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三州を巡る旅行から戻ったダイゴから、アウグストは帰着の報告を受けた。そして、ダイゴはそのまま自分の執務室に直行し、籠りきりになった。
ダイゴの帰着を了解したアウグストは、息子に同行者であったデ・レーケを執務室に呼ばせた。旅の最中のダイゴの様子を聴き、
「補佐官どのは、河川と運河の存在に特に興味を持たれた模様です。途中で、私の立てた旅行計画を変更してまで、運河の状況を詳しくご覧になられました」
アルテュールも、同様に答えた。
「私には、一隻の船でどれくらいの荷が運べるか、船着き場はどこにどれだけあるかなどとお聞きでした。私でわからないところは、ご自分でお調べでした」
両名の報告に、アウグストは納得したように頷いた。
「両名ともご苦労だった。下がって、しばらくの間、休養を取るとよい」
アウグストは二人を退室させると、執務机に両腕を乗せて、呟くように言った。
「河川と運河の価値に気が付いたか。どうやら、合格のようだ」
アウグストはダイゴを試したのだった。輸送と補給が続かないことには、どんなに優れた部隊を有していても、戦争には勝てない。それは、異母兄を補佐していた間、嫌というほど味あわされた現実であった。そして、この低地では、糧秣の集散地となる港湾都市から内陸へは、河川と運河で運ぶしかない。この動かし難い原則を見抜けただけで、自分の補佐官には軍を動かす才能の、少なくとも最も重要な部分が備わっていることが明らかになったようである。
――素人は戦略を語り、玄人は兵站を語る。
どうやら、ダイゴは玄人に区分してもよさそうだった。




