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83-ドラゴニアの街

ドラゴニアの街に着いた。魔道具の力で竜人に変化して街を歩く。


「(裕福そうな街だな)」


思わず心の中で呟く。空気はカラッとしていて、街並みは綺麗でゴミも落ちていない。オレンジの屋根瓦とクリーム色の壁が基調の建物が並ぶ繁華街は陽が落ちても煌々と魔法の明かりが灯されていて、人々も多く、景気も良さそうだった。と言うか思ったより竜人は多くなくて人間の方がはるかに多い。


「ドラゴニアは一応人間の街なんだけど、竜人のお膝元であるのと、竜人の支配を積極的に受けている人間が上層部だから、これといって対立もないんだ。竜人も無抵抗の人間には優しいって聞いた事はあるかな。ボクは嫌だけどね」


フォレスタが苦笑いしながら説明してくれた。そんな時、鼻腔をくすぐるカレーみたいな良い匂いがして、ふと横を見る。すると、そこには赤と金で装飾された派手な看板の屋台があり、肉と野菜がゴロゴロ入ったタコスみたいな食べ物を売っていた。


「カルコスでゲスねえ!美味そうでゲス!歩き詰めで腹が減っているから食って行きたいでゲス」


ゲス郎がよだれをたらしそうな表情で訴えてくる。でも見た目が竜人だからなんか怖い。


「後にしろ」


イチがそう言いかけた時に


「これは竜人様!うちのカルコスをお求めで!ウチのカルコスは天然肉ですから美味いですよ!是非貰ってやって下さい!」


そう言いながら屋台の主人がこちらの人数分のカルコスを押し付けてきた。


「え、ありがとうございます。えっと、おいくらですか⁈」


リコがそう言いながら財布を出そうとすると、


「滅相もない!竜人様からはお金は取れません!この通りで商売をさせていただけるだけで十分でございます!へへへ!」


屋台の主人が揉み手で返してきた。えええ?

そして戸惑っていたら、通りの真ん中で大きな声が聞こえた。


「素晴らしい!人間くん、君がいつもこの通りを綺麗にしてくれているのかね⁈」


「は……はい。ザーレ様」


声のした方を振り返ると、貴族みたいな立派な格好をした竜人と、掃除道具とゴミ袋を持った卑屈な笑顔の老人が向き合っている。


「(この通りがやけに綺麗なのはあの老人が綺麗にしてくれているからか……)」


イチがそう考えていると、ザーレと呼ばれていた貴族みたいな竜人が続ける。


「働き者には報いないといけないな!そら!」


そう言うとザーレは懐から巾着みたいな革袋を出し、銅貨を数枚地面に落とした。

それを見て大喜びで銅貨を拾う老人。それを見たザーレは満足した顔をすると、地面にゴミを落とし『それも頼むぞ』とも言わずに去って行った。





「(嫌な物を見たな……)」





イチが心の中で呟くと、今度は通りの反対側で歓声が上がった。見に行くとそこには掲示板みたいなものがあって、そこには沢山の似顔絵が張られていた。似顔絵の下には金額が書かれていて、見るとイチの似顔絵もある。


「(手配書か!)」


一瞬、顔を隠そうとしてしまったが、今は竜人の姿だった事を思い出し何食わぬ顔で掲示板に近づく。リコやフォレスタもあったが端の方で小さい扱いだった。リコたちはあまり警戒されていないのかもしれない。だが勇者達のはしっかりと大きく貼られていた。特にドラフト上位組は大きく賞金も高い。シリウスさんは白金貨1000枚、マムリさん、ジルコンさんは500枚。そしてその三人の似顔絵には×が書いてあって討伐済みと言う事を知らしめていた。そしてイチは白金貨300枚と書かれていた。思わず暗い顔になる。そんな時に観衆達の声が耳に入る。


「だいぶ勇者も減っちまったなあ、もう賞金首がほとんど残っていねえや」


「俺の友達の友達、ドラフト下位の勇者通報して、賞金で家建てたぜ、良いなあ。この街にフラッと勇者立ち寄らねえかなあ」


「またあの屋台の親父が持ってくだろ。竜人様の敵になりそうな奴に毒入りのカルコス笑顔で渡して荒稼ぎするんだもの、性格悪いが頭良いよな」










血の気が引いた!









振り返ってカルコス屋台の親父を睨みつける。すると今の会話が聞こえていたのだろう、カルコス屋台の主人が飛び出してきて、


「違います!竜人様に危険な物はお出ししません!ちゃんと天然肉です!魔素の多い飼育肉は使っていません!ほら、見て下さい、紙袋に☆が書いてあるでしょ⁈それは安心なカルコスです!こちらの×が書いてあるのが毒入りです!ちゃんと相手見て出しますよ!」


大慌てで否定しながら、やはり揉み手で言ってきた。こ……こいつ!


そして同時に思った。


「(ギラードの魔道具があって良かった。無ければ今頃……)」


そしてニセ手紙でドラゴニアに誘導しようとしていたエリトの事を思い出す。あの頃のイチだったらあっさり毒カルコスで始末されていたかもしれない。竜人と戦う事無く、救うべき民衆の手で。


「ここが……ドラゴニアか……」


イチは思わず呻いた。

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