5-ドラフト超上位様登場
手足に血を集め、エリトに向かって殴りかかる。
余裕で躱すエリト…のはずが
「うっ?」
拳が鼻先をかすり、驚きの声を上げるエリト。
「ちっ!面倒な!これでどうだ!」
後方に飛びずさり、もう一度手元から紫色の電撃の束を放出するエリト。
が…当たらない!
「どうなってやがる!」
それはイチ自身も同じ思いだった。
本来なら今の電撃で黒焦げだっただろう。
しかし、イチ自身の身体能力が跳ね上がっていた!
「イケる!」
手足をより早く動かす。
脳からではなく背骨から全身へ、0.001秒でも早く命令を。
0.1秒前の自分の限界より1歩先へ、2歩先へ。
手足が2本づつだと思うな、4本、6本もっとあると思え。
目から火花のような閃光が走る!
ジグザグに加速して電撃の嵐を搔い潜るイチ!
そしてそのままエリトのどてっ腹に渾身の一撃を叩き込む!
「ぐわああああああああああああああああああ!」
悶絶しながら通りの反対側に吹っ飛ぶエリト。
そしてそのまま、リコを助け起こしに走る。
その瞬間、頭に機械的な…(おそらくフォーツ神?の)声が響く。
「祝福:アクセル255の使用資格を得ました。100秒間だけ最大255倍の身体能力が得られます」
リコが何かに気付いたようで、話しかけてくる
「イチ様!今のは…!」
「どうやら『祝福』とやらを受けられたみたいだ…それより、ケガは大丈夫?」
「自分に回復魔法をかけました!多分大丈夫です!それより…」
リコが指さした方向を見ると、ゆっくりとエリトが立ち上がるのが見えた。
目が憤怒に燃えている。
「良い祝福を貰ってるじゃねえか!もうどうあってもここで殺すしかねえなあ!」
物凄い殺気だ、完全に怒らせてしまった!
「イチ様!」
「分かってる!何か切り札を使う気だ!」
エリトの周辺の空気が蜃気楼のように揺らめいている!
そしてその『揺らぎ』が渦を巻きエリトを包んでいく…!
その時だった。
「エリト君、勇者同士で殺しあってもしかたないだろ?止めなさい」
後方から声をかけられた。
「うっ…シリウスさん…⁈はい…わかりました」
エリトが引いた⁈
振り向くと筋骨隆々な長身の男の人が立っていた。
誰だ?あの人は…。
「シリウス・ザンハール、オキト領から今回のドラフト1位で指名された勇者様でゲスよ!今回のドラフト最強だと言われている男でゲス。さすがの貫禄でゲスね!」
ゲス郎が嬉しそうに解説をしてきた。
…リコと自分を盾にして、安全な所に隠れながら。
「どこに行ったかと思っていたら…一人だけ逃げてんじゃねえ!この嬢ちゃんの従者だろお前!」
とりあえずゲス郎の額に渾身のデコピンを食らわせておいた。