79-不思議な指輪
すうーーーーーーーーーー。
赤い指輪から光が消える。
ギラードの腕からゲス郎が抜き取った赤い指輪に魔力を込めてみたが……数秒淡く輝いただけで、何も起こらない。何度試しても一緒だった。
「だめだ、何の変化もない。こいつも魔道具なのは間違いないみたいなんだけど、能力も使い方も全然わからないや」
イチがぼやく。続けてリコも、
「すみません、調べてみましたけど……私にもわからないです……」
ため息をつきながら申し訳なさそうに言う。リコでもダメかー。
「カセーツさんやシャーリーさんみたいに解説してくれる人が出てくると期待していたんだけどなあ……もしかしたら、あれはレアケースだったのかも。あるいは……」
イチは右手の小指の紫色の指輪を見ながら考える。シャーリーさんもカセーツさんもジルコンさんもあれから一度も出てこない。もしかしたらこの魔道具の元となった勇者も出てこれないか……あるいは、もういないのかも知れない。
そんな事を考えていた時に、
「きゃあ!」
リコが悲鳴を上げた。慌てて確認するイチ。
「ど……どうしたのリコ⁈」
「す……すみませんイチ様、大事な魔道具を傷つけてしまいました!ごめんなさいごめんなさい!」
おろおろしながらリコが謝ってくる。
指輪を傷つけたって⁈と思い、赤い指輪を見てみると少し歪んでいた、あらら。
「ははは、リコ、力を入れすぎたかな⁈気にしないで良いよ!それより思ったより力持ちだね!」
フォレスタがリコに気負わせないように少し茶化しながら言う。
優しいなフォレスタ。
「(いや、ちょっと待て⁈金属の指輪が⁈非力なリコの力で歪んだ⁈)」
「リコ!ちょっと貸して⁈」
リコから赤い指輪を受け取るイチ。触ってみると真円だった指輪の輪っかの部分が少し楕円形になっているのがわかる。なるほど確かに歪んでいる。
「(金は柔らかいとか言うけど限度があるよなあ。それともこの世界の金属の中にはそんな性質の金属があったりするのだろうか⁈)」
そう思いながらイチも指輪を弄っていると、
ぐにゃり
更に指輪が歪み、輪っかの部分が捻じれてきてしまった。
「あわわわわわ!さらに変形しちゃった!やばい、直るかな⁈……ん」
慌てて直そうとするイチ、だがある事に気付く。
「柔らかいなんてもんじゃない、揉むとぐにゃぐにゃになって、いろんな形になる!まるで練り消しみたいだ⁈」
更に揉んでみるイチ。
ぐにぐにぐにぐに
指輪は色々な形に変化した。ビー玉みたいに球形になったり、カードみたいな薄い板になったり……揉み方で色々な姿を取れるようだった。
「なんだか面白そうだね⁈ねえイチ、次はボクにも貸してよ!」
「待ってくれフォレスタ、まだ試したい事があって……ん⁈」
指輪はいつの間にかブローチの形に変化して、更に金属レベルに硬くなっていた。
「これは……⁈なかなか高級感あるブローチみたいだけど、どこかで見た事あるような気が⁈」
そう言いながらブローチを眺めるイチ。
これは、胸とかじゃなくて首周りにつけても似合いそうだな⁈ギラードにしてはセンスは悪くないな……。
そう思った瞬間、思い出した。
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鉄仮面のような兜を身に着けた竜人は舌打ちすると、首元の宝石の入ったブローチに触れた。
その瞬間、鎧兜が霧のように消え、紫色の法衣のような服を身にまとった細マッチョの冷たい目をした竜人が現れた。
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「これ、兵士に変装していた時のギラードが身に着けていたブローチだ!」
思わず大声が出るイチ。と言う事は!
イチは首元にそのブローチを身に着けて、軽く触れてみた。
すると、イチの姿は霧の様に消えて鉄仮面のような兜を身に着けた竜人に変身した!
思わぬ魔道具の能力に驚きの声を上げる一同。
「この指輪は……変身アイテムだったんだ!」
声を上げるイチ。そしてすぐに自分の声も変わっている事に気付いた。こ……これは凄いぞ⁈
「凄い凄い!ボクにも貸して!」
フォレスタはウキウキでブローチをイチの首筋からひったくると、ブローチに勢いよく触れた。すると……フォレスタも竜人に変身した!しかもスラっとした細めの竜人だ!
「あはは!こりゃいいや!色々使えるね!あれ⁈イチ、魔道具を取り上げたのに、イチが人間の姿に戻っていないみたいだよ⁈」
「え⁈」
フォレスタに言われて気付いた。本当だ!魔道具を外したのに姿は竜人兵のままだ!
「どうやって戻るんだコレ⁈」
慌ててフォレスタからブローチをひったくって触りまくる。
そして色々試した結果、ブローチを1回撫でると変身して、2回撫でると変身解除するらしい事がわかった。
更に、ブローチからそんなに離れていなければ一つのブローチを使いまわして複数人が変身できる事も可能な事も!
「そうだ!これで皆で竜人兵に変身すれば検問を抜けられるかもしれないぞ!」
イチがそう言うと歓喜の声が一同から上がった!




