美味しい!
「う~~ん、美味しい! 鼻を抜ける香ばしい香りも最高。それに鶏肉なんて久しぶりに食べた!」
陽菜が選んだチキンソテーは天津頭領が調理したものだった。
「この魚、どこで手に入れたのだろう?」
白身魚のムニエルを食べた狭霧は目を輝かせた。
「京都から取り寄せた卵をいけすで孵化させて育てているの。それを三枚におろして調理したのが天津頭領よ」
木ノ花先生の説明を聞いた陽菜が俺を見て尋ねた。
「蓮のそのお蕎麦はどう?」
「うん、すごく美味しい。コシもあって……」
「あ、蕎麦は非常食にもなるから京都から大量に乾麺を持ってきているのよ」
木ノ花先生の言葉に陽菜が噴き出し、俺が眉毛を八の字にしてトホホ顔をしている様子を、狭霧は優しい眼差しで見守っていた。
「仕方ないから私のチキン、一口あげるよ。天津頭領の手料理の美味しさ、蓮もちゃんと知っておかないと」
陽菜が一口サイズのチキンを俺の口に押し込んだ。
「! うまい」
大豆を使った代替肉が主流の今、本物のチキンは格別だった。
「先生のその卵丼は、もちろんここの鶏が産んだ卵を使っているんですよね」
「黒雷くん、正解よ。ほぼ毎朝とれたて。朝食だと卵かけご飯にして食べる人が多いわ。みんなこの卵を食べると元気が出るそうよ」
「明日の朝、食べないと!」
俺と陽菜が声を揃え、狭霧は「そうだね」という顔でほほ笑んだ。
食堂は十二時になるとかなり混雑するという。そうなる前に俺たちは食事を終え、食堂を出た。
「先生、オリエンテーションは十三時からですよね。まだ時間があるから、上の図書室に行ってみてもいいですか」
狭霧らしい提案だった。
「もちろんいいわよ。図書室は四階、三階にオリエンテーションをやる教室があるから、時間になったら降りてきてね」
「先生、二階は娯楽室?」
「ええ、そうよ、陽菜。娯楽室には卓球、ビリヤード、ダーツ、あとボードゲームなんかがあるわよ」
「蓮、娯楽室に行ってみよう」
陽菜が俺の背中をポンと叩いた。
「じゃあ三人ともオリエンテーションの時間には遅れないようにね」
「分かりました」「は~い」「はい」
俺たちはそれぞれ返事をすると階段に向かった。
◇
「蓮、卓球、ビリヤード、ダーツ、どれならできる?」
陽菜が両手を腰にあて、俺を見た。
この様子だと陽菜はこの三つすべてに腕に覚えがあるようだった。
まあ、俺も運動神経には恵まれているから、どれでもいいのだけど……。
「ちょっとそこの少年と少女、何で遊ぶか決まっていないなら、私の相手をしてもらえないか?」
いつからそこにいたのか、卓球台のそばのベンチに横になっていた女性が体を起こし、俺達を見た。
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