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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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神の権能

「芽衣さん、止まって」


こんな力強くて大きな声、俺、出せるんだ――と、遠い場所にいる俺の意識がつぶやいていた。


「……黒雷さん⁉」


芽衣さんは俺を見て固まっていた。


「田畑さん、あなたの中にいる影の血をこれから焼き尽くします。衝撃はありますが、あなたの体は決して傷つかないので安心してください」


俺の声なのに、俺の声じゃないようだった。


俺は右手上げ、人差し指に神経を集中した。


「この輝きに目がくらみ お前はこれを認識する前に この場から退散するだろう」


感じる。人差し指に力を。


「落ちろ、白雷しろいかづち


腕を振り下ろすと、本殿の屋根を突き抜け、それは田畑さんの頭に命中した。


まさに電光石火。神の力を持っていても見逃しかねない早さだった。


白雷が直撃した直後、田畑さんの全身が痙攣したかと思うと、その場に倒れた。


俺は感覚として、影の血に白雷が触れたことを理解できていた。

触れた瞬間に影の血は消えた。

瞬殺という言葉がふさわしかった。


ふうっと息をはくと、全身にみなぎっていた力が消えた。


「まさか、黒雷さん、あなたまで一人で神降ろしをされたのですか? しかも瞬時に?」


芽衣さんは目を丸くした。


「お前たち、二人殺した。お前たち、二人殺した」


残されていた沢野さんがつんざくような甲高い声で叫び、体を痙攣させた。


「お前たち、殺す、絶対。お前たち、殺す、絶対」


あ!


沢野さんを取り巻いていた護符が一枚、また一枚と床にはらはらと落ちていった。


すると俺が動くより先に、芽衣さんが動いた。


ダメだ、芽衣さん!


俺が伸ばした手は、芽衣さんの袖をつかもうとして……届かなかった。


そんな……


芽衣さんが沢野さんの腕を掴もうとしたまさにその時、芽衣さんのすぐ横に、人の姿が見えた。


いつの間に⁉


薄水色の長い髪をしたこの人物は……?


いや、この服、狭霧だ!


この姿は一体⁉ さっきまで御神体の前で狭霧は倒れていたはずなのに。


狭霧は右手で芽衣さんが伸ばしていた手を掴み、左手に持っていた鞘に入ったつるぎで、沢野さんの体をトンとついた。


沢野さんの体は入口の扉まで吹き飛んだ。


嘘だろう? 今、軽く触れただけなのに。


狭霧は芽衣さんの手を放すと、そのまますたすた沢野さんの方へ歩いてき、沢野さんのそばに跪いた。


沢野さんは上半身を起こしたが、腰が抜けたのか、立ち上がることができないようだった。


「この体からは出て行ってもらいます」


狭霧は鞘から剣を抜き、沢野さんの額に剣を刺そうとしていた。


「狭霧、沢野さんは人間だ! 影の血に浸食されているだけだ」


俺が叫ぶと、狭霧は俺を見た。


狭霧の瞳は空のような碧さをしていた。


「もちろん、分かっているよ、蓮」


狭霧の剣は沢野さんの額に突き刺さっているのに、血は一滴も出ていない。沢野さん自身も痛がっている様子もない。


すっと狭霧が剣を抜いた。


「蓮、これが見えるかい? これが影の血だ。沢野さんの脳を浸食し、行動をコントロールしていた。こんな米粒のような大きさでも、耳、目、口、鼻、そんな場所から入り込み、そして人間を操ることができるんだ」


俺は剣の先端に目を凝らした。


するとそこには黒い極小の靄が身をくねらせるように蠢いていた。


「これが影の血……。ミストに触れてもこれは浄化されないのか⁉」


「今は剣の力で、ミストにもこの剣自身の浄化の力にも触れないようにしている。つまり透明な風船の中にこいつはぷかぷか浮いている状態。でも逝ってもらうよ」


次の瞬間、影の血は剣の先端から消えていた。


「天野さん、あなたも神降ろしを成功させたのですね……」


芽衣さんがまぶしそうに狭霧を見た。


「なんて、美しい……」


芽衣さんは喜びの涙をこぼしていた。


俺が神降ろしを成功した時と反応が違う……。少しジェラシーだ。


「まさかワシなしで二人も神降ろしを成功させる者がいるとはのう」


本殿の入口にじっちゃまの姿があった。


「おじいちゃん!」


芽衣さんはじっちゃまに抱きついた。


この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

どうにか危機を脱しましたが、この後、どうなるのでしょうか⁉

引き続きお楽しみください。

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