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 翌日から、ブレダー城南側では、陣地の構築作業が始まった。

 街道を横切る線上に、等間隔でタコツボを掘る。そして、そこから背後に向かって交通壕を掘り進め、一〇歩ほどの位置により大きな円形の壕を掘る。

 陣地の前面には、近くの森から切り出した木材で、簡単な馬防柵も設けさせる。工兵に限らず、歩兵・砲兵・騎兵を問わずに、土木作業を訓練させていたのが役に立った。

「時間から考えて、陣地は二重にするのがやっとかと」

 工事を監督しながら、デ・レーケは報告した。

「馬防柵も、第一線陣地に施すだけしか時間がないという状況です」

「時間の許す範囲で構わない」

 ダイゴは答えた。タコツボのなかにこもって射撃する我に対して、身を隠す方法なく前進してくる敵は、撃ち合いでは非常に不利になる。陣地に到達する前に射撃でなぎ倒されてしまえば、パイク兵も威力を発揮できない。射撃の終わった兵は、交通路上に立ったパイク兵や工兵に銃をリレーさせ、後方の壕で別の兵が新たな弾丸を装填する。その間、装填してあった次の銃がタコツボにリレーされ、待っていたマスケット兵は次の弾丸を放つ。理論上は、途切れなく弾丸が敵に向かって降り注ぐ。騎兵が猛スピードで突撃してきたとしても、馬防柵に阻まれる。これで、相当長い時間が稼げるだろう……と、ダイゴは計算していた。だが、

 ――敵も馬鹿ではない。何らかの対抗策を考え出すだろう。その前に、情報通りになればいいのだが。

「かつ学び、かつ戦う」

 ダイゴもイスハニア軍の戦法の研究をおこなった上で、それを覆すよう軍事改革をおこなった。敵は、短期にそのネイザーラント軍の戦法を吸収して、戦況を覆したスピノラである。決して安心はできなかった。戦いながらでも、不利を克服できる能力を持った相手である。自分としては、現状では、最も適した策を考え出しはしたが、一抹の不安は拭えない。

 頼みの綱は、リーセロットからの書簡上に記されている情報であった。

 ◇◇

 築城を開始して三日目、前方に展開させていた騎兵の一部が、ブレダー城に戻ってきた。

「イスハニア軍発見」が、彼らによってダイゴのいる本営に報告された。それによれば、敵が位置するのは、ブレダー城から距離にして行軍一日分の地点であった。

「明日には、この城に攻め寄せてくるでしょう」

 という幕僚長の予測を聞くまでもなかった。三日間の築城時間は、十分過ぎるというほどではなかったが、一応の陣地らしい陣地を構築することのできる期間だった。ダイゴは、本日の夕刻で工事を打ち切り、兵には陣地で夜を明かさせることを命じた。

「銃弾は、銃一丁当たり、五〇〇発準備させるように」

 と指示した。銃兵の一部は、鉛のインゴットを溶かして、鋳型に落とすのに忙しかった。

 自分の部屋に戻り、リーセロットからの書簡を、改めて開いた。そこには、こう書かれていた。

「卿を信頼して、この国の未来を託します。ご武運を」

 改めて目を走らせた結びの一文に、応える時が来ようとしていた。それは、多分明日からになるのである。

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