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敵に新たな動きがあることが、ブレダー城から見えた。
司令所を置いた城内の部屋からも、ダイゴはそれを確認した。損害を受けていると思われた最前線の敵連隊が後方に退き、それと入れ替わりに新規の連隊らしきテルシオが前進してきた。
「敵の最後の予備隊と思われます」
情報幕僚が、ダイゴの傍で報告した。ダイゴは、いよいよ敵も最後のカードを切ってきたと悟った。
——これを凌ぎきれば、短期的には勝てる。
ネイザーラント軍も、既に消耗甚だしかった。兵力の二割五分を失っていた。戦力は、破断界に達しつつあった。
「代理閣下、敵の新規兵力が突入してきます」
幕僚長からもたらされた報告は、ダイゴに覚悟を促すような内容だった。彼は、手に汗を握った。ほとんど無傷のテルシオが中央の突破口に現れ、縦長の陣形を取って第二線陣地に切り込んできた。
――今こそ。
ダイゴは、最後の決心をした。
「砲兵隊長、直接照準射撃だ! 中央付近の大隊は、両脇へ下がれ!」
ダイゴが夜間の内に動かしていたのは、砲兵の有するキャノン砲だった。スピノラが砲兵を使ったように、ダイゴも砲兵を使おうとしていた。だが本来、敵の城塞の壁を打ち砕くための砲を、人間相手に射ち放とうというのである。効果は未知であった。しかし、ダイゴには、何故か目算が立ちそうな予感があった。
「左右に下がれ!」
ハンスは、総司令官代理から部下に砲兵の前面を開けることを命じられて、それに従う命令を発した。
イスハニア軍新規戦力を食い止めていた正面の銃兵は、陣地から離れることを命ぜられた。彼らはいぶかしがったが、命令は実行された。
「カバーを外せ。――装填!」
その背後で、砲兵隊は弾かれたように動いた。キャノン砲に被せられていたカバーが外され、まず火薬、続いて砲弾が砲口から挿入される。
「撃て!」
イスハニア軍の正面に配置される形となった八門の砲の導火線に、火が着けられた。




