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 イスハニア首都の王宮。

「どうしてこんなになるまで放置していたのだ!」

 前国王フェルペ二世の喪も開けぬ間に開かれた初の御前会議で、喪章を腕に巻いた新国王は、怒りを爆発させた。その怒号は、会議の間全体に響いた。

 対オットマン戦線から呼び戻されて、父親の国葬と自身の即位式を慌ただしくおこなったのち、宰相から受けた最初の国政報告では、現状で国庫は空に近く、来年度の予算もまともに組めそうにない有様であるとのことだった。

「なぜ、父上をお諫めしなかった? 財務大臣!」

 恐懼した老臣は、おずおずと奉答した。

「臣ら、お諫め申し上げました。しかし、先王陛下はお聞き入れにならなかったのでございます。あまりの新教憎さに、戦争継続を叫ばれるばかりで」

「何たることだ……」

 新王は、唖然とした。彼自身、内海上の島に本営を置く内海派遣軍の司令官として、オットマンの異教徒と戦っている間、ここまで財政が悪化しているとはとても思っていなかった。父王から届く書簡は、督戦一辺倒だったからである。説明する財務大臣の口調は、非常に苦し気だった。

「我が国の戦費の出所は、低地に多くを頼っておりました。その低地が敵となったことで、財政事情は徐々に悪化いたしました。先王陛下は、低地の抵抗を粉砕すれば、財政は持ち直すとお考えだったようで」

 実際、新大陸におけるイスハニアの植民地では、大量の銀が採掘できたが、財務大臣によればその多くは軍事費として費消され、あるいはこともあろうに低地に投資されていた。物資の集散地である低地の海運業に投資する方が、国内に投資するより見返りは多かったのである。銀を手にした大商人としては、産業の乏しい国内に投資するより、利益の見込める低地への投資を好んだ。投資して収益が上がれば、当然それに課税がおこなわれる。イスハニアは、自分で敵の軍資金を作り出してやっていたのも同然だった。

「これでは、戦争どころではないではないか。軍務大臣!」

「御意」

 軍務大臣は、短く応じた。

「低地、フランク、そして内海の各戦線に勅使を差し遣わせ。別命あるまで積極的作戦は禁止すると。従わぬ者は、違勅として厳罰に処する!」

「御意」

 続いて新王が指名したのは、外務大臣であった。

「ブリタリアに特使を出す準備をせよ。一週間以内に出国させい」

 外務大臣は、新王の雷威に萎縮していた。

「御意でございますが、その目的は……」

「わからぬか!」

 新王は、察しが悪いとばかりに声をさらに荒げた。

「低地とフランクと和平を結ぶのだ。それには仲介者が必要であろう。ブリタリアに頼むしかないではないか」

 海上決戦以来、イスハニアとブリタリアは、直接干戈を交えていない。中立国と言えなくもない立場だった。ブリタリアは新教国だが、新王は、亡父ほどには新教への憎悪は強くなかった。

「直ちに人選に入れ。異教徒オットマン相手には、別に示す。余がベス一世宛に親書を書くゆえ、それを持参させよ。よいな、一週間以内に出国だ!」

 財政破綻という、ある意味、戦争以上の国難に自分は対処しなければならないようであった。

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