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 馬車から降りたリーセロットに、ダイゴは、

「ようこそお出で下さいました。総督閣下」

 とあいさつした。リーセロットは彼にとっての推しの声で、微笑みながら返答した。

「ご苦労です。学校長」

 総督リーセロットにとって、軍事学校を訪れるのは、開校式以来であった。二年かけた軍の練成成果を、総督として確認して頂きたい――と、月一での状況報告の際、軍監兼軍事学校長から要望されたのである。

 情勢はにわかに動き出しつつあった。内海方面の海戦でイスハニア海軍がオットマン海軍に対して大きな勝利を収めたのである。これでオットマンの勢力は大きく後退を強いられることとなり、次はフランク戦線またはネイザーラント戦線での攻勢転移が予測される事態になった。海においては、ブリタリアとの決戦も考えられた。

 既に軍事学校庁舎として、二階建ての本館が完成していた。リーセロットは、ダイゴの案内により会議室に通されると、視察の予定を説明された。

 予定に従って、まず歩兵部隊の射撃訓練場に案内された。

 射撃訓練場からは、既に盛んに射撃音が発されていた。

「ただ今、一個中隊によるマスケット射撃の訓練をおこなっております」

 到着した総督一行に、訓練指揮官は報告した。

 概況説明を聞いた後、実演を見学した。

「撃ち方用意」

「弾込め」

「火を付け」

「構え」

「火蓋切れ」

「放て」

 将校の号令に従ってマスケット兵は銃を操作し、そして発砲音が轟き、射手の周辺に火花が散った。周囲には、煙が立ち込めた。この時代、無煙火薬は、まだ登場していないのである。撃ち出された弾丸は、七〇歩ほど先の紙の的を撃ち抜いた。

「交代!」

 その号令で、射撃を終了した第一列は直ちに右向け右をし、列を作り走って集団の最後尾に回った。

「撃ち方用意!」

「弾込め」

 一列目が移動して直ぐ、第二列目が同様の射撃準備に入る。機械のような正確な動作だった。

 訓練の説明では、この距離までなら金属製の甲冑でも貫通する威力があるという。

「甲冑が撃ち抜けるのであれば、甲冑など要らないのでございます」

 銃を装備しないパイク兵に甲冑を脱がせるには、心理的負担が重いだろうが、自ら銃を装備し、複雑な操作を敵前でおこない、火力を発揮するマスケット兵には話が別だった。甲冑で体が重くなるより、軽装でその分射撃を正確かつ迅速におこなえるなら、その分生還率も高められる。そう教育がされていると、リーセロットはダイゴに説明を受けた。

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