17-手紙
手紙の中身を確認してみた。
これは…
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ジュンイチくんへ
シリウスだ、突然の手紙ですまない。
竜人たちに動きがあった。
竜人たちによる、大規模な勇者狩りが行われているらしい。
既に、30人以上の勇者が狩られて行方不明になっている。
勇者仲間の連絡網もズタズタになっている。
47人いた勇者が三分の一になってしまった、このままではジリ貧だ。
そこで、今いる勇者達を集結させようと思う。
戦力分散していた影響で、各個撃破されていたのだから
今度は戦力集中させて一気に竜人皇の首を取るのだ。
幸い、仲間からの情報で、竜人皇の根城と、警備が薄くなる時期の情報が得られた。
場所はドラゴニアの街だ。
そちらも大変かもしれないが、なんとか合流して欲しい。
無事を祈る
シリウス
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「エリトの言っていた通り…ひどい事になってる…勇者たちは本当に三分の一になってしまったのか…」
思わずそう呟いた。
リコたちがドラフトの時に言っていた通り、竜人たちは、本気を出せばすぐに我々を捻り潰せるのか。
これはたしかに、集結した方が良いと思うのだが…何かが引っ掛かる。
「このままではジリ貧だ…って言っているけど、既にジリ貧だよなあ…。リコ、竜人皇の根城のドラゴニアの街ってどこ⁈」
「この世界の中心で、竜人達が多数住む土地リューグ領の大都市です。近づくだけでも警戒されると思うんですが…」
リコもなんか変だと思っているらしい。みんなで顔を見合わせていたら、社長が
「おそらく前半は事実だけど、後半は嘘だね。これはニセ手紙だよ。たぶん我々を罠に嵌めようとエリトくんか他の誰かが用意したのだろう」
と断言した。
え?と言う顔をしていると、手紙のシリウスさんのサインの所を指さして
「シリウスさんと打ち合わせていたんだよ。もし手紙でやり取りする事があったら、サインの所に髪の毛のように細い針で3ヶ所に穴をあけておくってね。この手紙にはそれはない。そもそも連絡役にエリトくんを使う事が怪しかったんだけどね。自分もシリウスさんも、彼を警戒していたから」
なるほど!さすがシリウスさんだ!でも前半は事実で後半は嘘の根拠はなんだろう⁈
「嘘の中に真実を紛れ込ませて混乱させるのは基本だし、エリトくんはそういうのが得意そうだからね。自分がシリウスさんに、こちらの方へ行ってくれと頼まれた時には既に、勇者狩りが始まるという噂は耳にしていたんだ。だから30人以上かは分からないけど、大規模な勇者狩りが始まっていてもおかしくはない。そもそも手紙は第二の連絡手段なんだ。本来なら緊急時用の別の連絡手段があるんだよ」
「別の連絡手段があったんですか⁈」
思わずそう聞き返す。社長は頷きながら話す。
「ドラフト5位のガーマハ領の勇者で、ライミさんと言う女性がいるんだ。彼女は戦闘能力は全く無いんだが、彼女の祝福が凄くてね、彼女の能力は『通信』なんだ。彼女が中継すれば、この世界のどこにいても通話が出来ると言う、サポート専門の勇者なんだ」
「めちゃくちゃ重要な祝福持ちじゃないですか!」
思わず大声が出る。でも緊急事態なのにその能力を使わずに手紙が来たと言う事は…。
「彼女の身に何かがあったんだろう。彼女の存在は最優先で守られていて、居場所もシリウスさん、マムリさん、ジルコンさんのドラフト1~3位組の3人しか知らない。私も存在は教えて貰えたが居場所は知らないんだ。彼女の存在は戦況を激変させるから、間違いなく勇者狩りの対象だろう…無事だと良いんだが」
これで分かった。エリトの奴は手紙をワザと残していったのだろう。(財布は普通に落としたと思うが)間違いなくドラゴニアに集まるのはダメだろうな。でも、ここにいるのもマズイ気がする。
「どこかに移動して、出来ればシリウスさんたちと合流したいんだけど…。」
「私も、シリウスさんの行動予定は聞いていないんだ、すまないね」
社長と顔を見合わせながら話す。困ったな、どうしよう。
「シリウスさんと言うのは勇者シリウスの事かな?なら近いうちにウチに来るぞ?」
「え?」と思って声のした方を振り返るとフォレスタが笑っている。
「前に族長であるウチの父と話がしたいと言ってきた事がある。ウチで待っていれば会えるのではないか⁈」
おおおっ⁈と声が上がる。
「お姉さま!本当ですか⁈行かせてください!」
「フォレスタ!本当か⁈ならすまない!どうかそちらの領にお邪魔させてくれ!」
リコと一緒に懇願する。すると…
「あああああ!可愛いリコ!君に頼まれては断れない!いいだろう!リコだけは来て良いぞ!…と言いたい所だが、君たちに死なれては白金貨を取りっぱぐれてしまうな…良いだろう!皆で来たまえ!我がグミルの森に!」
フォレスタがリコの頭を高速で撫でながら、悶絶してる。
あんなに顔が良いのに、どこか残念な娘さんだ。
ゲス郎が「アッシも撫でて欲しいでゲス!」と言いながら駆け寄って行って蹴りを入れられてる。
うん、まあ平常運転だ。
まあ、とにかく次の目的地は決まった。
「行こう!グミルの森へ」
皆で頷いた。