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61-魔女

「こちらだ、着いてきなさい。この事は他言無用だからな」



恐い顔をしながら念を押した後、地下室に降りていく長。

慌てて皆で着いていく。

この先に何が……⁈







そう思いながら着いて行った先で見たものは……







「これは!」






思わず声が出る!


そこには……部屋いっぱいに、きちんと手入れされた大量の武器や防具があった!


しかも地下室は想像以上に広く、上の階と違ってホコリも落ちていないし、ため池の側の地下室なのに多湿でもなく、空気はむしろ乾燥している。どういう構造の地下室なんだろう⁈


壁に触る。ピカピカに磨かれた頑丈な石で囲まれている。これなら隕石が落ちても耐えられるかも知れない。まるでシェルターみたいだ。相当に大事に使われているのだろう。






「(それにしても、こんな大量の武器をどこから調達したのだろう⁈竜人たちがこんなの見逃すとはとても思えないのに!)」





そんなイチの疑問が顔に出ていたのだろう。

長がゆっくりと回答を喋ってくれた。


「100年前の竜人との戦争の時使われた武器だ。壊れたものを100年かけて少しずつ回収して直した。この集落にはこんな武器庫が幾つかある。いつか竜人たちと戦うためにな。もちろんバレたらただじゃ済まない。秘密にしていたのだがシリウスはこの事をどこからか知ったらしい。売って欲しいと懇願された。これは森の民のために用意した武器だから渡したくはないから何度も断ったのだが……しつこく食い下がられてな。断るために絶対に払えないような金額を吹っ掛けてやったんだが……あいつら金持ちでな。払われてしまった」


頭を掻きながら苦笑いする長。本当にアイツは……と言う顔をしている。

シリウスさんらしいなあ。


そして改めて部屋の中の武器を見回してみる。見た感じよく手入れされている。剣を一つ手に取って鞘から出してみた。刃はピカピカで錆どころか刃こぼれ一つない。



いや、それどころか、



うっすら光ってる「魔力を帯びてそうな武器」すらいくつかある!これは凄いぞ!


「これは……凄いです!これだけの武器があれば希望が見えてくる!ちなみに……シリウスさんはこれをどう使うつもりだったんでしょう⁈何か言っていませんでしたか⁈」


思わず興奮して早口で長に聞いてしまう。長は少し嬉しそうに聞いていたが、


「それは何も言わなかったな……」


何も思い出せずに申し訳ない……とバツの悪そうな顔をしていた。

が、急に眼を見開いて叫んだ。


「いや、思い出した。何か言っていたぞ!そうだ『魔女が喜ぶ!』確かにそう言ってた!」


長がそう言った瞬間、フォレスタも反応した。


「魔女⁈もしかして!」


「フォレスタ⁈誰か心当たりあるの」


思わずフォレスタに問うイチ。すると、


「勇者ドラフトの会場に物凄い美人の魔女が来てたってマムリさんが言ってた!シリウスさんとジルコンさんも興味持っていたって言っていたからその人じゃない⁈」


フォレスタが嬉しそうにまくしたてた。いや、それは……。


「単に美人さんだったから目についただけじゃないの⁈この世界の事は分からなけど大抵の人は美人さん見つけたら目で追っかけると思うけどなあ」


呆れてそう言う。しかし、何かが引っ掛かる。


「……ちなみに、あの3人の口から他に『魔女』絡みの会話を聞いた事は⁈」


イチがそう言うと、長は無言で首を横に振る。他に無いならその魔女は可能性の一つではあるかもしれない。


でも、どこの誰だろう⁈


そう考えていたらフォレスタが嬉しそうに語る。


「美女と聞いたら黙ってられないからね!ボクとどっちが美しいか勝負したいなと思っていたんだ!世に可愛い娘さんは沢山いても、美人の称号を得られる人間はなかなかいない。ましてやマムリさんみたいな美人が『美人』と言うって事は相当な美人のはずさ!ああ、近くで拝んでみたい!」


急にキラキラした笑顔を見せて、対抗するかのように顔面偏差値を爆上げさせるフォレスタ。

って、完全にフォレスタの趣味じゃないか!と言うか何でそんな事で張り合おうとしてるんだ。

こいつは!もー!


それにしても、ドラフト会場にいたのなら、召喚された時に見かけていたのかもなあ。

あの時はとにかく、不幸からの突然の異世界召喚コンボで周りなんか見えなかったけど。


でもドラフト会場にそんな見目麗しい魔女がいたなら誰か知っているかもしれない。

会場にいた現地の人間は……


「リコ、ゲス郎、あの会場にそんな目立つ魔女はいたか記憶にない⁈」


そうイチが問うもリコは俯いて何も言わない。

ただ、ゲス郎が凄い勢いで食いついてきた。


「もちろんチェック済みでゲス!なんとかお近づきになれないかと付きまといやしたが、追い払われたでゲス!」


さすがだゲス郎。こういう時の行動は期待を裏切らない。


「でも会話から、『ドラゴニアの街に帰る』って言葉を聞いたでゲス!」


さすがだゲス郎。ダメスキルだがこういう時は有能だ、ありがたい。

でもあまり人前ではやるなよ⁈


いや、待てよ⁈


「ドラゴニアの街って名前、たしかどこかで聞いたような……」


思わずそう口にするとリコがそっと教えてくれた。


「ドラゴニアの街はこの世界の中心で、竜人達が多数住む土地リューグ領の大都市です……」


思いだした!


「あれかー!エリトが残したニセ手紙の中に出てきた地名だ!忘れてた!って半分敵地じゃないか!」


皆と顔を見合わせる。皆、絶望的な顔をしてる。


「近づくのは危険すぎますよね……」


リコが目を伏せながら呟く。

冗談じゃない、結果的にエリトの罠に乗るようなものじゃないか!そんな所行けるか!


「シリウスさんだってそうそう近付けなかっただろうし……無線でもなければ通信もできない。さすがにそこには目当ての魔女がいるはず……」


そう言った瞬間気づいた。

ライミさんがいれば通信はできるじゃないか!その魔女がシリウスさんとやり取りしていた可能性はあるかも!


すぐにゲス郎に問う。


「その魔女さんの名前……調べられるか⁈」


ゲス郎が下卑た顔で頷く。


「金さえ用意していただければ、どんな手を使ってでも調べてみせるでゲス!」


わかった!用意しよう!と懐から財布を出そうとした瞬間に


「彼女の名前は魂の魔女カルラ。この世界でもトップクラスの魔法使いの一人です」


リコが答えてくれた。


「え?知ってるの⁈」


リコは静かに頷く。

知ってるなら早く教えてよ!と思ったが……リコの顔を見るとどこか浮かない顔をしているように見える。何か事情があるのだろうか。


「それにしても、魂の魔女⁈変わった二つ名だね。何か魂系の魔法が使えるの⁈回復とか攻撃とかに使える」


そう思って尋ねると、リコが答えてくれた。


「攻撃魔法の使い手と言うより、研究者って感じの魔女です。彼女は……実は……その……」


何か口ごもるリコ、本当に言い辛そうだ。


「どうしたの⁈リコ」


そう尋ねると、リコは、意を決して話してくれた。


「魔女カルラは……『魂の蘇生結晶(レイヤール)』を発見したと言われる魔女です」

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