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14-覚悟の差

「あ、ダメかも」


エリトの掌から雷の砲弾が飛んでくるのがスローモーションで見えた。


(死ぬ間際に見る走馬灯ってこんな感じかな…)


そんな事をボンヤリ考えていたら、何故か、夢の中でカセーツさんと一緒にいた、銀髪長髪のイケオジの剣技を思い出していた。


(えっと…確かあのイケオジ…夢の中で、剣を片手で横に薙いでいたっけ…地面に対して平行に…あの剣技、美しかったなあ…)



イチは、ゆっくりと持っている剣を握りこみ…



おそらく無意識のうちに、スッと横に薙いだ。


すると、剣先から緑色の光の軌跡が浮かび、その光はイチの前面を覆った。


その瞬間に雷の砲弾がイチに着弾した!


じゅわっ


…が、イチは黒焦げに…ならなかった。

雷の砲弾は…イチの眼前で煙のようにかき消された!


「え⁈」


「え⁈」


イチとエリトの声がハモる。

お互いに何が起こったのか分からなかったからだ。


数秒間呆然とした後、ハッと我に返り、木の陰に隠れる!

エリトは警戒しながらも数発、イチの方に向かって雷の砲弾を撃つ!


「(なんだ今の⁈)」


「(なんだ今の⁈)」


イチとエリトの心の声もハモる。

だが、イチの中で光明が見えてきた。

木の陰から半身を出して剣を横に薙ぐ。

そこを狙ったエリトの砲撃が飛んでくる!


じゅわっ


先ほどと同じく、剣から発生した緑の軌跡の残りに当たって…やはり、かき消された!


「この剣…!雷…いや、もしかしたら魔法そのものをかき消す魔法が付与されているのかも!なら!」


木の陰から飛び出し、剣をしっかりと握りしめ、エリトの方へ駆ける!

エリトの砲撃!

躱すことなく、剣を横にキレイに薙ぐ!


…雷はかき消された!確定だ!


「そんなのアリかよ!クソがあああああ!」


焦って背を向けて逃げるエリト!

足が速い!逃げられる!

だが立場は逆転した!


「クソ!まさかこんな切り札を持ってやがったとは!」


毒づきながら身体の前で両手をクロスするエリト。

その瞬間…スッとエリトの姿が半透明になる!

これか!エリトの切り札は!姿を消して逃げる気だ!


「そうはいくか!」


頭と心の中で機械的なアナウンスが聞こえる!


『アクセル255のクールダウン完了まで、あと3秒…2秒…1秒…』


脊髄の回路が動き出す。

頭が冷えて手足に血が集まってゆく。


『クールダウン完了。アクセル255発動します』


どっどっどっどっどっどっど


心拍数が上がる!

視界がエメラルド色に変わる!

脚が2本、4本、8本…16本にと増えていくような超感覚!

体勢を低くしろ!地面を掴め!全身のバネを使って蹴り上げろ!空気の壁を破れ!


「逃がすかあああああああああああああ!」


今、まさに消えようとしていたエリトのいた辺りにドロップキックをかます!


ドガッ!


「ぐっはあああああああああ!」


悲鳴を上げながら吹っ飛び転がっていくエリト。

透明だった姿がまた視認出来るようになった!

そのまま一気に追い詰める!


「クソがああああああ!」


掌をこちらに向けるエリト。

また雷の大砲を撃つ気か!

素早く剣を横に薙ぎ雷をキャンセルする。


「終わりだエリト!」


「ひいいいいいいいいいいい!」


全力で剣を振る。

この距離なら確実に首を斬れる!




いや、ちょっと待て。




これって人殺しじゃないのか。

エリトの事は大嫌いだが、出来れば悔い改めて欲しいとは思っている、殺したいとまでは思っていない。

元の世界では同級生だった、一応顔見知りではある。


竜人と戦う覚悟はあった。でも人殺しをする事は考えていなかった。

これは、ゲームじゃない、現実だ。斬れば血は流れるし、息もしている。近づけば体温だって感じる。


ましてや見た目は自分とほとんど変わらない同じ人間を殺すのは…ちょっと…。


エリトの首を斬る直前に、剣を止めた。


「反省したか⁈」


エリトに問いかける。

俯いて無言のエリト。

顔を覗き込むと…


「するかよ、バーカ」


歪んだ笑いを浮かべながら後方に飛び、掌をこちらに向けるエリト。

このわからず屋が!

冷静に剣を横に薙いで雷をキャンセルする!


いや…


掌の開き方が違う…⁈少し…すぼんでいる⁈


イヤな予感がする!


全力で横方向へ飛びのく!

その瞬間、エリトが叫んだ!


「ブッパ!」


「なっ⁈それ!カセーツさんの⁈」


ズババババババン!


右足をアイア豆の散弾でズタズタにされる!


「ぐわあああああああ⁈」


悶絶しながら転がる!

そんな自分を見下ろしながら笑うエリト。


「想像以上の甘ちゃんだな⁈イチ⁈覚悟が足りないんじゃないのか⁈」


「エリト…その技…カセーツさんの…⁈どうして使える⁈カセーツさんをどうした…⁈」


息も絶え絶えになりながらも聞かずにはいられない。そんな自分を見て、満足気に微笑みながらエリトが返す。


「教える訳ないだろ⁈バーカ」


ケタケタ笑いながら自分を見下ろすエリト。ダメだ、もう、声も出せない。


「イチ、お前、こっちの世界に来てどのくらい経つと思ってんだ⁈実戦やってねえな⁈人殺した事もないだろ⁈この結果は俺とお前の覚悟の差だ、残念だったなあ⁈」


「エリト…お前…どこまで」


「イチ様!」


泣きながらこちらに駆けてこようとするリコ!

やめろ!来るんじゃない!逃げろ!


震える手で剣に手を伸ばそうとする。

しかしその意図に気付き、その剣を遠くへ蹴飛ばすエリト。


「心配するな、俺は差別はしねえ。お前も姫さんも、この場にいる目撃者全員を平等に始末してやる、まずはお前からだ、イチ」


そう言いながらエリトは、酷薄な笑みを浮かべながら、掌をこちらに向けて来た。


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― 新着の感想 ―
戦闘シーン、かっこいいです! 手に汗握りますね!
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