確認
陽菜は何が起きたのか知りたそうにしていたが、調理場からの良い香りに別のアンテナが起動したようだ。
「なんだかお腹がすく香りがする~」
調理場をのぞいて見ると、女性陣がみんなで朝食の準備をしていた。
「あ、巫女さん、おはようございます」
「おはようございます」
皆、口々に挨拶をした。
「勝手に使わせていただいてすみません。窓から沢山の方が本殿へ向かっていくのが見えまして……。何かあったのかと思いましたが、私たちでは何もできません。せめて朝食の準備だけでもと思い、勝手に冷蔵庫の食材や調理場を使わせてもらいました」
そう言って頭を下げるのは田畑さんの奥さんだった。
田畑さんがあんなことになっているのを知らないんだ……。
俺が横にいた狭霧を見ると、狭霧は真剣な面持ちで調理場にいる女性たちを見ていた。
「頭をあげてください。むしろこちらの事に気を取られ、皆さまに何もできず、申し訳ありませんでした」
芽衣さんは頭を下げた。
「そんな……」
女性陣が口々に「巫女さんは何も悪くありません」「頭をあげてください」と言い、芽衣さんの周りに集まった。
「皆さん、ありがとうございます。朝食を用意いただけて、皆、喜ぶと思います。ここはおまかせしていいですか」
芽衣さんの言葉に皆、頷いた。
俺たちは調理場を後にして、階段へ向かった。
「芽衣さんって、よくできた人だね~」
陽菜が尊敬の眼差しで芽衣さんを見た。
「あ、それでさっきの話の続きだけど……」
陽菜がそう言ったとき、前を行く芽衣さんと木ノ花先生が止まった。
「ひまり、どうしてここへ?」
「おはようございます、木ノ花教官、芽衣さん。陰陽頭に呼ばれて参りました。影の血に浸食されている一般人が他にいないか確認するように言われ、今、男性陣の確認が終わったところです」
「そうなの。早朝からありがとう。それで男性陣の中で浸食されていた人はいなかったのね?」
どうやら木ノ花先生は芽衣さんから本殿での出来事を聞いているようだった。一方、陽菜はまだ本殿で起きたことを聞いていないので、「?」と顔に出ていた。
「いませんでした。極小サイズなので見逃しがないよう、二度確認しましたが、大丈夫でした」
「それは良かったわ。女性陣の確認は?」
「女性陣から先に確認しました。もし浸食されている者がいるとしたら女性だ、と陰陽頭に言われましたので」
「そう。結果は?」
「はい。浸食されている人はいませんでした」
俺はその言葉を聞いて、ほっとした。
「良かった。この後ひまりはどこへ?」
「陰陽頭に報告をして、特に指示がなければ持ち場へ戻ります」
「そう。気を付けて」
「ありがとうございます」
俺たちは再び階段を上り、ひまり先輩は階段を下りた。
そして狭霧とすれ違う際、ひまり先輩はこう言った。
「狭霧くん、もし目が疲れるなら、メガネをつけるといいですよ。必要なら私に声をかけてくださいね」
「ありがとうございます」
狭霧は驚いた表情をしたが、すぐに笑顔になり、ひまり先輩に会釈した。
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ひまり先輩の心の声(私も朝御飯、食べたいです……)
引き続きお楽しみください。




