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イスハニア新国王の特使がブリタリアに到着してから約二ケ月後、ブリタリア王国外務卿ロンズデール伯爵を仲介者とする和平交渉が、アンベルス市の市庁舎で開始された。
ネイザーラント側首席代表は、枢密評議会議長レーウェンフック侯爵。副代表は第三書記局長官ホイヘンス伯爵である。
一方のイスハニア側首席代表は外務大臣オルネラス伯爵。副代表は、低地派遣軍司令官伯爵スピノラ将軍である。
「外交官とは、貴族の職業である」
との謂いが、まさに当てはまる関係国の顔ぶれであった。
現在の戦線で、休戦を維持することに、両国で異議はなかった。また、先にイスハニアが人質として本国に連行したネイザーラント人約千人の身柄を返還することにも、捕虜交換にもイスハニアは同意した。通商関係を正常化し、相互に外交使節を交換することも了承された。
だが、交渉は途中で暗礁に乗り上げた。




