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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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最強に平和な夜

拝殿に戻り、木ノ花先生がくれたわらび餅を田畑さん夫婦や周囲の人にわけて食べていると、「夕食の用意が整いました」と、巫女さんが教えてくれた。


みんなでゾロゾロ宿泊棟へ向かうのは、子供の頃に行ったキャンプみたいでワクワクした。


一階の炊き出しスペースにはいると、長テーブルと椅子が用意されており、まるで寮の食堂のようだった。


「こちらにお皿とお箸、スプーンがありますので、お取りください」


陽菜が声をはりあげ、案内を始めた。


「ここでサラダをとり、ご飯はこちらで、カレーはその隣です。順番にお願いします」


別の女性が調理場のカウンターで手を振った。


「お茶とお水はこちらのセルフサービスを使ってください」


木ノ花先生も手をあげアピールした。


みんな列を作り始めると、立ち話が始まり、にぎやかな雰囲気になってきた。


「あ、ドレッシング出していませんね」

「あら、忘れていた」

「僕が手伝いましょうか」


皆で助け合い、数分で全員が席につき、サラダとカレーがテーブルに並んだ。


「沢山のご協力を得て、夕食が整いました。いただきましょう」


巫女さんの合図で夕食がスタートした。


俺たちのテーブルには、木ノ花先生、陽菜、狭霧、田畑さん夫妻、そして俺がいて、木ノ花先生が黒影あるあるを話せば、田畑さんが採掘場あるあるを語り、大いに盛り上がった。


食事があらかた終わった時に、田畑さんの隣にいた男女が「あの、さっきたまたま聞いてしまったのですが、お二人は今日が結婚記念日なんですか?」と話しかけてきた。


田畑さんは笑顔で「ええ、今日が丁度結婚一周年なんです」と答えると、なんと話しかけてきた夫婦、沢野さん夫妻も今日が結婚一周年だった。


「奇遇ですね~」と盛り上がっていると、田畑さんの後ろの席のご夫婦も「実は私たちも結婚一周年なんです」と明かし、「三組も結婚一周年の夫婦がいるなんて」とさらに盛り上がった。


こんな話で盛り上がれることに平和を感じた。

数時間前はあんなに怖い思いをしたのに。


「今夜は最強に平和な夜よ。なんと言っても雨降ろしの夜ですもん。黄泉の国の軍勢も黒い影も今夜ばかりは何もできないわ」


木ノ花先生も俺と同じ気持ちだったのか、そんな言葉をつぶやいた。


最強に平和な夜。いい響きだ。


こうして楽しい夕食の時間が過ぎて行った。


この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

最強に平和な夜。このまま朝を迎えるのでしょうか。

次の更新は本日の夜21時に4話公開です。

また読みに来てください!

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