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 イスハニア軍が、アンベルス市で攻城戦を開始したという情報は、ダイゴの率いる軍が首都デンヘイグを出発した翌日、野営地の天幕にあったダイゴの軍の本営に届けられた。

 アンベルス市は、ブレダー城と並ぶノルトブラバンド州支配の根拠地である。

「イスハニア軍は、まずアンベルスを攻略したのち、ブレダー城の奪回に動くでありましょう」

 情報幕僚の意見を聞いて、ダイゴは逡巡した。アンベルス市の城の城兵は一〇〇〇人に満たない。到底二万の敵軍に対して長期間持久はできないだろう。とすれば、アンベルス市とデンヘイグの間に位置するブレダー城に入って、敵を迎え撃つ準備をするべきか? それとも、行軍のペースを上げて、アンベルス市に向かうべきか?

 自分の思案を幕僚に伝えると、作戦幕僚が真っ先に発言した。

「アンベルス市救援を優先するべきでございましょう」

 作戦幕僚は、その理由を説明した。

 アンベルス市はネイザーラントにとって重要な港湾都市であり、ノルトブラバンド州の中心地でもある。同州は、有力な全国議会議員の何人かの出身地でもある。これを敵の手に委ねたままでは、議会の攻撃が総督と軍部に向かいかねない。ここは、早期にアンベルス奪回を図るべきである、と。

 兵站幕僚は、ここで異論を述べた。

「糧秣輸送に不安があります」

 イスハニア軍が砲をアンベルスに運び込んだということは、既にアンベルスと高海を結ぶスヘルデ川を、イスハニア軍が抑えている可能性がある。アンベルス市まで直行すれば、行軍間の糧秣は各兵各騎の携行分に加えて輜重隊の搭載分で間に合うが、戦いが長期に及べば兵站が成り立たない。ここは運河で輸送が手配できるブレダー城に入り、後図を策するべきである、というものである。

 ダイゴは、しばしののち、決断した。

「まずブレダー城に入る。そこで運河による糧秣補給を待って、アンベルスに向かい、これを解放する」

 と。

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