21-宝イノス狩り日記
結局この日はもう一頭仕留めて、合計二頭。
二頭目はそこそこ良い宝を持っていて、この日の稼ぎは白金貨30枚くらい。
「なかなかやるじゃない!リコが払うんだったら、この金額で足りていたね!でも!勇者イチ様はもちろん~!」
「分かってるよ、10000枚払うんだろ。約束は守るよ」
「キャー!素敵!愛してるよ、ボクのイチ様!」
「愛してるのはお金だろ!」
「当たりー♪へへへ!」
フォレスタと漫才みたいな掛け合いをしながら帰る。気付いたが、フォレスタは可愛さをアピールしたり、宝塚のような格好良さで相手をメロメロにしたりと、自分の美しさを最大限生かしたコミュニケーションを取っているが、自分には少しづつフランクな一面を見せ始めてる。
「年齢も同じだし…女友達って感じがする」
正直こういうのも悪くない。出会いがこんな形じゃなかったら、普通に友人だったと思う。
森の集落に戻って、休んでよいと言われたけど、宝イノスの解体や皮を剝がしたりの作業を手伝う。筋が良いと褒められた。夕食は美味しい宝イノス鍋だ。
ここで、どぶろくさんが大活躍する。どこでも酒が出せる祝福は、どこへ行っても大人気だ。おまけに若い頃飲み歩いてるうちに、自分でおつまみも作っていたらしく、集落の食材でプロの料理人並みの酒の肴を作ったり、集落の果物で果実酒を作っていた。エルマさんは陽気な酒クズ女王様なので、たちまち集落の酒飲み衆のアイドルになった。フォレスタが「私が人気で…負けてる⁈」とショックを受けていたくらいだ。
ちなみにどぶろくさんの果実酒を一口飲んだ社長が
「自分の人生で…これほど美味い酒を飲んだ事はないかもしれない…どぶろくさん、貴方は天才です!」
とべた褒めしていた。どぶろくさんは照れながら
「おいちゃんは、他に何も出来ないから、褒めてもらえると嬉しいさあ~」
そう言いながら、どんどん新作を作ってくれる。祝福は使う事で成長するらしく、どんどんとんでもなく美味い酒を造っているみたいだ。それどころか酒が美味くなるだけじゃなくて、酢や消毒用アルコール、発酵食品とかも出せるようになっていたらしい。
社長は『成長促進』の祝福で、農作物や家畜を成長させている。エルマさんは、森の民が拾ったけど、使い道がなくて扱いに困っていた呪われた武器防具の呪いを解いて、使い物になるようにしていた。それどころか、一部には物凄い価値があるものもあったりして、一時、集落が歓喜に沸いたくらいだ。
(まあ、エルマさんのM字開脚ダンスにはみんな面食らっていたけど)
集落がどんどん豊かになっていく。よそ者としてなんとか迎えて貰っていた我々勇者一行だが、森の民の皆様の好感度が上がっていくのを感じる!
社長たちが
「君一人で背負わせたりはしないからね、私たちも、ちゃんとお金を稼いで、イチくんを支えるよ。だから君は自分のできる事を精一杯やりなさい」
そう言ってくれた。
シリウスさんたちは、狩りは手伝えないと言っていたけど、自分を鍛えてくれた。ドラフト1~3位の修行は厳しいけど、得るものは多い。
「そっか…一人で戦わなくても良いんだよな…みんながいるんだ」
エリトとの戦いの敗北と、白金貨10000枚のプレッシャーに押しつぶされそうになっていたけど、少し心が楽になった。よし!頑張るぞ!
二日目は、罠の作り方を教えてもらい、七頭仕留めた。
白金貨200枚分くらいの稼ぎになった。順調だ!
三日目は…一頭も獲れなかった。フォレスタにこんな日もあるよと言われたけど、明らかに宝イノスに警戒されている気がする。
そう言えば、バイト先で、野生のイノシシとかのメスを罠で捕らえると、仲間がそれを見ていて、罠対策をしてくると聞いた事があった。宝イノスと俺の世界のイノシシの習性が同じかは分からないけど、気をつけないといけないな。
この日は、早めに切り上げて、シリウスさんとリコに鍛えてもらった。
シリウスさんからは剣技を、リコからは回復魔法を教えてもらった。
一朝一夕じゃ身に付かないけど、才能はあると言ってもらえた。
リコが言うには
「魔法はセンスなので、イチ様もすぐに回復魔法は使えるようになりますよ!」
だそうだ。それと魔法のセンスについて、リコはこうも言っていた。
「この前仕掛けてきたエリトさんの雷魔法なんてセンスの塊でしたからね…」
「え?エリトが攻撃に使っていた雷の大砲、あれアイツの祝福じゃないの⁈」
「『攻撃魔法の才能』と言う意味での祝福はあるかも知れませんが…たぶんそれ以上にあの人のセンスがずば抜けていたんだと思います。あの雷魔法はこの世界に元々ある魔法ですので」
なんてこった、アイツは攻撃魔法の才能があったのか。悔しいがドラフト4位は伊達じゃないんだな…。
しかし、宝イノス狩りも板にはついてきたし、修行も勉強になるが…エリトはさらに強くなってる可能性があるわけか…俺も何か必殺技の一つも身につけないと…。
そんな事を考えながら寝床に着いたら…。
以前夢の中に出て来た銀髪で長髪の背の高いイケオジが、また夢枕に立っていた。