モノ語り
点鼻薬/
繋がっていたのね
どこもかしこも
クーラーの風の匂いが
するすると ひんやりと肺まで
届いた 夜
手鏡/
手持ちぶさたに
カーテンからこぼれる
光をひろっては
寝転がったまま
ざらざらの天井の凸凹に
夜明けをもたらしていた
ピアス/
ちょん、と
開いた穴の隣に
ちょん、とついた ホクロ
被さらないような
ピアスばかり選ぶ
スポンジ/
ピン、と
ふっくらとあったのに
いつの間にか
しおしおに
へたりこんで
ぐじゅぐじゅとした泡しか
つくれなくなったそれを
あと一回
もう一回 使ったら、と
先延ばすたび
私のどこかが
萎びていく
眼鏡/
寝る前に
外すと
右目だけ
墨のように
夜が滲みます