表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/68

60-地下室

「ライミさん!ずっと心配していました!今、何処にいるのですか⁈」


声が上ずった。ライミさんが心配だったのもある。けれど、シリウスさん達を失った以上、ライミさんの能力の助けがあるかどうかは死活問題だ。すぐに合流して、できれば色々な話がしたい。


しかし、


「すみません!それも言えないんです!すぐに切らないと……!簡潔に伝えます!」


ライミさんは返答を避けた。声が切羽詰まってる。もしかして今、相当ヤバい状態なんだろうか?


「(いや……ライミさんの能力考えたら当然か。竜人たちにとってはシリウスさん達より危険な相手だもんな)」


エリトもライミさんの名前を耳にした瞬間余裕がなくなった。ギラードは即逃げようとした。多分相当な追手がかかっているに違いない。


すぐに頭を切り替えてライミさんの声に集中する。何一つ聞き逃さないように。

ライミさんはやや早口だが、一語一語丁寧に話してきた。


「『迎え石』を持てるだけ持って『ある人』と合流してください!合流相手の情報はシリウスさんと長が知っています!」


え⁈ちょっと待って!それは……!


「え⁈合流は良いけど……迎え石はもう無いんです!無理です!」


そう思いながら思わず声を出してしまうイチ。しかし、ライミさんは意に介さず続けた。


「迎え石はあります!思い出して!それじゃ!」



プツッ



「ちょっと!ライミさん⁈ライミさん⁈」


大声を出す。しかし、連絡は切れてしまった……。

困惑していると今のやり取りを見ていたリコが心配そうにイチに尋ねてきた。


「どう……でしたか……⁈」


周りを見ると皆も心配そうな顔をしていた。どうしたものか。

しかし少し考え、皆の知恵を借りた方が良さそうだと思い直し、話す事にした。


「それが……」


言いかけた後に、ハッとなって周囲をよく警戒する。念のため翠亀剣の刀身を反射させて周りを見てみたが誰もいない。仲間以外は近くに誰かいる気配はなさそうだ。


「(少なくともエリトはいないみたいだな)」


イチは少しホッとすると、小声で皆にライミさんの言葉を伝えた。

そしてライミさんの言っていた事について長に尋ねてみた。


「ライミさんは、『ある人と合流してください!合流相手の情報はシリウスさんと長が知っています』と言っていましたけど……合流相手に心当たりはあるのですか⁈」


それを聞いた長は目を閉じ、顎に手を当てて少しの時間考え込んでいた。が、思い当たる節はないみたいで無言で首を横に振った。


長がわからないとなると……


「困ったなあ、あと合流相手について知っているのはシリウスさんだけらしいけど、亡くなってしまったし……」


そう呟きながら天を仰ぐイチ。今までのシリウスさんの言動を思い出してみるが、そんな話は出てきた覚えはない。シリウスさん、せめて誰か他の人にでも話したりとかはしていないだろうか⁈



「(そうだ、他の人!)」



「長!シリウスさんが次にどこへ行くかとかを誰か他の人に話したりはしていませんでしたか⁈例えばシリウスさんとマムリさん達とかの会話とか。何か小耳にはさんだりしてません⁈」


イチが一縷の望みをかけて尋ねる。

だが、


「いや、話してなかったな。私が聞き逃しただけかもしれないが……申し訳ない」


長は申し訳なさそうな顔をしながらそう返してきた。

ダメかー。八方ふさがりだ。

ライミさんが、もう少し教えてくれたらなあ……。








その瞬間、脳裏にある映像が浮かんだ。








「(いや、待てよ?たしかこの集落に来てシリウスさんに再会した時にたしか……)」






------------------------------


「実は我々も森の民の協力が欲しくて、ここに来たんだ。さっき長にこちらの要望を届けたら…いやあ、吹っ掛けられたよ。手持ちの路銀の半分を取られてしまった。散々だと思っていたが…君たちと合流できたのならラッキーだったかな」


------------------------------



言ってた!たしかにそんな事を言っていた!何かシリウスさんは長に要望をしていた筈だ!



