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48-右手

「終わった…」


八岐大蛇のような瘴気が大きな口を開けて自分を飲み込もうとしていた。

それが自分の最期……



にはならなかった。



「ぬわっ⁈ぬわっ⁈ぬわあああああああああああああああああ⁈」


エリトの悲鳴が聞こえる。

見ると、破壊されたはずの相撲取りみたいな体格の土人形がいつのまにか復活してエリトにぶちかましを食らわせていた!


どすこいどすこいどすこいどすこいどすこい


そんなセリフが聞こえてきそうな土人形の猛攻!ギラードの隕石で破壊されていて片腕だが……軽やかなステップで、ぶちかましと、片手から器用に繰り出す張り手でエリトに反撃の隙を与えない!


「この……くたばり損ないのデブ人形が!舐めるな!……って!うわあああああああああああ⁈」


張り手からのぶちかまし、そしてけたぐり、そのまま追い打ちの連続張り手!

ちびっこ相撲に巡業に来てくれた力士が小学生を投げるように、ごろんごろんと転がされるエリト。

フォレスタたちの矢を警戒して重力制御を使えないエリトは土人形のオモチャにされていた。


「お前さま!」


エリトのピンチに引き返す八岐大蛇のような瘴気……黒百合だったかはすぐに引き返し土人形をその蛇の身体で締め上げ動きを止める!


「このデブ人形!……よくもやってくれたな!最大出力だ、ばらばらになれ!」


ブチ切れながらエリトが相撲取り体格の土人形に最大出力で雷の大砲を打ち込もうと右手を上げる。いつもの10倍はありそうな魔力だ。叫ぶエリト。


「くたばれえええええ!このデブ人形!」


雷の大砲が発射された。土人形は吹っ飛ばされ、またバラバラになった!

続けて叫ぶエリト。


「ざまあみろ!もう一発くれてやる!これでおしまいだ!」


「お前がな」


イチの静かな殺意の声が響く。

エリトはその瞬間気づき、後悔した。

イチが最後の力を振り絞って、斬撃を出そうとしている。

タイミング的には必殺の間合いだ。


「(毒が回っていた筈だろ!なんでまだ動けるんだ!)」


心の中で毒づきながら、歯を食いしばり左手の黒虹彩剣でガードするエリト。


大魔力を使った直後で反応が遅れている……のだが、エリトがパワーアップしていたのと、普段の出力の半分しかない『アクセル128』では必殺とはならず、左手の黒虹彩剣のガードが間に合ってしまう。

心の中で絶叫するイチ。


「(この間合いで届かないのかよ!連撃いけるか⁈)」


しかし脳内に無情な機械音声のような声が響く。


「『アクセル128』の使用限界まであと3、2、1……」


毒が凄い勢いで全身を駆け巡ってる感じがする。回復魔法をかけてもらったのに、使用限界時間が削られてしまっていた。


「(ああ……ダメだったか……)」


使用限界がきた、全身の筋肉が骨が悲鳴を上げる。力が抜ける。振り下ろした翠亀剣は無情にも黒虹彩剣に弾かれ……



なかった。



まるでゼリーでも切るかのように、翠亀剣は黒虹彩剣の剣先と、エリトの右手をストンと切り落とした。

エリトの右手はそのまま地面に落ち、黒虹彩剣の切っ先は遠くに弾け飛んだ。


「ぎゃああああああああああ⁈」


「きゃああアアアアアアアア⁈」


エリトと黒百合が同時に悲鳴を上げる!

そしてほぼ同時に、切り落とされ地面に落ちた黒虹彩剣の切っ先から高圧の水道管に穴が開いたみたいな勢いで、凄まじい量の瘴気が吹き上がった。

瘴気は一匹の大蛇となって天に向かって女性の悲鳴のような叫び声をあげている。そして辺りに、全身が総毛立つ呪いのような空気を撒き散らし始めた。


黒百合はこの状況を見て即座に判断した。


「いけない!ここまででありんす!お前さま!撤退でありんす!」


「あ……アアアアアアアア……待ってくれ、黒百合!俺の……俺の右手が切り落とされて、まだそこに落ちて……」


「命の方が大事でありんす!ここはもうおしまいでありんす!逃げるでありんす!」


そう言うと、八岐大蛇のような蛇の瘴気……いや七岐の大蛇となった塊は、エリトを咥えこむとツチノコのように5メートルの高さまでジャンプして、そのまま信じられない速さで蛇行して逃げた。


「(よし!逃げてくれた!あ……あとは……!)」


心の中でガッツポーズをとる……が、心臓が経験した事のない痛みをあげていて思考が働かない。肺が機能していないんじゃないかと思うくらい酸素が足りていない気がする。

それでも痙攣する全身を鼓舞しながら半分無意識でエリトの右手を回収した。そのまま地面に倒れこむ。


「(全身が爆発しそうだ!息が!息ができない!)」


地上に打ち上げられた魚のように口をパクパクさせながら、震える手でエリトの右手の小指から紫色の宝石のついた指輪を外し、自分の小指に着けた。


「間に合えー!」


絞り出した残りの魔力を紫色の宝石のついた指輪に注ぎ込むと……うっすらと紫の宝石が輝いた!

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