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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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どこに行った?

大部屋に戻り、布団に横になると、俺は天井とにらめっこをして考えた。


狭霧はどこに行ったんだ……?


外には出ないだろう、雨降ろしのの最中だし。

三階の女性部屋、木ノ花先生や陽菜に会いに行った?

いや、こんな変な時間に行かないだろう。

何かあったなら、二人を尋ねるより俺を起こすだろう。


他に行くとしたら……。俺は頭の中で狭霧が行きそうな場所をまとめた。


・一階の炊き出しスペース(皆、食堂と呼んでいる)


ふと目が覚め、喉が渇き、お茶を飲みに行った?

確かにお茶と水はセルフサービスでいつでも飲めるようになっていた。


・社務所


一階の渡り廊下でつながっているから行くことはできる。

何か用事があって行ったとしても、果たして社務所で起きている人がいるのだろうか?


・拝殿


夜間は締め切ると言っていたから中には入れない。


・授与所


拝殿の渡り廊下から行けるが、当然閉まっているはず。


・本殿


拝殿の渡り廊下から行けるが、閉まっているはずだ。

そもそも通常時、一般公開されていないエリアだ。

狭霧の性格からしてもそんな場所に無理に踏み込むはずはないだろう。


あとは思い当たる場所がなかった。


可能性としては、一階にお茶を飲みに行った、社務所に何か用事があった、このどちらかが妥当だった。


無駄足かもしれないが、とりあえず行ってみるか。


俺は布団を出ると一階へ向かった。



階段と廊下は常夜灯がついているが、食堂は当然真っ暗だった。


トイレ、お風呂場同様、ここにも狭霧はいないと思ったが、一応電気をつけ、中へ入った。


シンとしていて誰もいない。


俺はせっかくここまで来たのだからと、お茶を飲むことにした。


ああ、温まる。


そして狭霧がいないことへの不安でモヤモヤしていた気持ちも落ち着いてきた。



調理場に大きなステンレス製の冷蔵庫があるのだが、そこに人影がうごめいていた。


落ち着いた気持ちは吹っ飛び、俺は固まった。


ま、まさか、黒い影⁉


冷蔵庫に姿が映っているということは、俺の背後にいる……。


今日は最強に平和な夜だったんじゃないのか⁉

ミストの効果はどうなっているんだ⁉

なんで神域にいる⁉


俺の頭はパニックになり、勢いのままに振り返ってしまった。


……!


そこにいたのは田畑さん、沢野さん、小川さんの結婚一周年記念の旦那三人衆だった。


「ど、どうしました?」


あまりにもビックリして俺は思わず声が裏返ってしまった。


「いやあ、黒雷くんこそ、こんな真夜中にどうしました?」


田畑さんの指摘はもっともだ。


「あ、いや、その、喉が渇きまして……」


俺はなんとなく狭霧がいないことは伏せた方がいい気がして、引きつりながらも笑みを浮かべ、湯飲みを見せた。


「ああ、そうでしたか。実は私も喉が渇きましてね」


田畑さんはそう言うと、俺の方へ歩いてきた。


田畑さんの後ろに沢野さんと小川さんが続いた。


「沢野さんと小川さんもお茶を飲みに?」


俺はようやく通常運転で話すことができた。


「いえ、私はトイレに行って、部屋に戻ったら田畑さんに偶然遭遇しまして。お茶を飲みに行くと聞いたら喉の渇きを覚えまして」


沢野さんはそう言うと、セルフサービスのお茶のボタンを押した。


「私は眠りが浅くなっていたようで、田畑さんと沢野さんの立てる音で目が覚めて、『どうしたんですか?』って声をかけて、一階へお茶を飲みに行くと知り、同行しました。一旦目が覚めるとなかなか寝付けないので」


小川さんはそう言いながら、湯飲みを手に取った。


こんな夜中に結婚一周年記念の旦那三人衆が揃うなんてシュールだな。


でも、彼らで良かった……と密かに胸をなでおろしていた。


俺たちは立ち話もなんですからと近くのテーブルに座ることにした。


そこでのおしゃべりで、俺は沢野さんが金の加工場で働いていること、小川さんは採掘した金を加工場まで運搬するトラックの運転手であることを知った。


三人は職場が実は近かったことを知り、さらに親近感が増したようだ。そして話が尽きないように思えた。


俺は丁度お茶も飲み終わったので、先に戻ります、と声をかけ、席を立った。


この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

狭霧は一体どこへ行ったのでしょうか?

引き続きお楽しみください。

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