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 イスハニア軍は、街道上に長い敗残の列を作って、ブレダー城を後にしつつあった。それをブレダー城内から眺めるダイゴの胸に、勝利の実感はない。

「負けないで済んだな」

「左様でございますな、代理閣下」

 幕僚長との会話は、内容が正直だった。実際、この戦いでのネイザーラント軍の死傷率は約三割で、継戦能力は限界に達していた。生き残った兵の疲弊も、甚だしかった。イスハニア軍から停戦の申し入れがあった時には、ダイゴは思わず腰が抜けるほど安堵した。

 リーセロットの書簡にあった、「信頼」の二文字を裏切らないで済んだという事実を、ダイゴは心のなかで喜ばずにはいられなかった。

「代理閣下、イスハニア軍から軍使が到着しました。敵司令官からの書状を携えております」

 そこへアルテュールが、報告を携えてきた。

「読んでくれ」

 アルテュールは書状を広げた。そこにはネイザーラント語で、撤退完了前に主将同士の会見を望むと書かれてあった。

 書状の内容を聞き終えたダイゴは、答えを発した。

「応じよう。場所と時期は、任せると答えてくれ」

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