口が疼くと言うから
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
恋愛です。R15です。
そこまで露骨じゃないので、ご安心を。
苦手な方はご注意下さい。
口の中が痒くて仕方がない。頬の内側、粘膜で覆われている部分が疼いて仕方がない。其の中身を柔い何かで擦り、苛立ちを鎮めてしまいたかった。
「なぁ君、口の中が痒くて仕方がないんだ」
そう言って、椅子に座って雑誌を捲る彼に抱き着くと、暫しの沈黙。何かを考える様に視線を動かした後、黙って私の髪を撫でた。それから縋り付く腕をそのままに立ち上がると、ふらりと姿を眩ませる。次に戻ってきた時には、淡い星屑の入った小瓶一つ。それを捩じ切る様に開けると、中の一つを摘み出した。
「ん。ほら」
彼は棘の着いた砂糖菓子を私の口許まで近付ける。
そう言う事では無いのだ。そんなつもりで抱き着いた訳では無いのだ。けれども結局私は口を開いて彼の指を受け入れた。
「美味いか?」
その、普段の涼し気な無表情からは想像も付かない程に優しい微笑を見せられると、もう何の反論も、我儘も言えなくなり、黙って顎を引くしか無くなった。
「口の中が痒いと言っていたから」
そう言いながら、餌付けでもする様に、また小瓶の中から金平糖を出して、私の口許まで近付ける。また黙って口を開くと、ころり、ころりと口の中へ落とす。黙ってボリボリと噛み砕くと、『よく出来ました』と言うように頭を撫でられた。
「そう言う訳では……」
「うん?」
「そう言う訳では……」
そう言う訳では無い。ただ私は恋人らしい事がしたかった。ぬめって蠢く肉をこの口で受け入れたかった。口腔の奥深く、歯の羅列の終わりに至るまで、丁寧に丁寧に撫で上げて欲しかった。
黙って俯いたまま、瓶を握る彼の拳を上から包むと、静かな感嘆が聞こえてきた。それからふと、骨ばった冷たい指先が頬を撫で上げると、ただ呟く様に言った。
「顔を上げろ。口吸いの一つも出来ない」
それからはもう、想像に硬くない。願った物を入れられて、丁寧に丁寧に掻き毟る。口腔の奥深く、歯の羅列の終わりに至るまで弄って、最後には吸い付く音を立てて、離れていった。
「口が疼くと言っていたから」
彼はそんな、何時も少しばかりズレた行動を取る人だった。
「バタースコッチが飲みたくて」
と言いながら、ラテを見ている恋人を見ているのに、何故か『バタースコッチのパイ』を買ってくるタイプ。
しかも悪気はなく、善意120%。
物凄い優しそうな顔で笑うので、何の反論も出来ないという。
私が好き( '-' ) 私が大好き( '-' )
他に何か浮かんだネタがあったのですが、忘れてしまいました。
まぁ、ぼちぼち。