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両翼先端の大隊から、ほぼ同時に伝令が本営へと到着した。
「敵のマスケット火力が強力、損害続出です!」
「増援願います!」
ダイゴと幕僚たちに、にわかに緊張が走った。優位にあるはずのマスケット火力で、敵に圧倒されるという予想外の展開である。
ダイゴは顔色を変えた。
「騎兵を出動させよ! 両翼を掩護するんだ!」
伝令が命令を伝え、左右両翼に向かって一団となった騎兵が駆け出した。
だがここで、ダイゴは嫌な胸騒ぎがした。根拠のないものである。だが、それは止めようもなかった。
両翼の最先端に、ネイザーラントの騎兵は突撃した。これで彼我の激突する二カ所で、更に外側から敵を包囲できるはずだった……
一瞬、ダイゴは自分が忘れていたことに気がついた。
——敵にも騎兵はある!
なんたることに自分は気がつかなかったのだ。
だが、ダイゴには自分の迂闊さを呪う時間は、与えられなかった。
情報幕僚が、声を発した。
「イスハニア軍騎兵が、更に外側に展開しつつあるようです!」
ネイザーラント騎兵が両翼の戦闘に加入するのを見計らって、敵は切り札を出してきたのだ。
イスハニア騎兵は、両翼に展開したネイザーラント軍のさらに外側から、襲いかかってきた。両翼での延伸競争で、イスハニア軍は勝利を収めつつあるようだった。
ネイザーラント騎兵は、顔色を変える暇もなく、大乱戦の中に包み込まれた。騎兵の装備は、短銃とサーベルである。短銃を撃ち放つと、次はサーベルで斬りかかる。刃と刃がぶつかり、きしる音を響かせる。斬られたいずれの側かの騎兵が、馬上から地面の上に投げ出され、馬蹄に踏みにじられる。だが、勝った側が、次には背後から体にサーベルを突き立てられ、同じように大地に転落した。




