16-フォレスタ
う、う、う、…美しいいいいい!
翡翠色の髪でショートカット、少し赤みがかった紫水晶の様な瞳。
少し体のラインが出ている皮の鎧を纏い、
頭にはアラベスク模様っぽい装飾が彫られた、羽飾りのついた輪っかを着けていて
左手には羽の意匠と同じくアラベスク模様っぽい装飾が彫られた弓を持っている。
線は細いが、スポーティーで必要な筋肉はついているスタイルの良さ。
年齢は自分と同じ17歳くらいかな?
女子高にいたら間違いなく女子高の王子様と言われる格好良さがあるのに、
時々ちょっと上目使いで笑ったりもして、蠱惑的な可愛さと色気も魅せている。
「格好良いと可愛いって両立するんだ…」
思わず感心してしまった。
おっと、そんな場合じゃない、お礼を言わなくては!
「北田順一…いや、ジュンイチ=キタダです。ワーミ領の勇者です。イチと呼んでください。先ほどは危ない所を助けていただきありがとうございます!」
そうお礼を言うと
「君が、リコの勇者か!それにしても…」
そう言いながら、フォレスタは俺の周りをくるくる回り始めて
「ふーん…君は…良いねえ。特に美しい訳ではないけど…なんか良い…クンクン…好きな匂いだ」
そう言うと、ごく自然に顔を近づけてきて。
「ボクのことはフォレスタで良いよ!ボクは美しい者にしか興味はないんだけど、君は、リコの勇者だし、特別にボクを近くで眺める権利をあげるよ?光栄に思いたまえ!ハハハ!」
うおお!顔がめちゃくちゃ良い!しかし…なんかキャラ濃いなあ⁈
しかし言うだけの美しさはある。
国民的アイドルグループならセンター張れるし、宝塚ならトップスターだ。
そんな事を考えていたら周りの村人たちが、フォレスタに駆け寄って、口々に「ありがとうございます!」と言いながら声をかけまくっている。みんな目がハートだ!このままじゃもみくちゃにされてしまう!
慌てて、皆を散らそうとすると、フォレスタはそんな群衆に向かって
「気にしないでくれたまえ、格好良くて可愛く生まれたボクの責務さ!それより…君たちを守れて本当に良かったよ!」
そう言いながらウィンクする。周りの人々が「はーん♥」と言いながらバタバタ倒れる!
すっげえなあ!おい!
よく見ると、ゲス郎も目をハートにして倒れている、期待を裏切らない奴だ。
そんなフォレスタは皆がバタバタ倒れているのを見て満足すると、こう提案してきた。
「さて…ボクは皆の危ない所を助けて、皆に真の美を見せた…お礼をいただいても良いよね⁈白金貨100枚いただけるかな⁈」
え⁈お金取るの⁈
いや…命を助けてくれたのだから…まあ、払うのはやぶさかではないけど…白金貨100枚…。
リコを見る。リコは困った顔をして
「あの…お姉さま…ワーミ領にはお金が無くて…その…」
「ああ!リコ!可愛いリコ!今日も可愛い!世界一可愛い!むちゅー♡あー!もう!可愛いリコにそんな顔されたら!ボクはもう!もう!」
豹変してリコに抱きつき、突然のダメ人間ムーブをかますフォレスタ。先ほどの高貴な雰囲気の王子さまはどこへ⁈
「白金貨30枚にまけてあげよう、これ以上はまからないな」
その後、スッと冷静になり、お金をまけてくれた。うーむ、顔は良いのにキャラが濃ゆい。
しかし…白金貨30枚か…とても今の俺達の手持ちでは…
「アタシたちお金ないからさあ…もうちょこーっとまけてくれない⁈」
エルマさんが我々を代表して、金額の交渉に出てくれた!
頼みます!エルマさん!
するとフォレスタは近くの木にエルマさんを押していき、壁ドンをかまし、妖艶な瞳で見つめた後、エルマさんの顎をクイっと持ち上げて
「悪いね、レディー。ボクもお金が必要でね、これ以上まける訳にはいかないんだ、でも…こんな美しいボクのためにならお金を払ってくれるよね⁈」
「はあああああああああああん♥顔が良いいいいいいいいいい!♥払います!白金貨30枚払いますううううう!♥」
エルマさああああああああああん⁈
我がチームの裏女王様があっさり陥落した。
なんて顔面偏差値だ!
仕方ない。助けて貰ったのは俺だ。ここは一つ…
「待ってくれ、フォレスタ、命を助けられたのは俺だ。俺が必ず払う。貸しにしておいてくれ」
そう啖呵を切る。それを聞いたフォレスタは「へえ⁈」と言う顔をしながら
「君がかい⁈…ふうん⁈なるほど…」
興味深そうに俺を見て、しばらく考えた後、クスクス笑いながら
「じゃあ出世払いで良いよ。ただし白金貨10000枚だ!リコの勇者ならこのくらいやって貰わないとね!」
「い…10000枚!」
思わず声が出る、直後にリコが
「お姉さま!それは無理です!私が必ず白金貨30枚用意します!だから!」
抗議の声を上げるが、手で遮る。
「分かった。必ず払う。だからこの件は、俺と君だけの約束だ、リコたちには関係ない、これで良いだろう⁈」
再び啖呵を切った。さあこれで逃げ場がないぞ。だが、どうしよう…。
そんな事を考えていたら、フォレスタは顔を近づけてきて、上目使いをしながら凄く妖艶な瞳で語ってきた。
「キミは本当に良いなあ…キミみたいな、美しさを持ちあわせていない輩の啖呵なんていつもなら一蹴するんだけど…何故かキミからは目が離せない…何かを期待したくなる…」
うわあああああああ!顔が良いいいいいいいいいい!耳触りの良い甘口のウィスパーボイスうううう!
ああああああああああ!もうどうなっても良いいいいいいいいいい!
「白金貨10000枚、きっちり払ってもらうよ?」
そしてきっちり、現実に引き戻す。
チクショー!やってやらあ!
そして思った。フォレスタは凄い弓の名手で、それが彼女の武器だと思っていたけど…
「(この娘の本当の武器は顔の良さだ!そしてそれをちゃんと自覚してる!なんて厄介な娘だ!)」
心の中でそう叫ぶ。
そして彼女はそんな俺の心を読んだかのように微笑みながら
「じゃあ改めてもう一度、ボクはフォレスタ。君の事はこれからイチと呼ぶよ⁈イチ、ボクは狙ったモノは全て手に入れるのが信条なんだ!だからさ!期待しているよ、ふふふ♡」
そう言いながら流し目でイケメンビームを放つ。
ぐううううううううううう!効くううううう!
「ところで、さっきゲス郎くんが拾った手紙を確認しないかい⁈」
少し離れていた所で、我々を見て引いていた社長が声をかけてきた。
すみません忘れてました。
あれ?でも社長はフォレスタのイケメンビーム喰らっても平気そうだ…何故だろう?
そう思って聞いてみると…
「私のカミさんの若い頃はもっと綺麗だったからね、美人には慣れているんだよ、ははは!」
社長が一番のイケメンだったああああああああああ!格好良いです社長!
「さて…良いかな⁈手紙を開くよ⁈」
そう言いながら社長が手紙を開いた。