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43-呪いの剣

ゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワゾワッ


全身が総毛立った。この感覚は、まさか…。


シリウスさんの手元を見ると、黒虹彩の呪いの小剣を…鞘から抜いてしまっているのが見えた!

シリウスさん、それは…!!



「…くたばるがいい…醜悪なトカゲども…!」



シリウスさんがそう呟いた瞬間…。


黒虹彩の小刀から瘴気が噴き出したかと思うと、半透明の8つの頭を持つ蛇のような生き物の影が現れ…周りにいた竜人達を次々と襲い始めた。


シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


八岐大蛇のような影の群れが高速で地を這い、次々と竜人兵たちに襲い掛かる。竜人たちは次々と大蛇のような影に飲み込まれ、次の瞬間にはバターのように溶けていた。

倒れて動かなくなっていたジャーバルも大蛇に飲み込まれ……あとかたもなく溶けてしまった!


「な…なんだこれは⁈いや、これは…覚えがあるぞ…⁈アン、走れ!逃げるぞ。振り返るな!」


「チョビ、置いていくな!クソ…冗談じゃねえぞ…!」


アンとチョビは、蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げだした。

シリウスさんの黒虹彩の小刀は、わずか一撃で竜人兵の夜襲部隊を全滅せしめたのであった。





「(勝ったの…か…⁈)」





そんな事を一瞬考えた…。が、現実は甘くなく、今も休みなく隕石が次から次へと村に落ちてくるピンチが続いている。

これを防げるのはシリウスさんじゃないと無理だ。俺の今の『重力制御』の力ではこれほどの数の隕石を止められるレベルにはない。

一刻も早くギラードをなんとかしなくては!


「イチ…くん…よく聞いてくれ…」


そんな時にシリウスさんが話しかけてきた。

見るとシリウスさんの眼球は白濁していて、声にも力がない。


「(死相がでている…!)」


手に握られた黒虹彩の小剣からは凄まじいエネルギーが迸ってるが…そのエネルギーはシリウスさんから根こそぎ絞り出されている気がする。

やはり使ってはならない武器だったのだ。


「使ってみてわかった…この小剣は確かに強力だ…が…私はオリオンではない…使用者には罰が下るようだ…目が見えなくなってきた」


「シリウスさん!一刻も早くその小剣を捨てて下さい!」


泣きそうになりながら訴える。しかしシリウスさんはゆっくりと首を横に振る。


「そうしたいのはやまやまだが…手から離れなくてね…」


そう言いながら、黒虹彩の小剣を手放そうとするシリウスさん。しかし、小剣はヒルのように手にビッタリと吸い付いていた。

小剣から放たれた八岐大蛇のような黒い影は凄い速さで刀身に戻ってきていた。そして絞った雑巾のように捻じれたかと思うと、一瞬で縄のようになり…投げ槍のような形に収束した!


「どうやら…この蛇の槍は…5000ダール(5km)くらいまでは攻撃できるようだ…だが、どんどん命が吸われていく…あと一度しか攻撃できないようだ…せめて…この命と引き換えにしてもギラードは仕留めたい。…場所さえわかれば…!なんとかギラードを見つけてくれ…!」


シリウスさんが瘴気に包まれる。

どんどん弱っていくのが見て分かる。

チクショウ!そんなこと言われても!どこにいるのか!

そうしてる間にも、また新しい隕石が上空に出現するのが見える。


向こうからはこちらが見えてるようなのに!

なんでこっちからは分からないんだ!






