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72-道なき道を

4人と1モモさんでグミルの森を歩く。

そして森を抜けて、街道に出ようかとした時にふいに声をかけられた。


「お待ちしていましたフォレスタ様」


え⁈と思って振り返ると。身体の大きな森の民の戦士が立っていた。どこかで見た事があるような。


「どうしたの?ジーン⁈」


フォレスタが返事をする。そしてその顔を見て思い出した。

フォレスタに声をかけて来たのは森の民の戦士の一人だ。集落での戦いで一緒した事があるし、昨夜、ベラーがおかしな挙動をしていたのを長に報告した青年だ。ちなみにそのジーンと呼ばれた青年はイチたちよりも少し年上で二十歳くらいだろうか。身体は大きいが体幹はしっかりしていて意外と俊敏そうだ。


「この先を偵察して参りました。森を抜けた後の街道の先で竜人たちが検問を行っています。フォレスタ様と、イチ様の人相書きがありました、行ってはなりません」


「あちゃー、先手を打たれたか」


ジーンの報告を聞いたフォレスタが頭を抱えている。元々竜人の多いドラグリアの街に行くつもりだったから、危険は覚悟の上だったけど、早くも追跡の手が回ってしまっていた。

少し考えて、質問するイチ。


「ジーンさん……でしたっけ、検問の人数は⁈」


「竜人兵が3人、1人は魔道具を持ってる可能性があります。それと竜人の協力者の人間の傭兵が2人」


うーん……勝てない相手じゃないかもしれないが……


「魔道具持ちは恐いなあ。それと竜人の協力者とはいえ人間がいるとなると傷つけたくはない。強行突破はできないなあ」


イチがぼやくとジーンさんが返す。


「この森には森の民のみが知る他の街道に出る抜け道があるのですが……」


「うん、めちゃくちゃ遠回りになるし道も険しいんだよね。ボクは勧めないよ」


フォレスタも解説してくれた。


「困ったなあ……」


ジーンさんを入れて5人と一体で悩んでいたら、視線を感じた。

よく見ると街道の方から森の中……こちらの方を伺ってる人影が見えた気がした。


「ここで話すのはまずい、一旦戻ろう」


イチがそう言い、皆で慌てて元来た道を戻る。




森の中に戻り、念のため大きな木立の影に回った。もう視線は感じない。ここなら安心だ。

しかし……


「ここからどうしようか」


皆で顔を見合わせる。思い切ってさっき言っていた険しい抜け道で行こうか⁈とも考えるが、リコとゲス郎がついてこれるかわからない。

どうしたものかと天を仰いだ時に、



頭上に小さな光る虫が数匹飛んでいた事に気付く。そしてその小さな光る虫はイチの目の前でくるくる回った後に、森の奥に向かってゆっくりと蛇行しながら飛んでいく。まるで誘導するかのように。




「(なんだ⁈まるでこちらに来いと呼んでいるような⁈)」




そんな事を考えていた時に、



グオオオオオオオオオオオオ!



小さな光る虫が飛んで行った方向からベラーが三頭現れた!


「まずい!ジーンさん!リコとゲス郎を守ってください!フォレスタ!援護を頼む!」


即座に前衛に立ち翠亀剣を抜く……が剣先が木の枝にかすり判断ミスに気付く。


「(しまった!障害物の多い森の中は風切りのナイフじゃないと!)」


その瞬時の後悔が隙を生んだ。ベラー三頭はイチの脇を風の様にすり抜け真っ直ぐリコの方に駆けて行く!


「しまった!」


身体の大きなジーンさんがリコの前に立って弓を構える!フォレスタも弓に矢をつがえる!が、ワンテンポ遅れた!弓兵二人を避けたベラーの爪先がリコの目の前に迫る!


「きゃああああああ!」


リコが悲鳴を上げる。


「(リコ!逃げ……だめだ!間に合わない、ならば!)」




『アクセル255』発動!




……しようとしたら、


ベラーたちはリコの横も通り抜け、そのままどこかへ行ってしまった。呆然とする4人と1体。


え⁈4人と1体⁈

自分、リコ、フォレスタ、モモさん、それにジーンさん……。


「今のベラー……。何かから逃げていたみたいでゲスねえ、アッシにはわかるでゲス、あれは恐怖にかられた野生動物の動きでゲス」


かなり離れた木陰からゲス郎がひょっこり顔を出しているのが見えた。


「何逃げてんだ、てめええええええ!」


ゲス郎に駆け寄ってデコピンするイチ、悲鳴を上げながら転がるゲス郎。

しかし……額を押さえながらゲス郎が自信たっぷりに言い訳する。


「だってアッシがリコ様を守ろうとしたって何の役にも立たないでゲスよ!二人吹っ飛ばされて終わりでゲス!」



それはそう。



いや、でも心情的にはなんだかな~。

そう考えながら、ベラーの来た方向を見てみる。そこには森の奥へと続く暗い獣道が続いていた。


「ジーンさん、こちらがさっき言っていた抜け道ですか⁈」


「いえ、こちらはただの獣道です。普段、人が通るような道ではありません」


イチが尋ねるとジーンさんが返す。

それを聞いたフォレスタが、


「その方向に向かうと……えーと……たぶん……そうだ、昨日行った、お墓がある方向の筈だよ⁈」


あのお墓や石碑があった所か!


