どういう状況?
じっちゃまに続いて駆けつけたのは、刀を手に、全身に殺気をまとった沫那美先輩だった。
瞬時に俺たち全員の姿を目でとらえ、「これは……」と驚きの声を上げた。
沫那美先輩とほぼ同時に到着したのは、だん先輩だった。
「えっと、どういう状況?」
一番正直な感想を口にした。
「説明はあとじゃ。とりあえずそこに倒れている一般人を拝殿に運ぶのじゃ。影の血に浸食されとった痕跡がある。わしが調べる」
じっちゃまが指示を出し始めたところにえま先輩が到着した。
「建御名恵茉、到着しました! ……ってあれ? もう終わりました? って、あの綺麗なメン、誰なんです?」
えま先輩は状況をつかめずキョロキョロした。
「とりあえずそこに倒れている一般人を拝殿に運ぶよ、えまちゃん」
だん先輩に言われ、えま先輩はきょとんとした表情のまま「はぁい」と返事をした。
沫那美先輩はすでに本殿の中に入り、入口から離れた場所で倒れている小川さんの元へ駆け寄っていた。
だん先輩とえま先輩は田畑さん、小川さん、それぞれのそばに駆け寄った。
「そこの新入隊員二人は後でわしが問診をするが、今見たところ問題なそうじゃな。芽衣、この二人を連れ、敷布団を三枚、拝殿まで持ってくるのじゃ」
芽衣さんは「はい」と返事をし、手で頬をぬぐうと俺たちのところ来た。
「一緒にお願いできますか?」
俺と狭霧は「はい」と返事をした。
すると。
「天野くん、黒雷くん、そこにいるの⁉」
「蓮、狭霧!」
木ノ花先生と陽菜が宿泊棟につながる扉から入ってきた。
その後ろには社務所で見かけた氷川さんという男性をはじめ、神職や職員が何人も入ってきた。
「ハナノコ、重役出勤じゃのう」
じっちゃまはそう言いながら本殿の中へ入ると、御神体の方へ歩いていった。
神職や職員らしき人はじっちゃまへ向かって一斉に歩き出した。
「私たちも参りましょう」
芽衣さんの後ろについて歩きながら、俺は狭霧に話しかけた。
「……狭霧、お前、髪と瞳の色が別人だぞ」
俺の言葉に狭霧は頷いた。
「多分、僕と縁のある神の姿になっているのだと思う」
「そうなのか」
「昨晩、寝ていたら、頭の中で声がして。夕食の帰りに聞いた時と同じ声だった。それでその声に導かれて本殿まで来たんだ。それで本殿の中に入り、御神体の前まで行ったら、薄水色の髪に碧い瞳、金の刺繍が施された氷のような色の衣をまとった男性が現れた。その人は自分の名前を告げ、僕はその人が御神体として奉られている神なのだと理解した」
「そうか……。狭霧は縁のある神の姿が見えたのか……」
「蓮は見えなかったのか?」
「えっ?」
「蓮が神降ろしをしたことは知っているよ。蓮と縁のある神の姿も見えていた」
「そうなのか。俺には声しか聞こえなかった」
「まあ、かなり異例な状態での神降ろしだったから姿が見えなかったのかもしれないね。……僕と縁のある神も驚いていた」
「え。あっ……怒ってはいなかった?」
「うん。あれは呆れていた様子だった」
「あちゃぁ」
そこで木ノ花先生と陽菜が合流した。
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