56-迎え石-その2
こねこねこね……ぺたぺたぺた……。
「よし、できた」
物は試しで手で小さめの土人形をこねこねしながら作ってみる。不格好な出来だが、顔がパンになってる国民的ヒーローみたいな人形が出来た。
「お!イチ、土人形作るの上手いじゃないか!」
「うふふ、なんか可愛いですね!」
フォレスタとリコが口々に造形を褒めてくれた。
いや、なんかお助け正義のヒーローで造形が楽なの思いついたらこんな形になっただけなんだけどね。
そして最後に土人形の頭の裏に指で穴を掘って迎え石を入れてみる。これで動いたりしないかな⁈
……土人形はピクリとも動かない。
腕がポロリと取れた。まあ、そう簡単に復活したりはしないか。そしてパンヒーロー土人形はそのままボロボロと崩れる。
「うーん、この石に秘密があると思ってたんだけどダメかー。それとも、この石は壊されてしまったのかもしれない」
思わず呻く。
「ダメでしたか……」
「ははは、今作った土人形のモデルなら何度でも復活するんだけどね」
リコがしょんぼりしているので、フォローする。
そうなんだよなあ。パンヒーローなら新しい顔……いや、新しいパンを挿げ替えれば復活するんだけどなあ。
まてよ⁈ならば新しい代わりの石があればワンチャン復活できたりとかしないだろうか。いやそんな単純な物じゃないのは分かってるんだけど。
「(新しい石か……)」
とにかくなんでも試してみなくては。そう考えながら崩れた残骸の中から迎え石をつまみ出し、フォレスタに尋ねる。
「ねえフォレスタ、ちょっと試してみたい事があるんだけど……この迎え石って珍しい物だったりする⁈代わりに別の石を使ってみたいのだけど」
フォレスタは少し考えた顔をした後、残念そうに首を横に振った。
「最近はほとんど見かけないかな。昔はそこら中に転がっていたらしいんだけど、ある時期から竜人たちが妙に欲しがりだして、森の民に税金の代わりに迎え石を差し出すように言ってきたんだ。物凄い価値のある宝玉って訳でもないのになんでこんなもの欲しがるんだろうと噂していたんだけど、クソ高い税金の代わりになるのならって、どんどん歴代の長も差し出しちゃったんだ。そうしたら根こそぎ持って行かれちゃってさ、今ではほとんど残っていないんだ」
そしてフォレスタは寂しそうな顔をしながら続けた。
「……これを見るとやはり何か秘密があったのだろうね。昔の森の民もご先祖様をお迎えする石を持って行かれて腹を立てていたらしいけど、歴代の長が考え直して、今では年に一度のご先祖様をお迎えする行事の時には、迎え石の代わりに石によく似た木の実とかをお供えしてご先祖様を歓待しているよ」
そんなんで良いんだ。おおらかだなあ。いや、変わらざるを得なかったんだろうな。
それにしても……また竜人か。あいつら本当に色々やってきてたんだな。
フォレスタの言う通り、大事な税金の代わりに取り立てるくらいだから、やはり何か価値があったんだろう。
迎え石をジッと見る。
昨夜の土人形の戦いを思い出す。危ない所を助けて貰った恩人(⁈)だがそれ以前に戦闘力がとんでもなく高かった。竜人の将軍のジャーバルを吹っ飛ばしたり、アンやチョビみたいな曲者も翻弄していた。土人形がいなかったら全滅していたと言っても良いくらいだ。シリウスさん達が亡くなってしまった以上、なんとかして復活してもらいたい。なにか方法はないものか。
少し石から視線を外し宙を見る。そして昨夜の事を色々思い出してみる。
「(『核』を壊すって言ってたって事は、竜人は多少なりとも土人形については精通してたって事だよな⁈しかも竜人が迎え石をかき集めていたってことは……何かに使っていた⁈)」
もう一度迎え石を見つめる。
「(もしかして竜人達の事だから、この迎え石、魔道具みたいに特殊な発動方法があったりしないよな⁈)」
竜人たちの魔道具の使い方を思い出す。
ジャーバルたちの魔道具は能力を発動させた時に赤銅色に輝いていた。
カセーツさんたちの指輪を使う時は魔力を込めた。その時には淡く光っていた。
発動時には光るのが特徴で鍵は魔力だったりする⁈
竜人たちが集めたがるからといって、勇者が変化した魔道具と、迎え石は全然違うかもしれない。
でも何かが引っかかる。
迎え石をもう一度見てみる。特に光っているとかの様子はない。でも思いついた事はなんでも試してみるか。
「ちょい魔力を込めてみる」
そう言って右の掌の真ん中に迎え石を置き、強く握りしめた。
そして、他の魔道具同様に魔力を込めてみる。
10秒経過。
手を開いて迎え石を観察してみた。
……何も変化はない。
「はあ……やっぱりそんなに単純なわけないか。」
思わずため息が出る。
がっかりしながら、仕方なく次の手を考えようと迎え石を左手の指で掌から持ち上げようとした時、
じわ~。
掌が、ほんのり温かくなっている事に気付く。
え⁈と思いもう一度迎え石を観察する。
しかし見た目に変化はない。
「気のせいか…⁈でもこの反応は……」
もう一度石をよく見る。すると掌と石の間がうっすら色が変わって見えた気がした。
もしやと思い、今度は石を両手で優しく包みこむ。そして両手の隙間から石をそっと覗いてみた。
すると……うっすら緑色に光ってる!闇の中で見る蛍光塗料みたいに!
「ビンゴだ!やっぱりただの石じゃなかった!やったー!」
思わず歓喜の声が出た!