すると先ほどの小さな光る虫が、まさに今、ベラーが飛び出して来た方向に向かって飛んでいこうとしているのが見えた。


「(もしかして……お墓の誰かが呼んでるのかな⁈……でも用事は昨日済ませたよな⁈)」


そう思いながらもう一度獣道を見るとあちこちの枝が切られている事に気付く。

先に誰かが通った⁈


「今、ベラーが逃げてきた方角へ歩いて行ってみよう」


「え⁈大丈夫⁈ベラーが逃げて来たって事は、ベラーより恐い奴がいるかもしれないんだよ⁈」


イチの提案にフォレスタが反対する。普通に考えればたしかにそうなんだけど。

ただ……


先ほどの小さな光る虫が森の奥へ向かってゆっくりと、時々旋回しながら『こちらへ来て』と誘導しようとしている気がする。


少し悩む。

そして決断した。


「行ってみよう、きっと何かがある」


イチが皆に言う。どちらにせよ街道には戻れない、ならば乗ってみるか。

そんな事を考えていたら、


「そうでゲス!もしかしたら思わぬオタカラがあるかも知れないでゲスよ!」


ウキウキしながら皆を鼓舞するゲス郎。なお、位置は最後尾で、皆を盾にしようとしているのが見え見えだ。こ……こいつ!

そんなゲス郎の企みを見透かしたフォレスタがそのままゲス郎にアイアンクローをかまし宙づりにする。

悲鳴を上げて空中で脚をバタバタさせるゲス郎。小さな子供に捕まったカナブンみたいだ。それを見たジーンさんが『本当にコイツ連れて行くんですか?』とジト目で訴えてくる。


うん、時々役に立つんだよ……本当に、稀に、極々稀に。


そしてアイアンクローで頭が変形したゲス郎をイチの横に配置して先ほどベラーが逃げてきた方向に向かって進む。すると獣道が途絶えた。


「特に何もないな……さっきのベラーは一体何に怯えていたんだろう」


「やっぱり気のせいだったんじゃない⁈元の道に戻る⁈」


イチの発言にフォレスタが返す。フォレスタの言うとおりかな?引き返すか。

そう思った瞬間。






ゾワッ






全身に鳥肌が立った!


何事かと思いながら周りを見回す。すると右斜め前方に……何かイヤな気配を感じた。

そのイヤな気配の方向に歩いて行くと大きな岩があって、その側に何かが落ちているのが見えた。


「(何が落ちてるんだ⁈)」


そう思いながら近付いてみる……これは⁈







そのイヤな気配の正体は爬虫類っぽい生き物の腕だった。







普通の爬虫類の腕と違うのは、装飾品がゴテゴテとついている事と、近くにいると気分が悪くなる位の強い魔力を感じた事。よく見ると落ちている腕の近くにある地面と岩が蜃気楼みたいに歪んで見える。


「(こんな強力な魔力の塊が近くにあったら体調だっておかしくなる。おそらくベラーはコイツの気配に反応して逃げて来たんだろうな)」


そう思いながら爬虫類の腕に近づき腰を落とすイチ。

『重力制御』で持ち上げて、シャーリーさんの魔道具を使い細部を調べる。

どうやら毒はなさそうだ。





「(それにしても、なんか既視感を感じるな。なんだ⁈この腕⁈)」





イチがそんな事を考えていたら、リコがイチの隣に座り、恐る恐る謎の腕を観察し始めた。そして何かに気付いたような顔をして言う。


「これは……竜人の腕です……生命が通っていないのに凄い魔力を感じます……こんなの初めて見ます……」


「竜人の腕だって⁈何故こんなところに⁈」


そう発言した瞬間、イチの脳内に先日の森の民の集落防衛戦の時の風景が頭に浮かんだ。

ライミさんの能力で覗き見た激闘の風景が。



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……よく見るとダメージはかなり受けた様に見える。

ギラードは全身血塗れで右腕に至っては千切れている、息も絶え絶えで今にも倒れそうだ。

あと一撃与える事ができれば!


------------------------------



「思い出した!シリウスさんが吹き飛ばしたギラードの右腕だ!」


思わず声が出た!

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