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67-近くにいた。



「メツア兄さん……なんですね、なにか伝えたい事があるのですね⁈」


小さな虫は強く点滅してる。

やはり伝えたい事があるみたいだ。でも何を伝えたいのかは分からない。


「困ったな……なんとか話す方法があれば良いのだけど……そうだ!」


膝をつき、ジッと見つめ、小さな虫に静かに語りかける。


「メツア兄さん、『はい』なら2回、『いいえ』なら1回光ってください。もし『どちらでもない』なら光らないでください。わかりますか⁈」


小さな虫は緩やかに舞った後に2回光った。

よし、これで会話を試みてみよう。


「じゃあいきます。もう一度確認しますが、メツア兄さんは、俺に伝えたい事があるのですよね⁈」


小さな虫は2回光った。


「それはこれからの戦いについてですか⁈」


小さな虫は1回光った。え⁈違うの⁈


「え⁈戦いに関する事じゃないのですか⁈じゃあ何⁈」


困った。この先の戦いの情報とか貰えるかもとか考えていたんだけど。

……ってそれはさすがに安直だよな。じゃあなんだろう、メツア兄さんの心残りって……⁈




いや、あるわ。




静かに小さな虫に語りかけた。


「フォレスタの事ですね⁈」


小さな虫は2回光った。

そうだよね、やっぱりそれだよな。

もう一度ゆっくりと語りかける。


「フォレスタは必ず守ります。必ず無事にこの集落に戻すと約束します!だからどうか今は安らかに……」


だが小さな虫は光らない。

それどころかイチの周りを不満でもあるかのように、獲物にまとわりつくやぶ蚊みたいにブンブン舞い始めた。



「(不満そうだなあ。間違ってはいないみたいだけど……他に何か伝え忘れている事があるのかな⁈)」



フォレスタから聞いたメツア兄さんの話を思い返す。

たしか仲の良い兄妹だったんだよな……。


ハッとなって背筋を伸ばし真剣な声で話す。







「フォレスタを幸せにします」







小さな虫は2回、強く光った!


「(そうか、フォレスタが心配だったんだ。やはり優しいお兄さんなんだな)」


少しホッとした。これはフォレスタに伝えてあげないとな。


「わかりました!フォレスタにお兄さんがちゃんと見守っているって言いますね!」


そう伝えた瞬間












小さな虫は強く激しく1回光った!











そして無数の小さな虫がイチの周りをぐるぐる凄い速さで回り始めた!


「え⁈伝えちゃダメって事なんですか⁈」


小さな虫は2回、強く光った!


なんで⁈と思った瞬間に





脳内に、ジルコンさんの魔道具を使った時に遭遇した恐ろしい気配を思い出した!





「……わかりました。伝えません。それで良いですね」


小さな虫は2回……少し哀しそうな色で光った。


「(何か事情があるんだな……)」


理由は分からないけど、察した。

メツア兄さんがそう言うなら仕方ない。

でも亡くなった後も何かに縛られているのがとても切なかった。


気を取り直して語りかける。


「ありがとうございます、話せて嬉しかったです。必ずフォレスタは幸せにしますので安心してお眠りください」


そう言って墓から立ち去ろうとした時に、




「歌ってあげて欲しい」




どこからか優しい声がした気がした。




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