いや待て。






なんでこっちの位置がここまで正確に見えているんだ⁈




もしかしてさっき部屋に仕掛けられていた、音を拾う『集音蟲』みたいな…こちらを正確に見張る道具を竜人たちは持っているんじゃないか⁈

リコたちにすぐに問う。


「リコ!フォレスタ!ギラードにはこちらの姿が見えてるみたいだけど、もしかして竜人たちには遠くから相手を見張れるようなそんな道具があったりする⁈」


リコとフォレスタが顔を見合わせる。


「…!遠眼鏡みたいなものでしたらあると思います!…でもそれにしては正確すぎますよね…」


「いや、あいつらは色んな便利な魔法の道具を持っているよ!あってもおかしくないかも!…でも、さすがに全部はボクたちも把握していないから…」


ダメか。リコやフォレスタにもすぐに思い当たるものは無いようだ。

何か…何かどこかに怪しいものがあったりしないのか⁈

そんなとき、ゲス郎がポツリと呟いた。


「そういえば、ちょっと引っ掛かってたんゲスけど…」


「…何かあるのか⁈」


「あそこの明かり、デブとチビの竜人が落としてったんでゲスが…」


ゲス郎が指さした方向を見てみる。少し離れた地面に、カンテラのような物が置いてあるのが見える。


「夜襲の照明か?それがなんだ⁈」


「それなんでゲスが…今思い出したんでゲスが今日、集落の外れで隠れてたときにあの二人組を見たときは、あいつらの周囲に魔法の明かりが舞っていた気がするんでゲスよ。そんな便利なのがあるのに、なんでわざわざあんなものを…?と思ったんでゲスよね」


ハッとなって、地面に置いてあったカンテラを凝視する。

中には…小さなロウソクのようなものがあり先端には火が灯っているのが見える。

普通のカンテラのように見えるが…。



いや違う。



ただの火じゃない!

よく見ると炎が目玉のような形になっており、ゆらゆら揺れているようで、瞳孔のような中心の核はこちらを真っ直ぐに見ておりピクリとも動かない!


「フォレスタ!」


「分かった!間違いない!アレだ!」


フォレスタが弓矢を構える。

その瞬間!


ドオオオオオオオオオン


雷の大砲が飛んできた!


「やらせるかよ!」


慌てて翠亀剣を振るい、雷の大砲を無効化する。

しかしその瞬間。

体中のあちこちから、建付けの悪い古い扉を開けるかのような嫌な音が体内に響き、軋んだ。


「(クッ!毒が回っている!)」


力が抜ける!ダメだ!そう思った瞬間。


相撲取りみたいな土人形がカンテラに向かって突撃していくのが見えた。

続けて飛んでくる雷の大砲が土人形に襲い掛かるが、ものともせず土人形はカンテラを叩き壊した。


「クソがああああ!」


遠くでエリトの恨み節が聞こえる。

その声がした方向にすかさずフォレスタが矢を放つ。

舌打ちする音が聞こえて、邪悪な気配が遠ざかった。


エリトは今も姿を消しているようだ…しかし水色の水蒸気は見えない。


「(マムリ姐さんの仕掛けた祝福は切れてしまったみたいだ…。これじゃもう追えないか⁈)」


そう考えていたら、そのまま何もない空間に向かって土人形が迷いなく真っ直ぐ走っていく。

エリトの慌てた感じの悲鳴が聞こえた。


「(⁈…もしかしてあの土人形…エリトの位置が分かるのか⁈)」


ならば!


「土人形!エリトを追ってくれ!」


そう土人形に叫んだ!しかしその直後。


ドオオオオオオオオオン!


新たに飛んできた隕石が土人形に命中してしまった!


「土人形さん!」


リコが叫ぶ。

土人形は壊れ…倒れ伏した。


やられた!対応が早い!

そう毒づいたその時…恐ろしくも冷たい声が辺りに響いた。


「本当に手こずらせてくれたな…まあ良い。見えなくてもおおよその位置は読めている。強い奴はもういないようだし、あと少し隕石を降らせたら後は部下に任せて私は去るとしよう」


そう言うと


ドオオオオオオオオオン!


先ほどまでのものほど正確な狙いではないが、それでも次々と隕石が飛んできた。


ドオオオオオオオオオン!ドオオオオオオオオオン!ドオオオオオオオオオン!


そこら中で爆発が起こる。

クッ…!このまま一方的に削られるだけなのか…!


「ギラードの位置さえわかれば…!」


そう呟いた時に


「…ギラード…は…そこから少し離れた祠にいる…よ!今から場所を教え…るわ!」


脳内に知らない女の人の声が響いた。


「え⁈え⁈誰⁈」


周りを見る。リコたちしかいない⁈一体今の声はどこから⁈

そう考えていたら再び女の人の声が脳内に響いた。


「細かい説明は…後。あーしはライミ…。ドラフト5位の勇者よ…一応。大丈夫…まだ負けてない…!だから諦めないで!」


弱弱しいが…不思議な信頼感のある声だった。













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