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完結●黒影  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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混乱

「町を経由してあれだけの手傷を受けていたのに、しぶといなぁ」


リツコ先輩がさらに攻撃を続けると、おぞましい声もしなくなり、動きも次第に激しさを失った。


「はい。こちらは間もなく終息すると思われます。町の方はどうですか? はい。黒影五名が対応中、そうですか。はい」


木ノ花先生は防衛本部と連絡をとっているようだった。


その時だった。


「た、助けて」


女の人の声がした。


「! 参拝客の女性が巻き込まれている」


狭霧はそう言うと同時に鳥居を抜け、蒸気の中に向かっていった。


そう言われると蒸気の中に人影のようなものが見えた。


俺も狭霧の後を追おうとしたが、陽菜が止めた。


「待って、鳥居から出ちゃだめ。匂いが変!」


「えっ……」


でも、狭霧は……。


風が吹き、蒸気が途切れ、狭霧の姿が見えた。


ぼやけてよく見えないが、狭霧は参拝客らしい女性の元に、まさに駆けつけた瞬間だった。



女性は右手に刀のようなものを持っていないか⁉


「狭霧」


陽菜が何かを察知したのか、悲鳴のような叫びをあげた。


刀が狭霧の左首に――


「なにをやっておる、リツコ」


地響きするような怒鳴り声と、ゴリっという鈍い音。


鞠のようなものが玉砂利の上を転がった。


さ、狭霧の首……⁉


俺は血の気が引き、息が止まり、全身が固まった。


だが。


「ぼうっとするでない、早く受け取れ」



じっちゃま……⁉


じっちゃまは狭霧を抱えて鳥居の内側にくると、俺に狭霧の体を預けた。


狭霧の首は……ついていた。


俺に狭霧の体を預けると、じっちゃまは「六根清浄急急如律令」といい、狭霧の体を右手の人差し指と中指ですっと撫でた。


その瞬間、さっきまで鉛の塊のように重かった狭霧の体がふわっと軽くなった。


「血の結界に触れてなお、これだけの力が残っていたとは。相当の力の持ち主じゃのう」


じっちゃま蛇型の黒い影を見てつぶやくと、すぐに立ち上がった。


「リツコ、とどめを刺すまで気を抜くな、と何度言ったと思う」


「ごめんなさい、小笠原のおじいちゃん! とどめは今、刺しました!」


「遅いっ! わしは町へ戻る。こやつ、町の結界をことごどく破壊しおって」


「は、はいっ。お気をつけて」


「ここはリツコ、お主が責任をもって清めておくのじゃぞ」


「は、はいっ」


じっちゃまの姿は霧に消えるように見えなくなった。


そして、止まっていた時間が動き出した。


そう、ついさっきまで、時が止まっていた……?


「蓮、狭霧が、狭霧が……」


青ざめた陽菜が震えながら俺を見た。


「……いや、陽菜、ほら、狭霧はここに」


「……! 狭霧、良かった!」


「ちょっと、みんな、どうしたの? あれ、天野くん、気絶している⁉ え、何があったの⁉」


俺の頭はショート寸前だ。落ち着け、落ち着け。


俺は深く息を吸い、ゆっくり吐いた。


「うわーん、小笠原のおじいちゃんに怒られちゃった」


「リツコ、何があったの? なんで狭霧くんが気絶しているの? まさかリツコ……」


「違う、違う、誤解! 私、戦っていたし」


「陰陽頭に言われてきました。こちらがパニックになっていると思うので、落ち着かせてくれと。こちらに来る道中、端末で防犯カメラの映像を見て、状況は理解できました。また、上空から現場の解析も完了しました。リツコ、清めていただいて大丈夫です」


「え、ひまり、私は狭霧くんのそばに……」


「いなくて大丈夫ですから、早く清めてください」


「……。……。はい……」


この投稿を見つけ、お読みいただき、ありがとうございます。

ハラハラドキドキの展開が続いています。

次の更新は本日の夜21時に4話公開です。

また読みに来てください!

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