイチ。

するとカルラは


「んっふっふっふ~♪どっちだと思う⁈」


はぐらかすような回答をしてきた。いや、それどころか目は笑ってる。まるでこちらを試すかのようだ。


「(……まずい!フォレスタがカッとなって突っかかるかも……!)」



焦りながら、フォレスタの方を見る。だがフォレスタは動かなかった。それどころか目はとろんとしており、頬を赤らめつつ、ぼうっとしている。


「(え⁈どうした⁈)」


ハッとなってリコとゲス郎の方も見る。二人とも同様だった。頬を赤らめぼうっとしている。


「(何かされたのか⁈いや、ちゃんと頭のてっぺんから指先までちゃんと見ていた!魔女カルラが何かした様子はなかった!確かに超色っぽいお姉さんだけど、ゲス郎はともかく顔面偏差値で相手を虜にできるフォレスタが簡単に魅了されるとは思えないけど⁈)」


そう思ってもう一度魔女カルラを見る。何かした様子はない。

周りも見てみる。怪しい物はない。せいぜい先ほどの偉そうな態度のメズメが棚の上に留まっているのが見えるくらいだ。






一瞬、そのメズメの羽の周囲の風景が歪んで見えた気がした。






ハッとなって眼球の奥に力を入れる、空気は液体だと思いながら周囲を見ると、










メズメの羽から水の流れの様なものが流れていて、イチたちの周りをすっかり囲んでいた!

そしてその水の流れに乗って鼻腔をくすぐる桃の花のような香りが来ている!














「やられた!重力制御か!」


おそらく重力制御で何か薬品を流したんだ!やられた!

イチは翠亀剣を引き抜き『薙ぎ払い』を出そうとする!が、翠亀剣は抜けなかった!

それを見て、


「よしよし、重力制御は使えるんだね。なんとかなりそうだ!でも経験不足だね~、判断が遅い。今のが毒だったら終わりだったよ~」


ケタケタ笑う魔女カルラ。さらに、


「命拾いしたなガキ、鳥が『重力制御』使うなんて考えもしなかったんだろ⁈もっと考えて動くんだなドラフト下位勇者さんよ」


さっきの偉そうなメズメが呆れたような口調で喋りかけてきた。えっと思って翠亀剣をよく見る。するとメズメからの『重力制御』の流れはイチの剣と鞘を紐でぐるぐる巻きにしたかのように固定していた!これじゃ抜けるわけない!


「大丈夫、大丈夫~。貴方たちは合格だから。チルル、『重力制御』を解いてあげて」


魔女カルラがそう言うと桃の花の様な香りが消え、同時に翠亀剣にかかっていた圧も消えた。そしてリコたちが目を白黒させているのも見えた。どうやら正気に戻ったらしい。


ホッとして前を向くと、いつの間にか魔女カルラはイチの目前に来ていた。そしてカルラはその色っぽい目でイチの瞳の奥をじいっと見つめ、


「ありふれた色だけど綺麗な瞳ねえ。まるで透明度の高い泉みたい。ふふふ、気に入ったわ。そうそう、チルルは口は悪いけど優しい子だから怒らないでね!」


そう言いながら吐息をイチの鼻先に吹きかける。そして、


「まあ、とりあえずは食事にしようか。腹ペコなんでしょ~⁈何か作るから、ついておいで!」


そう言いながら魔女カルラは部屋の奥に消えていった。



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