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32-ギラード

「手短に言え」


ギラードと言う名前の竜人がそう言うと、周りが静かになった。

ヤジを飛ばしていた竜人たちですら、緊張して青くなってる。そんなに強いのか⁈


いや、強いんじゃない。『恐い』んだ。近くにいるだけで、喉がカラカラになる。

体格ならジャーバルの方が遥かに大きくて強いのに、ギラードには有無を言わせない圧がある。

本当に戦ってはいけないタイプだ。


しかし社長は引いていない。

氷のような圧を飄々としながら受け流している感じがする。


「ありがとうございます。では、こちらからの提案をさせていただきますね。とりあえずの手付として、今ある白金貨を3000枚ほど渡しますので、貴方様の裁量で引いていただく事はできませんか⁈残念ながら…フォレスタさんもイチくんも我々の大事な仲間ですので、お渡しする事は出来ませんが…」


「おい!何勝手な事を言ってやがる!死なすぞ!…うっ…」


社長の提案に激昂するジャーバル…だったが、ギラードが一瞥すると、静かになる。

そしてギラードが冷たい目をしながら返す。


「…何故、我々がそんな提案を飲まなければならない?」


それを聞いた社長も、微笑みながら返す。


「失礼ながら…税金よりも大事なもののために、竜人様の…№2の方が来られたのですよね?」


ギラードは数秒黙る。

そして、社長と会話をし始めた。


「税金は大事だ。それに部下の仕事の様子を見に来ただけだ。すぐ帰る」


「そうでしたか、それでしたら…」


「だがジャーバルの言う通り、こちらとしても、立場がある。この世界の物は全て竜人皇様の財産だ。そして、その財産の一つである大宝イノスを殺めた人間は連れて行かねばならない。だから税金もその二人も連れて行く」


「そうしたら、我々は貴方たちの嫌がるカードを切らないといけません」


刃のような視線を社長に向けるギラード!

それに対して社長は悠然としている。

しかし俺も含めて他の人間は金縛りにあったように動けなくなる!

(だが、シリウスさんだけは冷静に相手との間合いを図っているように見えた)


「(なんて圧だ!指一本動かせない!)」


そんな事を考えながら横を見ると…フォレスタが真っ青な顔をしながら震えているのに気がついた。

そしてリコは涙目になりながらも、フォレスタを励ますように手を握っている。



頭が冷えて、フッと金縛りが解けた。



リコとフォレスタの前に出てギラードの圧から二人を守るかのように立つ。

それを見たギラードが「(ほう?)」と俺の方を一瞬だけ見た気がした。


そしてギラードと社長が交渉を始める。


「嫌がるカードとは⁈」


「それは言えません」


「話にならんな。カードを切る前に、ここでお前らを皆殺しにすれば終わりだろう」


「それはできないですよね⁈」


「何故そう思う」


「貴方はそれを見るためにわざわざ来たのですよね?我々はそれを永遠に失わせる事ができるかもしれませんよ⁈」


ギラードがエリトの方を見る。

エリトは慌てて「何も知らないです」という顔をする。

そして社長が続けた。


「エリトくんも貴方たちも、我々の全能力を把握してるわけではないでしょう⁈」


ギラードは少し考えこみながら、社長とシリウスさんと…俺をじっと見ている。

そして振り返り、竜人の部下たちを冷たく睨んだ。

さっきまでヤジを飛ばしていた竜人達が青ざめて泣きそうな顔をしている。


少しの沈黙の後…ギラードが社長と再び話し始めた。


「我々が引いた後…貴様らがそのカードを失わせる可能性は⁈」


「…我々がそれを失わせると思いますか⁈」


「わかった、引こう。ただし白金貨は10000枚持って行く」


「ありがとうございます」


ギラードが「引くぞ」と指示を出す。

竜人の兵たちが怯えながら、引き始める。


少しだが空気が緩んだ。


助かった。正直いっぱいいっぱいで、とてもじゃないけど戦える雰囲気じゃなかった。

少しだけど時間が稼げた。これで一旦態勢を立て直せる。


そんな事を考えていた時…



「ちょっと待って!」



震える声で…フォレスタがギラードを呼び止めた!




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