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日一日と、首都の治安は悪化の傾向にあった。
反対派貴族議員が、私兵を集めつつある――そのような情報が第一書記局警保部と軍事内局資料部から、リーセロットに報告されたのは、ほぼ同時期だった。警保部は夜警隊から、資料部は首都警備隊から、それぞれ情報を入手していた。
「反対派議員の私兵と、条約に不満を持つ群衆が一体化すれば、容易ならざる事態に陥りますぞ」
対策を講じるため、第一書記局庁舎において局長官会議が臨時に招集され、議論の口火をレーリンク侯が切った。
「軍事内局資料部で入手した情報では、集められた私兵の数は現在のところ約一〇〇〇。私兵と言っても、ならず者や無宿人、失業者などに凶器を持たせたのが実態のようですが」
急遽やって来たアウグストが、最新情報を提供した。
「夜警隊経由で上げられた情報も、似たようなところです」
レーリンク侯は、アウグストの見方に同意した。
「デンヘイグ市内には、他に不満分子が二〇〇〇人ほどいる模様です。多くは、南部から逃れてきた難民たちで、彼らは休戦条約に不満を持ち、条約の破棄を訴える集会を、毎日のように市内のどこかで開いておるとのこと」
条約反対派は、総数で大体三〇〇〇人。これに対して政府の警備力は夜警隊が約三〇〇、軍首都警備隊が約五〇〇。反対派が動きに方向性を持ち、弾みを付けたら、抑えられないかも知れなかった。
「このような状況では、やはり戒厳の宣言を総督に具申せねばならぬ。ナッソー将軍、前線の軍を、至急首都に戻すことはできませぬか?」
レーリンク侯の質問に、アウグストは即答した。
「そうしましょう。ですが、前線から首都まで強行軍でも六、七日間は必要です。その間、手持ちの警備力で事態の悪化を防がねばなりません。早速伝令を出します」
レーリンク侯は、第三書記局長官ホイヘンス伯爵の方を向いた。
「ホイヘンス伯。卿とレーウェンフック侯爵が、反対派の最大の標的のはず。本日から、夜警隊の身辺警護を付けさせましょう」
ホイヘンス伯は頭を下げて、礼を述べた。