「長!そう言えばシリウスさん達は長に何か要望をしたとシリウスさん本人から聞いた覚えがあります!一体何をお願いされたのですか?」


すぐに確認するイチ。それを聞いて少しイヤそうな顔をする長。


「それは……確かにシリウスとは契約をして金も貰っている。依頼者が亡くなって契約は不履行になったがな。まさか不履行になったからシリウスたちから貰った金を返せと言う話じゃないだろうね?」






なんでそうなる。






いや、違う。


あまりに気のいい人たちだから忘れてたけど、森の民は元々がめついんだった!

こんな時に!もー!

心の中で苦笑いしながら、長にシリウスさんの出していた要望について改めて確認するイチ。



「いやいやいやいや違います!知りたいのはシリウスさんの要望の内容ですよ!俺は……いや、自分はシリウスさんの意志を継いで竜人たちと戦うつもりです!どうか内容について教えていただけませんか⁈」


長は「あっ」と何かに気付いた顔をした後、少し考えこみ、ゆっくりと話し出した。


「故人との契約を話すのは……いや、シリウスが亡くなったら、その意志を継ぐのはイチくんか……だが……いや、もうこれしかないだろうな、わかった、話そう。フォレスタ、イチくんたちをため池側の小屋へ連れて行ってくれ。私は鍵を取ってくる」


そう言いながら、長は館の方へ歩いて行った。

そして、フォレスタが「こっちよ」と言いながら引率してくれた。




森の民の集落を歩く。瓦礫の山だった家々が復活していて、生活音が聞こえている。

その集落を通り過ぎ、宝イノスと戦った畑を抜けた。ほんの少しだが畑のあちこちにギラードの落とした隕石の跡が見える。家々は直ったが、作物までは全回復とはいかなかったらしい。


「集落は運よく回復できたけど……隕石を畑の方に集中して降らされていたらまずかったね。この集落はある程度安全にはなったけど、隕石を降らされた後に兵糧攻めされると厳しいかな。ギラードの野郎……今度出逢ったら頭を撃ち抜いてやる」


フォレスタが苦々しく言う。

たしかにギラードは深手を負ったから暫く動けないだろうけど、復活した後は苦しい。

今のうちに次の手を打たなくては……。


そう考えながらフォレスタの方を見ると背中から怒りのオーラが立ち上っている。

無理もないけど爆発されても困るので、話題を変えようと、フォレスタに長の言っていた小屋について色々尋ねてみた。


「ねえフォレスタ、長の言っていた小屋には何があるの?それと、フォレスタ自身はシリウスさん達と何か仕事の話とかはした事はないの⁈」


そう言うとフォレスタは、


「うーん。あの小屋は一部の人しか近付けないんだよね。子供の頃こっそり入ろうとしたらもう信じられないくらい怒られてさ、集落が揺れるかと思うようなカミナリを落とされたよ。だからボクも初めて入るんだ。ちなみにシリウスさん達とは色々な話をしたけど、何か大きな商談とかだったら、ボクの耳には入る事はないよ。しかもあの小屋絡みだったらなおの事ね。だからボクも少し緊張しているよ」


そう答えてくれた。フォレスタは少し落ち着きを取り戻したようで、空気が軽くなった。助かった。

そうしている間にため池が見えてきた。よく見るとため池のほとりに小屋がある。あそこか。


「長が来るまでもう少しかかるかな⁈ボク少し小屋を観察するね!」


フォレスタはそう言うと、物珍しそうに小屋の周りをウロウロしていた。

一見普通の小屋というか……。



「(どちらかというと納屋かな⁈バイト先で出会った農家の人の家で見た感じの。ここに何があるんだろう⁈)」


ウロウロしているフォレスタを横目にイチがそんな事を考えながら待っていると、長がカギを持って現れた。




ガチャ


長が小屋の扉のカギを開けた。そしてこちらを振り返りながら、


「ついてきたまえ」


そう言いながら中に入れてくれた。




緊張しながら室内に入り、周りを見てみる。

見た感じ農機具やガラクタが転がっているだけで、やっぱり農家の納屋にしか見えない。

めぼしい物は特にないみたいだけど、ここに何があるのだろう⁈




そう思っていたら長は、壁にかかっていた絵をどかした。

すると、その裏の壁に丸い窪みの様なものがあり、長はその窪みにつるつるピカピカしたまん丸の石のようなものを入れた。




「え……⁈父さ……いや、長、それ、迎え石じゃ……」


フォレスタがそう言った瞬間、



ゴゴゴゴゴゴゴ



床の一部が動き、地下への階段が現れた!










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